エアガン

2020/08/02

ARROW ARMS「APC9-K」【毛野ブースカの今月の1挺!】

 

「月刊アームズマガジン」編集部の毛野ブースカがおくる『毛野ブースカの今月の1挺!』 。今月はARROW ARMSの電動ガン『APC9-K』をご紹介!

 

前回の「今月の一挺」はコチラ

 


 

 

 M4カービンに代表されるアサルトライフルの台頭と多目的化によって、かつては軍用銃の主流であったサブマシンガンはオワコンになってしまった。確かにサブマシンガンは法執行機関においてはメインウェポンとして活躍しているが、軍用銃としては第一線からは退いていることは確かだ。しかしそんな中、スイスのB&Tが開発したAPC9-Kがアメリカ陸軍の SサブCコンパクトWウェポンプログラムに提出、SIG SAUER のMPXなどのライバルを押さえて制式採用された。SCWとは要人警護などに就く隊員に支給されるためのもので用途は限定されているものの、サブマシンガンとしては約77年ぶり(1943年に採用されたM3グリースガン以来)に制式採用されたとあって話題になった。

 

ストックを縮めるとMP5Kとほぼ同じサイズになる。想像以上にコンパクトだ。全体の雰囲気はアサルトライフルをピストルキャリバー化したような感じだ

 

 そもそもB&TのAPC9(APC=アドバンスド・ポリス・カービン)は、いわゆる次世代型サブマシンガンに属している。このカテゴリーに属する代表機種と言えば、先に述べたSIG SAUERのMPXやCzのスコーピオンEVO3などだ。口径は9mm×19などの拳銃弾を用いることには変わりないものの、ポリマーやアルミなどの多用化による軽量化、クローズドボルトからの作動方式、M4カービンなどのアサルトライフルに準じた(もしくは共通の)操作系や、左右両側から操作できるアンビコントロールレバーを備え、ストックやハンドガードなどが容易に交換できる高い汎用性・発展性を有している。さらに同一メーカー内でアサルトライフルと共通化・体系化を図ることでウェポンシステムが構築されている。近代サブマシンガンの代表機種であるヘッケラー&コックのMP5はこれらの特徴をもともと備えているが、いかんせん誕生から50年以上が経過し、古さは否めなくなっている。そこでMP5の買い替え需要として登場したのが次世代型サブマシンガンなのである。

 

ストックを伸ばしたところ。使い勝手の良さは旧世代のサブマシンガンとは比べものにならない。それが次世代型サブマシンガンの特徴だ

 

 2011年に誕生したAPC9は飾り気のない質実剛健なデザインを好むB&Tのイメージどおり直線基調のアルミ削り出しアッパーレシーバーにポリマー製ロアレシーバーが組み合わされ、作動方式はクローズドボルトからのストレートブローバック、M4カービンに準じた操作系を備えている。口径は9㎜×19と.45ACPの2種類を用意。マズルには自社製のサイレンサーが装着可能だ。2019年にはアンビチャージングハンドル、交換可能なグリップ、グロックやP320のマガジンが使用できるロアレシーバーが用意されたAPC9 Proが登場。そのショートモデルであるAPC9 Pro.Kがアメリカ陸軍に採用された。

 

ハンドガードには左右下にピカティニースペックのアクセサリーレールが備わる。アンダーレールにはスリングスイベルマウントが付属する

 

 ARROW ARMSはこのAPC9 Pro.K(製品名はAPC9-K)を電動ガンで初めて再現した。アッパーレシーバーはCNCアルミ削り出し、ロアレシーバーは強化樹脂製。アンビタイプのセレクターレバーやマガジンキャッチ、ボルトキャッチは実銃同様左右どちらからでも操作可能。バージョン2タイプのメカボックスには電子トリガーシステムが内蔵されている。実銃はレシーバーやストックなどがモジュラー化されており、シチュエーションに応じたカスタマイズができることから今後のバリエーション展開が期待できそうだ。

 

折りたたみ式のチャージングハンドルが左右に備わっている。チャージングハンドルを引くと可変ホップアップダイヤルにアクセスできる

 

 実際に手にしてみると、意外にコンパクトなことに驚かされる。狭い場所でも取り回しに苦労することはないはず。操作系もM4カービンに慣れている方なら違和感なく操作できる。ストックはロックボタンを解除することなく引くだけで伸ばすことができる。多くの旧世代サブマシンガンが肩付けして撃つことをあまり想定されていなかったのに対して、APC9-Kはしっかり肩付けして撃つことができる。次世代型サブマシンガンは使い勝手の面で大幅に進化しているのが体感できる。MP5とほぼ同じサイズのストレートタイプのマガジンはロング、ミドル、ショートの3本がセットになっている。スペアマガジンの販売も予定されているとのこと。フリップアップサイトに加えて初回限定特典としてSOTAC製のT2タイプドットサイトが付属しており大変お買い得。新し物好きな方や次世代型サブマシンガンを味わいたい方にこのモデルはお薦めだ。

 

次世代型サブマシンガンの特徴であるアンビコントロールレバー。セレクターレバーはM4カービンと同じ90度下に回すとセミオート、180度回すとフルオート

 

M4カービンをモチーフにしたと思われるグリップはモーターが内蔵されているにもかかわらず非常にスリムで握りやすい

 

肩付けしやすいストックは引くだけで伸ばすことができる。ロックボタンはストックベース下部に備わっている

 

ラバー製バンパーが付いたマガジン。写真左からショート(65発)、ミドル(80発)、ロング(110発)が標準装備されている

 

SOTAC製のT2タイプドットサイトが初回限定として付属してくる

 

TEXT:毛野ブースカ

 


[プロフィール]

 

アームズマガジンの編集ライター。エアガンシューティング歴35年。数多くの国内シューティングマッチ入賞経験に加えて、1999年、2000年に開催されたIDPAナショナルズ参戦、シグアームズアカデミーや元デルタフォース隊員のラリー・ヴィッカーズのタクティカルトレーニングを受講するなど実弾射撃経験も豊富。今まで24年、280冊以上のアームズマガジンと関連MOOKの制作に携わる。

 
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