2025年8月号

2025/06/27

【NEW】タナカ SIG P228 エヴォリューション2 “ウォームシルバーコーティング” ALL HW

 

 

1989年に市場投入されたP228はブルー仕上げとK-Kote仕上げの2機種があった。しかし、耐腐食性能の高いニッケルメッキ仕様を求める市場の声に対応し、SIG Armsは独自のメッキ仕様を製品化している。タナカが製品化したP228ウォームシルバーコーティングは、あの時代のP228を再現したものだ。

 

 SIG SAUERは現在、世界で最もアグレッシブな銃器メーカーとなっている。その製品は、ハンドガン、アサルトライフル、バトルライフル、ピストルキャリバーカービン、スナイパーライフル、マシンガンなどの銃器本体に加えて、弾薬、サプレッサー、スコープ、ダットサイト、オプティカルデバイスなどと非常に幅広い。しかし、同社が注目を集めた1980年代においては、まだ数機種のピストルとスイス軍用アサルトライフルだけを製造する中規模のメーカーに過ぎなかった。
 アメリカ軍のXM9トライアルで同社のP226が高く評価されたことで、その製造をアメリカ国内でおこなうことを目指し、SIG Armsの設立が進められたのが1984年のことだ。結果的にM9として採用されたのは、ベレッタの92SB-F(92F)であったが、SIG Armsは予定通り、1985年にバージニア州に設立された。

 

▲温かみのあるニッケルメッキの色を塗装で再現している。


 XM9トライアルでの善戦により、P226の人気は爆発的に高まっていた。銃器に詳しい人達からは、アメリカ軍に採用されたベレッタより、高く評価されたと言ってよいだろう。1970年代半ばにP220が輸入された際には、ほとんど見向きもされたかったSIG SAUERピストルが、9mmのダブルスタック仕様となったことで、これほどまでに評価が変わるという事実は、なかなか興味深い。XM9トライアルによって、当時Wonder 9と呼ばれた新世代セミオートマチックピストルへの関心度が高まり、アメリカ市場の意識が変わったことがその背景にあるのだろう。
 高い評価を得て、セールス的にも大成功となったP226に新たなバリエーションP228が加わったのが1989年のことだ。コンパクト仕様のP228が多くの法執行機関によって採用されたことは、先月号のSIG P228エヴォリューション2 オールHWのご紹介記事に書いた通りだ。
 この銃は、法執行機関のみならず、一般市場でも高い評価を得て、P226と共に売り上げを伸ばしている。
 アメリカ市場では、ニッケルメッキを施したハンドガンが好まれる話は、6月号と7月号のディテクティブスペシャル、ポリスポジティブスペシャルのご紹介記事で書いた。実際にはニッケルメッキが好まれるというより、耐腐食性能が高い銃に対する需要が高いというべきだろう。1965年以降、ステンレスを用いたハンドガンが登場すると、ニッケルメッキよりさらに腐食しにくいということで、その新素材に対する人気は高まっていく。

 

▲操作系パーツをすべて左側面の親指が届く範囲に集約させている。


P228が発売された1989年の段階で、アメリカ市場にはかなりの数のステンレスモデルが市販されていた。S&Wのリボルバーと39/59系オートは、主要モデルのほとんどにステンレス仕様があったし、ステンレス化に後れをとったコルトも既に、パイソンやキングコブラをステンレス化させ、シリーズ80やデルタエリートのステンレスモデルも販売していた。
 そんな時代に発売されたP228は、初めからステンレススライド化させるべきではなかったかと思うが、実際に発売されたのはブルー仕上げだった。SIG SAUERにステンレスで製品を作るノウハウがなかったのかと言えば、そんなことはない。既にP230には、P230SLと呼ばれるステンレススライドの製品があった。にもかかわらず、P228をブルー仕上げにしたのは、当時のSIG SAUERがかなりコンサバティブな体質であったからだと推測する。

 

