2026/01/18
コクサイ S&W M10 シリーズ【Vintage Model-gun Collection No.37】

Gun Professionals 2015年4月号に掲載

ミリタリー&ポリスという愛称を持つポリス・リボルバーの定番M10。人気が高かったにもかかわらず、なかなかどの会社も手をつけなかった。そんな中、金属モデルで過去にM10を作っていたコクサイが、気合を入れてプラスチックで作ったのがこのM10シリーズであり、M19に続く大ヒットとなった。

右:後期の引き物による5mmキャップ仕様のカートリッジ。357マグナム弾と互換性がある。
諸元
メーカー:コクサイ
名称:S.&W. M10シリーズ(M10 / M64 & M65)
主材質:耐衝撃性ABS樹脂
発火機構:シリンダー内前撃針
撃発機構:シングル/ダブルアクション・ハンマー
カートリッジ:スプリング式可動(インナーロッド方式)
使用火薬:5mmキャップ
全長:187mm(2インチ)、204mm(3インチ)、240mm(4インチ)
重量:410g(2インチ)、420g(3インチ)、430g(4インチ)
口径:.38 SPL
装弾数:6発
発売年:1982年(昭和57年)
発売当時価格:¥8,400-(2インチ)、¥8,800-(3インチ)、¥8,800-(4インチ)
(各カートリッジ6発付き)
オプション:カートリッジ6発¥1,200-(.38 SPLまたは.357)、木製グリップスクェアーマグナタイプ、木製グリップラウンドマグナタイプ、グリップアダプター(ステンレス仕上げ)¥500-
※smG規格(1977年)以前の模擬銃器(金属製モデルガン)は売買禁止。違反すると1年以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます。(2025年現在)
※1971年の第一次モデルガン法規制(改正銃刀法)以降に販売されためっきモデルガンであっても、経年変化等によって金色が大幅に取れたものは銀色と判断されて規制の対象となることがあります。その場合はクリアーイエローを吹きつけるなどの処置が必要です。
※全長や重量のデータはメーカー発表によるものです。また価格は発売当時のものです。
コクサイは1981(昭和56)年、アメリカ取材による新規設計のプラスチック製リボルバー、S&W社のNフレームM28ニュー・ハイウェイ・パトロールマンから、怒涛の新製品ラッシュを仕掛けた。
この攻勢は、会社的にはブランド名を国際産業からコクサイに変えた1979(昭和54)年からということになるのだろうし、設計を手がけている岡田節夫さんによると1982(昭和57)年発売のニューM29からということになるらしい。しかし、買う側の立場からすると、M29の1つ前、M28からレベルアップしたように見えた。もちろんこれは印象の話で、人によってどのモデルからかは変わるかもしれない。それでも、だいたいこのあたりがコクサイの1つの転換期となるのだろう。そして、このころから主力商品をプラスチックモデルへ移していったように見える。
MGCは1975(昭和50)年くらいからいち早くプラスチックモデルをメインにしつつあったが、1977(昭和52)年の第二次モデルガン法規制以後、どこのメーカーも金属製モデルガンを作りにくくなっていたことは確か。それでも一気にプラスチック化していったわけではない。マルシンもPFC方式のワルサーP38が大ヒットした1980(昭和55)年頃からという印象が強い。
話を戻そう。コクサイのM28も実銃を採寸して設計されているが、3~4ヵ月後に発売されたM29は気合の入れ方が違ったらしい。M28はアドバイザー契約を結んでいたイチローさんからの勧めでモデルガン化したという。
左:これはフタが紙、身は発泡スチロールで、エンジと銀(?)の2色刷りに銀の箔押しという豪華版。
中央:M10 F.B.I.スペシャルの箱。濃い緑と薄い緑の2色刷り。
右:後期の共用白箱。モデル名は1色で印刷されている。
右:後期の引き物38 スペシャル カートリッジの6発入りキャラメル箱。
一方、M29は超人気モデルですでにMGCやCMC、マルシンなど各社が作っており、自社にもすでにプラスチック製のものがあったので、少なくともそれらを超えるものでなければならなかった。後発メーカーとしては人気モデルだけに避けて通れず、気合を入れて作るしかなかったのだろう。
M29もアメリカで実銃を取材し、いわゆる実寸で実銃グリップの装着も可能。フルメカ、フル機能で、作動と発火性能もすぐれており、プラスチック製としては当時の決定版に近かった。
そのM29が大ヒットになると、わずか3ヵ月後くらいにM19 / M66を発売する。これもフルサイズ、フルメカ、フル機能で、好評なスプリング式可動カートリッジによる発火に加え、金属の質感を再現するメタルフィニッシュの採用により大ヒットした。
