エアガン

2022/02/13

カナマル「チャーターアームズ.44ブルドッグ」【毛野ブースカの今月の1挺!番外編】

 

「月刊アームズマガジン」編集部の毛野ブースカがおくる『毛野ブースカの今月の1挺!』 。今回は番外編パート6ということでカナマルのガスリボルバー『チャーターアームズ.44ブルドッグ』だ。

 

【番外編パート5】ファルコントーイの「ルガーP08」はコチラ

前回の「今月の一挺」はコチラ

 


 

 

 リボルバーを再現したエアガンはエアガン黎明期から少数ながら存在していた。黎明期のオートマチックピストルやライフルタイプのエアガン同様、ライブカート式がほとんどだった。実銃同様にカートリッジの装填・排莢が楽しめたものの、カートリッジ内にシリンダーとピストンを内蔵したものや、現在でも採用されているグリップ内にシリンダーとピストンを内蔵したものがほとんどで、お世辞にも実射性能が高いとは言えなかった。やがてガスガンが主流になるにつれてリボルバーもガスガン化され、従来のライブカート式に加えて、リボルバーのボディにセミオートガスガンの発射メカニズムを組み込んだケースレス式モデルが登場した。そんな「ガワ」だけのケースレス式ガスリボルバーのひとつがカナマルの「チャーターアームズ.44ブルドッグ(以下ブルドッグ)」だ。

 

カナマルのガスリボルバー「チャーターアームズ.44ブルドッグ」。バレル長4インチのブルドッグはチャーターアームズのリボルバーの中でもっとも普及したモデルだ。価格は5,800円

 

チャーターアームズのリボルバーはスミス&ウェッソンやコルトのようなサイドプレートがないのが特徴。トリガーガード一体のワンピースフレームにトリガーやハンマーが組み込まれており、カナマルのブルドッグもフレームは金属製だった

 

こちらは.357マグナム弾仕様の6インチモデルの.357トラッカー。バレルや刻印が異なるだけでその他のパーツは共通となっている

 

 当時ケースレス式ガスリボルバーといえばブルドッグと、マルゼンのM29とパイソン、タナカのパイソンが存在した。マルゼンのM29とパイソンはシリンダーの回転はおろかスイングアウトもせず、まさに「リボルバーの皮を被ったオートマチックピストル」だった。タナカはシリンダーは回転したもののスイングアウトできず、バレルシュラウドにマガジンが設けられていた。外観もリアルで、そのこだわりは現在発売されている同社のパイソンシリーズに引き継がれている。それらに対してブルドッグは一風変わったメカニズムが採用されていた。
 実銃のブルドッグは1964年に設立されたチャーターアームズが開発したダブルアクションリボルバーである。今でこそメイドインUSAのリボルバーといえばスミス&ウェッソンやスタームルガーが有名だが、かつてはコルトはもちろんチャーターアームズやハ―リントン&リチャードソン、ハイスタンダード、ダンウェッソンなど複数のメーカーが存在した(コルトは近年、パイソンをリバイバルするなどリボルバーに力を入れているが、かつてほどの勢いはない)。そんな中でチャーターアームズのブルドッグはシングル/ダブルアクション、装弾数は5発、サイドプレートを持たないワンピースフレーム構造を採用、コンパクトで軽量なボディながらパワフルな.44スペシャル弾を撃てることから1970年代から1980年代にかけて人気を博した。1990年代以降チャーターアームズは倒産・再建を何度も繰り返し、現在もブルドッグをはじめとしたリボルバーを製造している。

 

マズルはインナーバレルを固定するパーツが追加されており.44口径ではなくライフリングも再現されていない。実銃は.44口径らしく迫力のあるマズルフェイスをしている

 

コンパクトリボルバーながら反射防止のセレーションが刻まれているなど意外としっかりした作りのフロントサイト。リアサイトとあいまって狙いやすい

 

長さ4インチのブルドッグのバレル。マズルにかけて緩やかにテーパーがかかっており銃名(BULLDOG)と仕様弾(.44 SPL.)と刻印されている

 

長さ6インチのトラッカーのバレルはストレートタイプ。刻印はよく見ると「BULLDOG “TRACKER”.357MAG」と打刻されており、書体もブルドッグとは微妙に異なる

 

バレル右側には社名とアドレスが刻まれている。バレル根元下面はエジェクターロッドが干渉しないようにカットされているのがわかる

 

ヘッド部分にチェッカリングが施されたエジェクターロッドは必要最小限の長さ。ヨーク部分はフレームに入り込むように収まる独特なデザイン。実銃では.44スペシャル弾が5発収まるシリンダー前面には弾頭がリアルに再現されている

 

