2025/10/11
コンシールドキャリーパーミット(拳銃携帯許可)とS&W M&P9 シールド【動画あり】

Gun Professionals 2019年10月号に掲載
コンシールドキャリーパーミットを取得して、銃を合法的に携帯し、緊急事態に備える。銃が好きな人なら、誰もが一度はそんな生き方に憧れるのではないだろうか。米国では現実に1700万人以上の人がこれを実行している。だが身の危険を感じて銃を使うときには、多くの責任が伴い、冷静な判断が必要なのだ。
8日号でユタ州のCCW(Carrying a Concealed Weapon=拳銃携帯許可証)のクラスを受けたことを簡単にご紹介した。ユタ州のCCWは他の30州でも有効なマルチステートCCWで、さらに州外の住民でも申請する事が可能となっている。
筆者は友人のIKEDA氏と一緒に、5月19日にLA近郊のバーバンクでシールドパーソナルトレーニング社のクラスを受け、その後必要書類をユタ州の刑事局に送り、1ヵ月弱でパーミット(許可証)を手に入れた。
今月はこのクラスの内容と共にIKEDA氏が選んだキャリーガンであるS&W M&P9 Shieldをカスタマイズし、数種のホルスターと共に紹介したい。
この受講したクラスでのトピックは、“ハンドガンの基本的な扱いと弾の安全な取り扱い”、“ハンドガンのパーツ、操作、メンテナンス”、“弾の種類、仕組みと発射原理”、“ハンドガンと弾の保管”、“射撃の基礎知識”、“ホルスターの種類”、“コンシールメント”、“安全なドロウ”、“安全なホルスターへの戻し方”、“護身に関する法律”、“銃の正当防衛での使用”、“銃の持ち運びとコンシールメント(隠匿)”という項目に分かれていたが今回はその重要部分だけを選んでご紹介したい。
このクラスでは筆記試験も射撃も面接も不要、指紋登録と前科のチェックは受けるが、後は書類だけで処理されるほどシンプルだ。州やカウンティ(郡)で内容に差はあっても、大概はレンジでの射撃や面接がある。
しかしその射撃講習も、3、5、7ヤードから6~12発くらいを撃って最低限の銃の扱いとスキルがあることを確認する程度の簡略化された内容が多い。カリフォルニア州では新法AB2103により今年から申請者は最低8時間、最長で16時間のトレーニングが義務付けられ、キャリーガンは大抵3挺を選んで登録する仕組みだ(ユタ州ではそのような制限もない)。
コンシールドキャリーでは衣服の下に銃を隠し、外から銃を携行していることがほぼ確認できないようにするのが前提だが、財布を取り出す時や、上着やシャツの裾が風に煽られ、携帯している銃が偶然見えてしまったとしても、それで罰則が下るというほど厳格なものではない。ノースキャロライナ在住のToshiさんによれば、田舎だとその辺は気にしない人達が多いのだとか。
CCWパーミットを持っているからといって、認められた州の全ての場所で銃を携帯できるという訳ではない。郵便局や連邦ビル(駐車場はOK)など、税金で運営されている場所では携行できないが、国立公園内は許可される。公立の学校内もだめだ。自動車の運転と同じで携行時はアルコールの影響下にあると罰せられる。
クラスの最後のトピックは、正当防衛での銃の使用に関する内容で、“銃を携帯したからといって正義感を過度に駆使したり、アグレッシブになったりしないこと”、これは非常に重要だ。一般市民にも緊急時には警察官が到着するまで犯罪者を拘束する権限(Citizen's arrest)がある。しかし、銃を持っているからといってそれで気が大きくなり、警察官の代わりや自警団を気取るべきではないという事なのだ。
自分の目の前で誰かが襲われているのを目撃し、その人を助けるために銃を使用する事は許容範囲だが、事件を遠くから目撃しても、わざわざそこに飛び込んでいこうとせず、その場から離れ、警察に連絡し、後を任せて距離を置く事を教えられる。
銃を抜く必要がない状況なのに威嚇する目的で相手に銃を見せれば、それは“恫喝”と判断され、罰せられる。護身用の銃とは、自ら(あるいは直ぐ目の前の他者)が重大な生命の危機にさられている場合にのみ使用する最終手段なのだ。あくまでも暴力からの防御のためのものである事を忘れてはならない。コンシールドキャリーウエポンは、その場を逃れられず回避できない危険な状況が目前に迫った時に使用し、身を守るためのものだ。しかし、現実にそういう状況に直面し、正当防衛で銃を使用したといっても、その後にはその正当性を証明する法的な手続きが必要となり、それは簡単なことではない。銃を携行するということは、慎重な行動と法的な知識、そして心構えが必要だ。
実際に身を守るために人を撃ち、特にそれによって相手が死亡した場合、警察は過剰防衛(Excessive self-defense)を疑い、調査が行なわれ、その発砲した人物の周辺も徹底的に調べられるという事もインストラクターは強調する。刑事裁判では無罪となっても、民事では相手の親族から訴えられるというケースも珍しくない。もちろん、あまりにリスクを考えすぎてはいたら、いざという時に銃の使用を躊躇してしまうかもしれないが、死に至らしめなくても人を撃つ事についての責任問題は、時として想像以上に大きいという事は認識しておくべきであろう。
例えば私有地に足を踏み入れた不審者を目撃しただけで、背後から警告なしに狙って撃つなどの行為は明らかに行き過ぎだ。脅威となる対象(threat)が武器を所持していて襲いかかってきたり、相手の攻撃により、こちらが大きな怪我を負うなどの生命の危機にさらされているのであれば正当防衛の条件が揃う。そんな状況であれば銃を使用すべきだが、危険性が少なく、警告し相手を従わせる余裕があれば、その状態で相手を拘束し警察を呼ぶべきだろう。CCW保持者側がじゅうぶんに有利な条件において、相手に重症を負わせれば過剰防衛と判断される可能性が高い。
最近はソーシャルメディアでのその人物の日頃からの発言や写真なども調査対象となり、危険な思想や暴力的な行動、差別的発言などが確認されると、例えそれが冗談だったとしても法定に提出され、不利な状況に追い込まれる可能性も否定できないという。
日頃から人を撃つ事に憧れを持っているような発言をしていたり、暴力的な思想や人種差別的な発言を繰り返す人がいる。自己防衛の権利を拡大解釈し、「武器を取り出すように見えたら直ぐに撃ち殺せる」、「敷地内に入ったら即座に撃って良い」など、「撃つ」、「殺す」とやたら言うのが好きな人達もいる。たとえ冗談でも日頃からそういう発言を繰り返せば、周囲に対する自らの印象を下げて、状況によりマイナスに働く危険性は理解しなければならない。
警告の仕方についても「近づいたらお前を殺す」、「武器を捨てなければお前の頭をぶっ飛ばしてやる」など明らか対象を撃ち殺す事を前提とした脅し文句を発するのも危険行為だ。
今回受講したクラスの内容について、ごく限られた範囲を書いたがCCWパーミットで銃を携行するのにそれ相応の知識と心構えが求められるという事なのだ。理屈では解っていても実際に生命の危険が迫れば精神的なストレスから冷静な判断と行動が取れる保証はないが、CCWパーミット保持者には物理的にだけではなく法的にも自らを守る心掛けが必要となる。
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M&P9 SHIELD CA 全長:157mm 銃身長:79mm 全高:127mm 重量:587g |


