2025/11/22
80年代初頭にデビューした当時衝撃のミニガン S&Wモデル469

Gun Professionals 2021年10月号に掲載

チョイ古のS&W
毎月毎月、締め切りに追われる苦しい日々だ。特に2021年9月号は、東京オリンピック開催の影響で入稿期限が大幅に前倒しとなり、心がマジで死に絶えた。
やっとこ締め切りを乗り越えた瞬間に心は復活するが、同時に次のネタ探しが始まる。
自分の場合、ネタの発掘はガンショーよりもガンショップ巡りが常套である。ショップ買いなら中古銃でも一定の保証が付くし、ショーと違ってじっくり落ち着いて眺められる点も都合が良いからだ。
ということで、ウイルミントンの街へ走る。このエリアは質屋を含め、大き目で内容の濃いショップが結構多い。毎月一回は必ず回る。
もちろん、愉しくてお手頃な一挺がそうそう簡単に転がっているはずもないから、あらかじめ手に入りやすくてまだネタにしていない現行銃を予備的に想定しつつ回る場合が多い。例えば、スプリングフィールドのヘルキャットとかモスバーグのMC-1辺りとか、或いはRUGERのSP101なども自分はやってないしといった具合にだ。基本、財布の厚みとにらめっこしつつなのは、今更言うまでもない。
その日、最初に目に留まったのはコルトの新キングコブラの中古だった。この銃もようやく中古が出回るようになった様子。しかし、リアサイトがフィックスドのベースモデルでありながらお値段が税込み800ドル超えときた。現在、新品が税金入れると千ドル近いので致し方ないとは言え、う~ん、自分だったら新コブラの姉妹品である黒仕上げでボブドハンマーのナイトコブラのほうが絶対にカッコイイと思うなあ。新キングコブラは少々華奢過ぎて、全然キングな雰囲気じゃないんだよね~などと、横道に逸れかかったところでひょっこり発見したのが今回のネタ、S&Wのモデル469だった。
S&W第二世代
見つけた瞬間には、「まあ久しぶりか。珍しくも何ともないし、ありきたりのS&W。それも一種忘れ去られたセカンドジェネレーションだよな」といった印象。
一応、手に取って感触を確かめつつ、考えてみるとこのモデルは所持した経験がない。まともに向き合った試しもない。フルサイズのセカンドなら、モデル459やら鉄フレームのモデル539も所持するが、カットダウン系となると、サードのモデル6906とか3913辺りの借り物を記事にした程度だ。コイツはまったくの未体験なのである。
じっと見つめるうちに、意識がグイーンと過去に引き戻された。旧Gun誌83年4月号のタークさんの記事へと一気に飛んでしまった(このパターン、以前のアストラA80の回でも使いましたが)。
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S&WがDAオートのセカンドジェネレーションを登場させたのは、79年の事だ。元々は、アメリカ軍の次期サイドアームのトライアルがきっかけであり、その研究成果を市販品へフィードバックさせたのがセカンドの初号機であるモデル459だった。
その459は、ファーストジェネレーションのモデル59を元に、フレームの強化とウイング付き大型フルアジャスタブルリアサイトの投入、およびオートマチックファイアリングピンセイフティを追加した強化発展版だった。
S&Wのファンとしては、459だけでもなかなかに興味深かったはずではあるが、本命はその後に控えていた。セカンドジェネレーションの一番の目玉は、今ご覧のモデル469をはじめとするファーストになかったカットダウンモデルだったことは疑う余地はあるまい(645等の大口径大型モデルのインパクトも大きかったですけどね)。
ではあるのだが、正直自分は、日本に居た頃はファーストジェネレーションへの憧れがバリバリに強かった。また、渡米した翌年の88年にはサードジェネレーションが華々しく登場し、前述の6906やら3913といったカットダウンモデルが市場を席巻したりもして、ついついセカンドの短いヤツはすっ飛ばしていたのが実情だ。思えばセカンドは、ファーストとサードの狭間にやや埋もれがちな薄幸の世代。どうしてもロストジェネレーション的な印象が無きにしもあらずで。
以上のような思いが、モデル469を前にした自分の中でグルングルンと渦を巻き、しばし立ちすくんでしまった。そして気付いたら、細かいチェックに入っていた(笑)。
あちこちに、小さなキズとかアナダイズドの剥げは見える。実際、少々目立つ。パーフェクトではない。
スライドを引いてチャンバー部の匂いを嗅げば、長年撃ってなくて油も差してなくて、箱に入れて金庫に閉まったままでしたみたいなすえた匂いがするとともに、撃った形跡があまり見当たらない。細かな傷を覗けば、なかなかの掘り出し物かもしれない。
予備マガジンも2個付くし、箱を含めた付属品一式がすべて揃っている。当時のオマケであるS&W純正のスクリュードライバーは今や超希少品。ありがたいことこの上ない。
ダメだ。もう、どうにも離せなくなって、めでたくご購入。お値段は500ドル+税とやや高めだった。少し前なら、上手くすれば300ドル代の代物。中古市場において、この時期のS&W製DAオートはいまいち人気がなく、ひと頃はどこでも投げ売り状態だった。今は鉄砲不足で銃全体の相場が上がっており、この辺りが多分妥当な線。ちなみに発売当時の価格は、米ガンダイジェスト85年版で399ドル。フルサイズの459よりも40ドルほど安い価格設定だった。


