2025/04/17
IWI Micro Tavor X95【動画あり】
IWI Micro Tavor X95
Text & Photos by Yasunari Akita
Gun Professionals 2015年1月号に掲載
タボールTAR-21を基に開発され、2009年にイスラエル国防軍に制式採用されたコンパクトモデルが、マイクロタボールと呼ばれるX95だ。単にTAR-21を短縮したのではなく、特殊部隊が使用することを想定した様々な改良が加えられている。最新型X95と従来型タボールのコンパクト版CTAR-21の細部を比較し、その改良箇所を探る。
IMIとIWI
イスラエル生まれの小火器といえば半世紀以上の歴史を持つSMG(サブマシンガン) UZI、CZ75をコピーし独自にアレンジしたジェリコ941、デザートイーグルのような特殊な大口径ハンドガン、そしてAKを独自にデザインしたガリルなどの名前があげられる。
それらのモデルは現在もほぼそのままで製造されたり、近代化の改修を受けたり、枝分かれしたさらなる発展型などが数多く存在する。
その製造メーカーはイスラエル政府が所有・運営するIMI(イスラエルミリタリーインダストリーズ)社だ。IMIは戦火の耐えない自国の防衛に務めるべく、イスラエル国防軍(以降IDF=イスラエルディフェンスフォース)のリサーチ&デベロップメント(研究開発)チームと連携して兵器の開発を行なってきた。その結果、小火器だけでなく弾薬、ミサイル、戦車、迫撃砲などの製造も行う巨大軍事企業に発展している。その守備範囲の広さから、自国に武器を供給するのみならず、諸外国への武器輸出も盛んだ。
2005年にその銃器製造部門がSKグループに買収されIWI(イスラエルウェポンズインダストリーズ)社として独立した。しかし、それ以降もIDFやその特殊部隊を支え続けていることには変わりはない。
UZIからガリルまで
IMIとして出発したIWIの出世作が50年代半ばに完成し200万挺以上も製造されているUZIだ。オープンボルトのブローバック方式による9mm×19のSMGで、信頼性に優れていることから世界各国の軍・警察で運用され、イスラエルの代表的な銃の一つとなった。
ところが時代が進むと、大型で重く、デザイン面でも古臭くなってきたことから販売面で苦戦を強いられるようになり、80年代にはミニUZIやマイクロUZIなどの小型モデルを開発して、ライバルだったH&K MP5シリーズに対抗した。
90年代以降はピストル弾を撃つ大型SMGの需要が徐々に減っていったため、IWIはUZIの近代化を強力に推し進めUZI PROを2010年に発表した。
UZI PROはマイクロUZIを設計母体としたもので、安全性の強化やコッキングレバーを側面に移動させるなど、人間工学的に扱いやすいデザインにリニューアルしたものだ。同時にグリップ部をポリマー化し軽量化を図っており、ピカティニーレールの標準化によって光学サイトを含めたアクセサリー装着を可能するなど、かなり現代版として突き進んだUZIの末裔となっている。
IMI/IWIのもう一つの代表作が、70年代に登場しIDFに採用されたアサルトライフルのガリルだ。多くの国々でコピーされまくったAKだが、ガリルはAKをベースに独自に改良を加えた異色の存在で、それまで使用していたFALの後継モデルとなった。
ガリルはAKを基にフィンランドのバルメが開発したRK62に強い影響を受けながらYisrael Galilが設計したもので、樹脂性のハンドガードとグリップ、右側面に折りたためる式フォールディングストック、折り畳み収納できるバイポッド、左手で操作しやすいように直立したコッキングレバー、右手の親指で操作できるセレクタースイッチ、レシーバーカバー上に取り付けられたリアサイトなど独特なデザインを持っている。IDFはベトナム戦争後、アメリカから払い下げられたM16A1とガリルを併用したとされている。
口径は5.56mm×45が中心だったが7.62mm×51のバリエーションも開発され、一般市場向けのスポーター版も販売された。
ガリルは現在も現行商品で18インチ銃身のスタンダードなAR、13インチ銃身のSAR、そしてイスラエル警察によって使用されている8.34インチ銃身のマイクロガリルの3つのサイズが提供されている。その他にも23インチ銃身で狙撃用に特化したガリルスナイパーSA(口径7.62mm×51)もラインナップされるなど、製品構成は充実している。


そしてガリルを基にさらに発展させた新シリーズがACEだ。基本内部構造はそのままでマガジンも共用できるが、より現代の運用思想に則った改良が加えられている。
苦情の多かった重量(マガジン無しで3.8kg)の問題を解消するため、金属でなくても強度的に十分な箇所を出来るだけポリマー製パーツへと置き換えることで、3kg台前半まで軽量化を押し進め、より扱いやすいデザインとするため人間工学的な改良が加えられた。
新型マズルブレーキを採用し、コッキングレバーを右側面に移動、トリガーメカも従来型とは異なり、スナイパーSAで採用した2ステージのものを標準装備している。
4つのピカティニーレールによってアクセサリー装着の拡張性を広げ、光学サイト等との併用がより容易になった。ストックはAR15系のようなテレスコピック(収縮式)に置き換えられ、最終弾発射後にはボルトはホールドオープンする機能が追加されるなど、かなり使い勝手が良いモデルへと改良された。
口径5.56mm×45ではACE21(8.45インチ銃身)、ACE22(13インチ銃身)、ACE23(16インチ銃身)があり、7.62mm×39ではACE31(8.46インチ銃身)と32(16インチ銃身)、そして7.62mm×51ではACE52(16インチ銃身)、ACE52L(18インチ銃身)、ACE53(20インチ銃身)がある。