2025/05/12
MGC レミントン モデル31-RS 【ビンテージモデルガンコレクション 6】
Vintage Model-gun Collection -No.6-
MGC
REMINGTON
MODEL/31-RS RIOT SHOTGUN
(1975年)
Text & Photos by くろがね ゆう
Gun Professionals 2012年9月号に掲載
金属モデルガンが主流の時代、ポリスアクション人気に対応して発売され大ヒット。ところが第二次モデルガン法規制のため、わずか2年ほどで消えてしまった伝説のモデルガンがこのM31ショットガンだ。1万円を切る価格で発売され、子供から大人まで、多くの人がぶっ放して遊んだ痛快モデルガンだった。


諸元
メーカー:MGC
名称:レミントンM31-RSライアット ショットガン
主 材 質:亜鉛合金(1981年に耐衝撃性ABS樹脂で復活)
作動方式:ポンプアクション
発火方式:前撃針(チャンバーレス)
撃発機構:ハンマー
カートリッジ:12ゲージ ショットシェル
使用火薬:平玉紙火薬
全長:810mm
重量:3.1kg
装 弾 数:5発+1
発 売 年:1975(昭和50)年
発売当時価格:スタンダード ¥9,900-
デラックス ¥12,900-(ウォールナット仕上げ)
* ショットシェル別売り 1発¥200-
※smG規格合格品以外は売買禁止。違反すると1年以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます。(2025年現在)
※全長や重量のデータはメーカー発表によるもので、実測値ではではありません。また価格は発売当時のものです。
1971(昭和46)年の第一次モデルガン法規制により、主力商品であった金属製ハンドガンが規制対象となり、モデルガン業界には沈滞ムードが溢れた。それを機にモデルガンをやめた人もいた。
そんな中、ハイパト人気に手応えを感じたMGCの当時の設計部長、小林太三さんは、自身も好きだったポリスアクションムービーの人気に合わせ、以前から作りたかった金属製ショットガンの製品化を提案した。ポンプアクション ショットガンならハイパトと組み合わせて遊ぶことができると。
そのころ日本でも有名だったショットガンと言えば、ウインチェスターとレミントン。アメリカンポリスが使っていたのはポンプアクション ショットガンだったから、代表的なモデルといえば、ウインチェスターでポンプアクションを確立させたM97(モデル1897)か、その後継のM12(モデル1912)。レミントンならM31かその後継であるM870となる。
この中でM870は現用モデルであり、M12も日本で使っている人が多くいたことから、混同・悪用される心配もあり対象から外された。
小林さんはまず、プラスチック製ハイパトの発売で若いファン層も増えていたことから、定価1万円を切ることと、壊れず、ガンガン撃って遊べるモデルというコンセプトを掲げた。


右:A4判パーツ表。片面が図で、片面がリスト。カラー紙に印刷したものなど、バリエーションがあった。


この案は採用され、M97かM31のどちらかでの製作が決定した。ただし、社長から「安全対策として、ショットシェルは実銃に無いサイズにすること」という注文がつけられたという。だから口径は名称としては12番ということになっていたが、実際にはちょっと細かった。一部ファンの間では16番だとか、20番だとかいろいろ噂されていたが、いずれもハズレ。正解は実際にはないサイズだったのだ。
実は、小林さんは提案したとき既にM97で概略設計を終えていたそうだ。当初、バレルはポリスモデルとして17インチ(約43cm)を想定していた。しかしそれだと大きなダイカストマシンが必要になるので、15インチ(約38cm)に縮められた。これで1クラス小さなダイカストマシンで良くなる。それでもフレームの根本の支えの強度、金型から出したあとの反りの問題などがあり、最終的には12.5インチ(約32cm)ほどにされた。
しかし、M97では構造が複雑で、どうやっても1万円は切れない。そこで急きょ中身はM31でいくことにしたという。
小林さんは1万円を切るため、できるだけパーツ点数を減らすよう頭をひねった。製造公差が大きくても良く、簡単に作れるもの。その結果、各パーツがパズルのように複雑に組み合わされることになり、図面を描いたら、まずプラ板でパーツを作り、実際に動くかどうか試したという。




