2025/12/26
HUDSON MADSEN M1950【ビンテージモデルガンコレクション32】

Text & Photos by くろがね ゆう
Gun Professionals 2014年11月号に掲載
他社が製品化しないような銃をモデルガン化することで知られていたハドソンが、特にマニアックなモデルを作ったのが1980年から1981年にかけて。なかでも驚かされたのはこのマドセン。確かにユニークな特徴を持つ注目すべきサブマシンガンであったが、これが製品化されるとは誰も思わなかった。その意味で、ハドソンの面目躍如たるモデルガンだった。


諸元
メーカー:ハドソン産業
名称:マドセンM1950
主材質:亜鉛合金
発火機構:前撃針
撃発機構:オープンボルト(フルオートのみ)
作動方式:ピストンファイア方式ブローバック
カートリッジ:クローズドタイプ
使用火薬:平玉紙火薬2~3粒、または7mmキャップ+平玉紙火薬1粒
全長:780mm/530mm(ストック折りたたみ時)
重量:3.0kg
口径:9mm
装弾数:32発
発売年:1981(昭和56)年
発売当時価格:¥28,000(カートリッジ6発付き)
オプション:スペアマガジン¥3,500、カートリッジ1発¥180
※ smG規格(1977年)以前の模擬銃器(金属製モデルガン)は売買禁止。違反すると1年以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます。(2025年現在)
※ 1971年の第一次モデルガン法規制(改正銃刀法)以降に販売されためっきモデルガンであっても、経年変化等によって金色が大幅に取れたものは銀色と判断されて規制の対象となることがあります。その場合はクリアー, イエロー等を吹きつけるなどの処置が必要です。
※全長や重量のデータはメーカー発表によるものです。また価格は発売当時のものです。
モデルガンがドンドン作られ、ガンガン売れていた1969(昭和44)年、N.K.G(日本高級玩具)組合の中心となっていた中田商店が突然モデルガンの製造をやめた。その結果グループは自然消滅し、各社が独自路線を歩み始めることになる。当然、新製品がバッティングすることも起きる。
ハドソンもその頃は「レミントン ダブルデリンジャー」(1969)、「ベレッタM1934」(1970)、「モーゼルM1930」(1971)といった、いわゆる売れ線のモデルを作っていた。
1971(昭和46)年に第一次モデルガン法規制があり、1974(昭和49)年に「日本モデルガン製造協同組合」が設立され、各社が協力して新たな法規制に反対して行くことでまとまった。しかし製品に関しての協定はなく、やはり人気モデルに集中する状態は変わらなかった。
そうこうするうち、1977(昭和52)年に第二次モデルガン法規制が施行され、金属製モデルガンは大打撃を受ける。そしてその結果、プラスチック製モデルガンが台頭することになったわけだ。モデルガンの歴史における大転換点だ。
それも落ち着きを見せ始めた1980( 昭和55)年、ハドソンは突如「AK47」の製作を発表し、路線を変更。俄然、強烈に個性を発揮し始める。
これは、どうやら当時のハドソン製品の設計を手掛けていた御子柴一郎さんに依るところが大きいらしい。
御子柴さんはカスタムモデルガンメーカー「ミコアームズ」を1975(昭和50)年に立ち上げたが、1977年の第二次モデルガン法規制以降は、使用できる材質に大幅な制限が設けられたことなどにより、実質的に金属製モデルガンのカスタムは不可能となっていた。そこで、モデルガンの設計を請け負うという方向で生き残りを図り、各社に売り込みを掛けていたという。
そんなときハドソンの社長から、六研が手掛けたベアキャットの量産版モデルガンがトラブルで中断していたのを、引き継いで完成させてくれないかと声を掛けられたという。
これを完成させ、次に金属製のコルトMK IIIリボルバーを一から設計して信頼を得ると、御子柴さんはハドソンの次期製品としてトンプソンM1A1を提案したという。MGCはM1921だったからバッティングすることはない。六研の六人部登さんに打診すると、CMCなど他社でトンプソンを作る予定はないということだったので、問題ないはずだった。
ところがハドソンがトンプソンM1A1を発売して1年も経たない内に、六研が手掛けたトンプソンM1がCMCから発売されてしまった。M1とM1A1という微妙な違いはあっても、ほぼ同じモデルだ。当然ユーザーを食いあうことになってしまった。
これに懲りた御子柴さんは、その次の製品としてAK47を提案したという。つまり、この辺からハドソンは、御子柴さんの趣味も反映しつつ、レアモデルでマニア層に訴える方向に転換して行く。他社が手掛けない、あるいは知らないようなモデルならバッティングしてユーザーを取り合うようなことにはならないというわけだ。