トリガーガードはコルトSAAのようにフレームと一体になっている。前面にセレーションが入ったシンプルな形状のトリガーはダブルアクションでも引きやすい。スミス&ウェッソンのようなシリンダーをスイングアウトした際にズレないようにする突起が追加されている

 

コルトと同じくファイアリングピンはフレーム側に設けられている。ハンマーは小ぶりで衣服に引っ掛かりにくい。スミス&ウェッソンと同様、シリンダーラッチを押すとシリンダーがスイングアウトする。各社の特徴をうまくブレンドしている

 

コルトのアクロサイトに似たリアサイトはアジャストできない。フラットなフレームトップなどどことなくコルトのリボルバーに似ている

 

丸みを帯びたグリップは日本人でも握りやすい。グリップ下面にはガス注入バルブが露出している

 

 スミス&ウェッソンやコルト、スタームルガーなどのメジャーリボルバーではなく、あえてマイナーなブルドッグが選ばれたのは、カナマルブランドのOEMとして製造を担当したKTWのメーカーポリシーである「他メーカーの出さない特異な機種をあえて選ぶこと」に由来しており、KTW初のトイガンでもあった。発売は1987年、メカニズムの発想はKTW社長の和智香氏、設計試作は六研によって行なわれた。4インチのブルドッグ以外に6インチのトラッカー、2インチのアンダーカバー、ターゲットブルドッグがラインアップされいた。バレル以外のパーツはすべて共通となっており、シリンダーが動かない以外は外観の再現度は高いほうだった。

 マルゼンと同じくブルドッグもシリンダーは動かないのだが、シリンダー左側だけがスイングアウトした。その理由は着脱式カセットマガジン(装弾数10発)を用いたメカニズムを採用しているためだ。トリガーを引くとノズルが前進してBB弾をチャンバーに送り込み、ハンマーダウンするとプル式のガス放出バルブが押されてBB弾が発射、トリガーを戻すとノズルが後退、次弾発射の準備が整う。ガスタンクはグリップ内に設けられている。詳しくは写真を見ていただくとして、タナカのペガサス式ガスリボルバーはこのブルドッグに搭載されたメカニズムをもとに六研の六人部登氏がモディファイしてタナカのペガサス式ガスリボルバーを完成させたと言われている。確かにフレームに固定されたガスタンクとガス放出バルブ、マガジンの周囲をシリンダーが回転するメカボックスは似ているところがある。

 

ドラムマガジンのような着脱式カセットマガジン。大きさはは500円玉ほど。装弾数は10発

 

着脱式カセットマガジンはシリンダーを左側だけスイングアウトさせてノズル/ガス放出バルブが内蔵されたユニット前方に装填する。交換作業は素早くできる

 

トリガーと連動しているノズルの動きを見てみよう。トリガーが前進している(ハンマーがダウンしている)状態だとノズルは後退している

 

トリガーを引くとトリガーと連動したカムがノズルを前進させてBB弾をチャンバーに送り込み、ハンマーがダウンしてガス放出バルブを開放、BB弾が発射される

 

バレル後端(フォーシングコーン)にチャンバーが装着されている。インナーバレル側にチャンバーが設けられているのはガスリボルバーでも珍しい

 

ガスタンクはグリップ内に設けられている。実銃のようにフレームは金属製の一体型なので剛性はしっかりしており、ステディーな作動フィーリングが味わえる

 

 ブルドッグのメカニズムそのものは非常にユニークで、着脱式カセットマガジンは今見ても新鮮だ。ブルドッグ以後、タナカのペガサス式ガスリボルバーや東京マルイの24連発式ガスリボルバーシリーズが登場し、ガスリボルバーは一定のファン層を獲得している。もしブルドッグではなくスミス&ウェッソンなどのメジャーなモデルだったとしたらもっと人気が出たかもしれない。あるいはメカニズムをブラッシュアップしてホップアップを搭載したらもっと面白い製品になったかもしれない。そんな妄想を浮かべながらこの銃も後世に伝えるために再び永い眠りについてもらおう。

 

タナカのペガサス式ガスリボルバー・スミス&ウェッソンM442エアウエイト(写真左)と比較したところ。ブルドッグのフレームはJフレーム相当だが、シリンダーは.44スぺシャル弾を5発収めるためにNフレーム相当になっている。このアンバランスさがブルドッグの特徴だ

 

[プロフィール]

 

アームズマガジンの編集ライター。エアガンシューティング歴35年。数多くの国内シューティングマッチ入賞経験に加えて、1999年、2000年に開催されたIDPAナショナルズ参戦、シグアームズアカデミーや元デルタフォース隊員のラリー・ヴィッカーズのタクティカルトレーニングを受講するなど実弾射撃経験も豊富。今まで25年、300冊以上のアームズマガジンと関連MOOKの制作に携わる。

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