そして、重要ポイントとして、スライドアクションのPPKと同じ安全対策のチャンバーレスが採用された。ブリーチブロックで閉鎖されてしまえば見えないのだから、チャンバーレスでも何ら問題ない。改造不能。しかも、チャンバーレスにすることでチャンバーの肉厚を大きく取ることができ、長くて重いバレルでも十分支えられる。またショットシェルをチャンバー内へ押し込むストロークがほとんど要らなくなるため、省略できるパーツも出てくる。
そう思ってMGCのM31のメカニズムを見てみると、ブリーチブロックはエジェクションポートをカバーするだけの薄い板で、独立したエキストラクターはなく、その役割をする出っ張りが付けられているだけ。エジェクターも独立したパーツとしては存在せず、メインフレーム(レシーバー)の内側に出っ張りがあるだけ。
大きく異なる点は、ショットシェルをチューブマガジンから受け取って持ち上げるキャリヤーが、ショットシェルが排莢されるまで下から支えていなければならなくなったこと。そのおかげで、通常ならキャリアーが下に戻り、これを利用してチューブマガジン内にショットシェルを簡単に押し込むことができるのが、ガイドがなくなり自分で押し込む位置を合わせなくてはならなくなった。
外観はM97、中身はM31という図面が完成すると、手作りでサンプルが作られた。これが1974年の年末に出た最初のチラシやニュース、1975年1月1日に放送されたフジテレビ系の人気番組「新春かくし芸大会」の映画のパロディ(「仁義なき戦い」だっただろうか?)に使われた。



チラシの撮影ではM97だとバレないように撮影アングルを工夫し、レシーバーの部分が影になるようにしたという。なるほど、そうだったのか。
その後、中身に合わせて外観もM31に設計し直され、ボクの記憶では6月頃に発売されたのではないかと思う。そして大ヒットとなり、ショットガンが売れることがわかると、第2弾のM97は準備ができていたこともあって、その年の12月にスピード発売された。
ボクや友達はMGCニュースやチラシ、TVで見て、てっきりウインチェスターM97が発売されるのだと思い込んでいた。しかし誰もガッカリせず、多くの人がM31の登場を素直に喜んだ。
紙火薬を詰めるスペースが大きく、大迫力のファイアリングが楽しめた。しかもポンプアクションだから連射も楽。トリガーを引きっぱなしにすれば、ショットシェルが定位置に来たと同時に自動的にハンマーが落ちるスラムファイアもできる。ボクの周りではみんなが撃ちまくった。




木製ストックは大和木工に発注された。バットプレートは、とりあえず実銃用の汎用のものを使ったという。というのも、バットプレートはストックに取り付けて共削りするため、熱硬化性の樹脂でなければならないのだそうだ。作れるところが限られており、とりあえず全国から実銃用のバットプレートをかき集めて使ったらしい。
それが大ヒットとなったため予算も付き、実銃用の専門の業者にバットプレートを発注できることになった。とりあえず500個注文したら、そんなに一度に作ったことはないと驚かれたという。当時、実銃とモデルガンでは製造数が1桁、場合によっては2桁違ったらしい。
デラックスは、ウォールナットのしっとりとしたツヤ仕上げのストックが付いた。そして通常のバットプレートの代わりにパックマイヤーの実物リコイルパッドが装着された。
架空サイズの真赤なショットシェルには、黒で12ゲージ バックショットロードの文字、MGCロゴ、RIOT ACTなどが表記されていて、カッコ良かった。またそれを入れる紙箱も普通の赤ではなくマゼンタ系の赤で、内箱が黄色という凝ったもの。ボクはてっきり6発用だけだと思っていたら、12発用もあった。これがまたカッコいい。ショットシェルもその箱も、小林さんのデザインだそうだ。

右:後期のMGCオリジナルデザインのバットプレート



そして、本体の箱。白地に紺のインクでアメリカンポリスが描かれ、これまたカッコ良かった。やはり小林さんが絵を描き、デザインもしたのだという。
その箱絵の基になったのがLaw Enforcement Handgun Digestという本に掲載された写真。小林さんは洋書店で見つけ、その写真に多いに刺激されてポンプショットガンのモデルガン化を思い立ったという。そしてその写真を基に、見えていなかった足を付け足し、地面に倒れた悪漢が警官を見上げたような感じにした。写真の警官はサングラスを掛けていたので、苦手な目を描かずに済むからと自分で描いたのだとか。
思えば、MGCの魅力的なデザインは、ほとんどすべて小林さんがデザインしたものだった。本体はもちろん、パーツ表、パッケージ、チラシ、広告写真、カタログ、カートリッジケースに至るまで、銃好きのツボを押さえたものだった。
とくにイメージが重要なモデルガンの世界では、周辺の小物までが演出効果の一翼を担う重要アイテムなのだ。M31-RSはそれを思い知らせてくれたモデルガンでもあった。
●Vintage Model-gunとは
本コーナーにおけるヴィンテージ・モデルガンは、原則的に発売されてから20年以上経過した物を対象としています。つまり2012年現在では1992年以前に発売されたモデルガンということになります。
Text & Photos by くろがね ゆう
協力:タニオコバ 小林太三 http://www.taniokoba.co.jp/
Gun Professionals 2012年9月号に掲載
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