こうしてスコーピオンVz61に続いて御子柴さんがハドソンに提案したのが、今回取り上げるマドセンM1950だった。当時はあまり知られていなかったマイナーなサブマシンガンで、普通ならモデルガン化されるような機種ではなかった。
だからそのモデルガン化に多くのファンが驚いた。AK47はまだしも、ハドソンはなんて無謀なことをするんだ! しかしこの作戦は当たったようだ。当初は名前を出さずに活動していたこともあって、多くのファンがハドソンを知らないか知っていても地味な会社くらいにしか思っていなかったのに、これ以降、意識するようになり、マイナーなもの、レアなもの、珍銃を作る会社として認識されるようになる。
ボクも最初はあまり注目していなかった。偉そうなことはいえない。もちろんマドセンもほとんど知らなかった。聞いた事がある程度。今はネットなどに情報があふれている。ちょっとキーボードを叩けば、おおまかな情報は得ることができる。しかし当時は違った。
念のために書いておくと、マドセンM1950はデンマーク、コペンハーゲンにあるダンスクインダストリー シンディカット(DISA)社が第二次世界大戦後に開発したサブマシンガンだ。ウィキペディアによれば、DISAの創業者がVilhelm Herman Oluf Madsenという人だそうで、そのファミリーネームをとってマドセンと呼ばれるようになったらしい。
基本的にはシートメタルをプレス加工して作られたシンプル構造。かなり安価に製造できたのではないだろうか。連射速度が550発/分くらいと遅めなので、セレクターもなく、フルオートオンリーとなっている。オープンボルトのブローバックで、いたってオーソドックス。しかしその特徴は、二枚貝のように蝶番で左右二つにパカッと開ける事ができるレシーバーにある。
御子柴さんは、この時よく知られていないマドセンの資料をヨーロッパから入手できたそうで、ハドソンの社長に作らないかと提案したのだという。すると意外にもアッサリとOKが出た。社長には独特の判断基準というか鋭い勘のようなものがあったらしい。
まずデンマークの工業規格がメートル法を採用していることを確認し、マガジンサイズを割り出して、そこから他のサイズを決めて行ったという。
最大の難関は、スチールプレスの本体を亜鉛合金ダイキャストで再現すること。御子柴さんは当時を振り返って、ちょっと用心して厚みを付け過ぎたなあとおっしゃっていた。それでもストックの付け根は亜鉛合金では弱かったようで、ここが折れてしまった人が多い。
またsmG規格をクリアーするため、レシーバーとバレル基部は改造防止のインサート硬材を鋳込んで一体で作らなければならない。ここに苦労したという。しかも、二分割構造のレシーバーでありながら、御子柴さんが最初に考案したというトレードマークのようなガスバイパスも設けられているのだ。これは驚きだ。
御子柴さんの分析によると、基本的に六研の六人部さんは実寸にこだわる実銃志向で、MGCの小林さんは作動にこだわる玩具志向。自分は雰囲気重視の模型志向で、手にとってガチャガチャと動かしてハンドリングを楽しんで欲しいという。しかし当時はブローバック仕様でないとモデルガンが売れなかったので、撃ちたい人は火薬を詰めて自動作動させることもできるというスタンスで設計していたという。
しかも当時はマルシンのPFC方式が注目を浴びていたので、ハドソンなりの閉鎖系カートリッジのブローバックシステムにしなければならなかった。そこでカートリッジはVz61から採用されたピストンファイア方式を使った。
設計は1 ヵ月ほどで終了し、金型製作へ。何回かのチェックを経てすぐ量産に入ったという。
一時期ブームになって、のちにハドソンからも発売された「組み立てキット」のマドセンの説明書には「7MMキャップ+平ダマ1粒、又は平ダマ2〜3粒」と書かれている。ボクはあまり撃った記憶がないのだが、5〜6連射なら快調作動するというような話は聞いた。それよりボクが覚えているのは、まずトリガーを引いておいて、それから狙いをつけて(弾が出るわけではないが)、グリップセフティを握って撃つという方式。意外とこのグリップセフティは邪魔だった。ウージーなどと違って、必ずサポート・ハンドも積極的に使わなければならない。実銃もそうだったようで、この形式を採用したものはほとんどない。
モデルガンも大ヒットというわけにはいかず、1ロットだけだったのではないかということだが、今とは製造数が違う。数千挺は出荷されたようだ。
独特の味を持つ、ユニークなサブマシンガンのモデルガン。ハドソンのイメージを固めるのにピッタリのモデルだったのかもしれない。
Text & Photos by くろがね ゆう
協力:御子柴一郎
吉實クリニック射的部 吉實 暁美 吉實 憲、くまさん
Gun Professionals 2014年11月号に掲載
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