装備

2022/02/12

『持ち運ぶ』サーチライトを知っているか?「ジャパンセル KERAUNOS」

 

 現在ではさまざまなタクティカルライトが巷に溢れているが、施設や車輌に設置搭載される照射器(サーチライト)のような強い光を遠くへ照射し続けられる機材は少ない。ハンディなフラッシュライトと設置型サーチライトとの中間に位置するのがジャパンセルのKERAUNOS(ケラウノス)だ。一見すると小型ロケットランチャーのようなデザインで、1.5km先に照射した所で新聞が読めるほどの性能を持つのである。

 


 

ポータブル高輝度LEDサーチライト KERAUNOS

 

注意

※本製品は官公庁、自治体、企業向けの特殊機材となります。銃刀法や関連する法令に抵触しないものの、大光量であることから民間の個人用への販売は推奨されていません。


サーチライトとは!?

 

KERAUNOSの照射距離は実に1.5km以上もあり、M24SWSの限界射程をゆうに超える。観測手によって一瞬でも照射捕捉すれば、狙撃手は確実に標的を射抜くだろう

 

 大光量で照射角度が狭く、ビーム状に遠くまで光を投射する照射機具のことで、一般的なフラッシュライト等に比べ格段に高い照射性能と長時間の安定作動を可能としている。古くは軍艦に搭載された探照灯や防空用の照空灯なども同義だが、現在では「サーチライト」に呼称が統一されている。
 そもそも大光量のLEDフラッシュライト全盛期の現代において、ポータブルとはいえそこそこの大きさのサーチライトの持つ意味とは何だろう。光量だけで言えば数百メートル先まで明るく照らすフラッシュライトは存在するが、それでは代用できない機能について紹介したい。

 

高いパフォーマンスの理由

 

 KERAUNOSは310万cd(自動車用ヘッドライトの約7倍)と超大光量のサーチライトだ。一般的なタクティカルライトの場合、点滅ではなく長時間の連続照射となると、あっというまに電池を消費し、しかも素手では持てないほど高温となる。しかし、KERAUNOSでは内蔵する大容量バッテリーにより、最大60分の連続照射時間を実現。内蔵ファンによって常に冷却され、機能の安定性に寄与している。そして、防水防塵性(IP67相当)と耐衝撃性を有し、過酷な環境での使用や大規模災害時の捜索用機材としても高く評価されている。

 

腰だめで構えるKERAUNOSからは強い光が照射される。ストロボ発光時には暴徒対処時の幻惑、暴走車輌の阻止等に効果があり、施設警備用として定評がある

 

外部電源の取出しソケットも用意されており、車輌や施設等での運用ではより長時間の照射が可能

 

特異なデザインは高性能由来!?

 

 1.5km先まで照射可能だとしたら、その射程距離のイメージは大口径ライフル銃以上ともなり、一般的なフラッシュライトでは照準が定まらない。そこでコンパクトなマシンガンとして知られるFN P90にも似たグリップを持つ、ガンタイプのデザインを採用。肩付け照準により遠方の標的エリアに対し正確な照射が可能となった。主な販売先が自衛隊や警察、海外の軍隊ということもあり、銃器のような形状と操作機能は好意的に受け止められているという。

 

P90にも似たグリップ部分には、点灯/点滅を切替えるスイッチがあり、トリガーを引くと発光する

 

マズル付近のフォアグリップを前後スライドさせると、広角/挟角の無段階調整が可能。対象物によってスムーズな対処が行なえるのも特長だ

 

本体の上部と左右にはピカティニーレールが固定されており、光学機器やスリングスイベル等のガンアクセサリーパーツを活用できる

 

自衛隊や警察向け特殊機材から一般用途へ

 

 KERAUNOSは高性能なサーチライトであるが故に、自衛隊や警察、消防等の官公需に向けた販売が主体で、現在は民間向けの販売はしていない。しかし国内外の展示会での宣伝や納入実績によって地方自治体や民間企業からも防災や警備用途としての導入に興味を持つ問い合せが増えているという。防衛警備分野で培われた技術が、民間市場においても認知され始めているのである。

 

軽装甲機動車(LAV)の銃座などに装着可能な車載マウント。平時の基地周辺は民間人の生活エリアであり、銃器を車載した車輌での警備は威圧的な印象を与えるため、サーチライトが効果的だろう

 

クリアなガラスレンズ奥にはLED素子が見える。ジャパンセルは工業用の高精度なガラス研磨を得意とする企業で、発光を操るガラスレンズ部分の核心技術を持っている

 

頑丈なマズルガード(オプション品)でライト前面を保護できる

 

車載用マウントに装着したKERAUNOSを操作する際に、左側に突き出たレバーを前後させることで発光と消灯を操作する。右手では手押し式レバーで広角と挟角をコントロールする

 

TEXT:神崎 大
問い合わせ先:ジャパンセル 特機部HLS課
モデル:武藤竜馬(MTS)、我那覇 慎太

 

この記事は月刊アームズマガジン2022年2月号 P.64~65をもとに再編集したものです。

Twitter

RELATED NEWS 関連記事

×
×