▲エジェクションポート部をロッキングリセスとロッキングラグにするデザインは、SIG SAUERから普及が始まり、今や世界中で活用されている。


 P228のブルー仕上げモデルだが、スライドの仕上げはともかく、フレームの陽極酸化膜(アルマイト)仕上げの耐久性があまり高くなく、ホルスターなどと擦れて、薄くなり、エッジ部にアルミの地肌が見えてくるなど、表面仕上げに関する評判はあまりよくなかったらしい。当時、ブルー仕上げの他、“K-Kote”と名付けられた別の仕上げもあった。ブルーではなく、ブラックポリマーコーティングをスライドに施したもので、耐腐食性能はブルー仕上げよりずっと高くなったが、これも耐久性は低かったという話を聞いている。いまどきのコーティングと比べて技術レベルはまだまだだったのだろう。K-Koteモデルもフレームは陽極酸化膜仕上げだ。
 たぶんアメリカのユーザーから、もっと耐久性のある仕上げにして欲しいという要求がSIG Armsに寄せられたのではないだろうか。その結果、SIG Armsは独自にニッケルメッキ仕上げの製品を作り出した。1987年、それまでの拠点であったバージニア州Tyson’s Cornerから、同州のHerndonに移転した後の話だ。SIG Armsはペンシルベニア州のKlein Plating Worksに依頼し、P226を無電解ニッケルメッキ仕上げとしたのだ。これは正規のカタログモデルではなく、あくまでも市場の要求に従って供給した限定生産モデルだったようだ。1989年に発売されたP228でも同様のことがおこなわれている。
 耐腐食性能の高い銃が好まれるアメリカ市場では、このP226, P228のニッケルメッキ仕上げが好評だったらしい。ドイツのSIG SAUER GmbHが、P226, P228のニッケルメッキ仕上げを製品化したかどうかは、調べた範囲では、はっきりした情報は見つからなかった。しかし、ヨーロッパ市場にも少数のニッケルメッキ仕上げモデルが存在するようだ。もしかしたら、それらはKlein Plating Worksで処理されたモデルを逆輸入したものかもしれない。
 1990年にSIG Armsはバージニア州のExeterに移転したが、無電解ニッケルメッキ仕上げはこのKlein Plating Worksで引き続きおこなわれたらしい。
 1992年、SIG SAUERは当時人気が高まっていた新しい弾薬.40S&Wに対応すべく、プレス加工スライドをやめ、ステンレススチール削り出しのP229を発表、その後はこのスライドが既存のP220, 226, 228にも波及していく。
 今回、タナカが製品化するSIG P228 エヴォリューション2 “ウォーム シルバーコーティング” オールHWは、そんな無電解ニッケルメッキ仕上げが施されたP228をイメージしたものだ。メッキ加工はタナカの得意分野だが、HW材へのメッキはできない。そのため、この製品はウォームシルバー塗装としている。これは過去にも、DE.50やP226などで実績があり、温かみのある銀色がニッケルメッキ仕上げを彷彿させる仕上がりだ。
 スペック的には7月号のP228エヴォリューション2 オールヘヴィーウェイトと同様となっている。
 フレーム、スライド共にヘビーウエイト樹脂(バレルはヘビーウエイトではない)で、リコイルスプリングガイドにはバッファーシステムを搭載した。フレームにもハンマーがぶつかる衝撃を吸収するエラストマー製ハンマーストップが組み込まれていて、これにより高い耐久性を持っている。プレスパーツはコーティング処理され、スプリング類もステンレス素材が使われるなど、発火後のメンテナンスも容易だ。
 安心して発火を楽しめる高い作動性能とメンテナビリティ、そしてリアルな外観を併せ持つタナカのP228。その完成度の高さを、ぜひご体感頂きたいと思う。

 

 

タナカ
SIG P228 エヴォリューション2 “ウォームシルバーコーティング”オールヘヴィーウェイト


全長:178mm
重量:約670g(カートなし)
主要材質: HW樹脂+亜鉛ダイキャスト
装弾数:13発+1
仕様:5mmキャップ火薬使用発火式モデルガン
付属品: 9mm快音Evolution 2発火カートリッジ 5発
価格:¥45,980(税込) 
2025年7月中旬発売予定
お問い合わせ先:タナカ

 

 

TEXT:GPW Editor

 

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