2025年5月号

2025/03/27

無可動実銃に見る20世紀の小火器195 BREDA M1930 Light Machinegun

▲バレルは基部のバレルカラーロックを引きながら、下側にカラーを外すことで、前方に引き抜くことができる。
またバレルには火傷防止のためのロープが巻きつけられたハンドルがあり、この部分を握ってバレルを引き抜く。

 

▲マズル部にはシンプルなトランペット型フラッシュハイダーが装着されている。

 

弾薬の変更

 イタリア軍は1891年、6.5×52 mm弾を小銃弾として採用した。これは弾薬が黒色火薬から無煙火薬へ切り替わる変革の時期にあたる。イタリアは同時に歩兵ライフルをそれまでのVetterli(フェターリ)M1870から、Mannlicher Carcano(マンリッカー・カルカノ)M1891に変更した。これは採用当時には最新鋭の銃であったが、第一次大戦が終わるころには、すでに旧式銃となっていた。また使用する6.5×52 mmは、他国の軍用弾に比べて、明らかに性能が劣った。
 その事実は、“古代ローマ帝国の再興”を掲げるムッソリーニがエチオピアに侵攻した第二次エチオピア戦争でも明確であった。エチオピアを植民地化した2年後の1938年、イタリア軍は小銃弾を7.35mmに変更することを決め、ライフルもこれに対応したM1938を制定した。
 一方、マシンガンはエチオピア戦争の前の1935年に、8×59 mm(M35)、別名8mm BRADA弾を採用している。フィアット・レベリM1914もこの8mm弾に対応すべく、大幅な改造が加えられ、M1935となった。空冷バレルとなり、問題のマガジンもベルト給弾方式に改められた。
 続いてブレダM1937が登場、この銃はガスオペレーションとなったが、依然として弾薬にオイルを塗って使用した。この銃の弾薬は金属製のクリップで供給される。
 これは発射済の薬莢がまた元のクリップに戻る構造で、かつてペリーノが実用化しようとしたものに近い。なぜか当時のイタリアは、マシンガンに奇妙な形式を採用しようとする傾向があった。
 新しい小銃弾7.35mmを使用するライトマシンガンは結局、作られることはなかった。なぜならイタリア軍の7.35mmへの更新は頓挫し、一部部隊だけが7.35mmを使用、その他、圧倒的多数の兵士は従来の6.5mm×52を第二次世界大戦中、継続使用した。
 イタリア軍のライトマシンガンは、戦争終結まで、砂漠地帯での使用に問題を抱えたブレダM1930のままであった。

 

▲トリガー型コッキングハンドルを操作して、初弾をチェンバーに装填する。ブレダM1930はクローズドボルトマシンガンだ。ボルトを開放した状態で保持するには、ボルトを引きながら、ボルトストップを押し込めば良い。バレル交換は、ボルトホールドオープンでおこなう。
セイフティはノブをつまんで引っ張りながら約100°回転させることでonとoffを切り替える。写真はoffのファイアリングモードだ。

 

▲マガジンは取り外すことも可能だが、通常はチャージャークリップを使用する。その方が多数のマガジンを製造供給するよりコストダウンが図れるからだろう。しかし、だからといって弾薬の装填に手間が掛かる仕組みにしてしまったのは正しい選択だとは思えない。

 

 

ブレダM1930ライトマシンガン
全長:1,230mm
重量:10.6kg(無可動実銃化加工前)
作動方式:ショートリコイルディレイドブローバック
口径:6.5×52mm Carcano
回転速度:500発/分
装弾数:20発
無可動実銃
価格:\660,000(税込)
(無可動実銃はボルトが溶接されているため、ボルト操作、装填、排莢等はできません。)

 

SHOP DATA(お問い合わせ先)

シカゴレジメンタルス

●東京上野本店
〒110-0005 東京都台東区上野1-12-7 Theシカゴビル
TEL 03-5818-1123 FAX 03-5818-1124
営業時間 12:00~19:30 年中無休

 

●大阪店
〒541-0048 大阪府大阪市中央区瓦町1-5-14 瓦町一丁目ビル4階
TEL 06-6223-9070 FAX 06-6223-9071
営業時間 12:00~20:00 年中無休

 

Text by Satoshi Matsuo

 

Gun Pro Web 2025年5月号

 

※当サイトで掲示している情報、文章、及び画像等の著作権は、当社及び権利を持つ情報提供者に帰属します。無断転載・複製などは著作権法違反(複製権、公衆送信権の侵害)に当たり、法令により罰せられることがございますので、ご遠慮いただきますようお願い申し上げます。

RELATED ARTICLE 関連記事