ところが一方で、熾烈な戦いは始まっていた。ハドソンのトンプソンM1にCMCのM1A1、MGCのS&W M39にマルシンのM39、コクサイのブローニングM1910にマルシンのFN M1910、というような対決状態。
コクサイのM19にはCMCが発売翌月に同じプラスチックでM19を当ててきた。より正確な外観形状と、ほぼ実銃そのままのメカニズム、SAAに使われていたカートリッジ内発火方式などが売りだったが、メカは実銃に忠実になるほど精度が必要となり、モデルガンでは作動が渋くなった。さらに、CMCの流通はコクサイほど広くなかったらしく、地方のおもちゃ屋さんの店頭ではあまり見かけなかった。コクサイは全国のおもちゃ屋さんの津々浦々まで浸透しており、MGCの一部の直営店でさえ扱っていた。
決定的だったのはメタルフィニッシュかもしれない。MGCも塗るメタルフィニッシュ液などという怪しげな液体を発売したほどだ。
M19の大ヒットに勢いを得て、コクサイは半年ほどあとにM10シリーズを発売する。ミリタリー&ポリスという愛称を持っているものの、日本では刑事用の2インチ、制服警官用の4インチというポリスリボルバーのイメージが強かった。マグナム人気に押され気味ではありながら、定番であり、人気の高かったモデルだ。
コクサイでは先行したM28 / M29のNフレーム同様、M10もしっかりとしたKフレームのベースを作ってバリエーション展開するという戦略だったらしい。M19の取材時からM10も市場の反響を見ながらいずれ作る予定だった。ところがM19が予想以上の大ヒットになったため、それが早まったらしい。同じKフレームを使うのだから共通パーツが多く、一緒に作ったほうが効率もいい。
だからJフレームのM36チーフスペシャルと、ほぼ同時発売となってしまった。そのせいなのかは不明だが、M36はM10シリーズの大ヒットの陰に埋もれた感はあった。まあ、すでにCMCのプラスチック製があって多くの人が手に入れていたこともあるだろうが。
M10はスナブノーズの2インチ/スクウェアバット、4インチ/スクウェアバット、3インチ・ヘヴィーバレル/ラウンドバットというバリエーションで作られた。仕上げは、当初はメタルフィニッシュのみで、1983(昭和58)年になって半つや消しのクロームめっきにヘアライン加工というステンレス仕上げのM64とM65が発売される。さらに後期になるとM10のメタルフィニッシュは歩留まりが悪いため廃止となり、半光沢の黒色仕上げがスタンダードになっている。
前述のようにM10はM19と共通部分が多い。設計を手がけた岡田さんに伺ったところ、M19の金型の一部をピースで差し替えてM10にしているという。
グリップのバット部分がラウンドとスクウェアで差し替えられるのはもちろん、トップ・ストラップ部分もM19のフルアジャスタブルなマイクロメーター クリックサイト仕様から、M10のフィクストタイプに差し替え可能になっていたという。そのため、M10はトップストラップがちょっと分厚い。ボクはなぜなのかずっと気になっていたのだが、安く作るために差し替え式にしたからだったのだ。なるほど、そうだったのか。
シリンダーはM19と共通とされた。つまり.357マグナム仕様だ。本来はM13(コクサイのものはM10のF.B.I.スペシャル)のみが.357マグナムだが、安く作るためと、組み立ての現場で混乱が起きないように、あえて共通としたらしい。
ただカートリッジだけは別にした。底面に「38 SPECIAL」というヘッド・スタンプが入るからだ。寸法は一緒。そこで簡単に見分けがつくよう、弾丸部分をラウンド・ノーズ風に丸みをつけ(.357は直線的)めっきせずに真ちゅうのままとした。だから互換性はある。古いカタログにはカートリッジのところに「38スペシャルまたは357マグナム」と書かれている。
発売が組合のプラスチックのSPG自主規制後だったことから、サイドプレートはリコイルシールド部分がフレーム側にある新型が採用されている。
出荷は1982年の12月に入ってからだったそうだが、M28ハイパトと同様、発泡剤の入ったABS樹脂を使うトラブルが発生し、製品の回収という事態になってしまったという。そのため、一部のショップでは年内に発売されたが、ほとんどショップでは1983年になってからだったそうだ。
また、流通会社によってパッケージのデザインが変えられたり、グリップに入れられたS&W社のメダリオンのバックに手作業で黒色が入れられたりと、仕様が違ったらしい。つまり営業的戦略というやつ。そういう努力もあって、製品は日本全国隅々まで行き渡ったのだろう。
待望のM10のモデルガン化で、完成度も高く、多くの人が飛びついた。「リボルバーのコクサイ」の評価を高めることに大いに貢献したことは間違いない。2015年現在も一部仕様を変え、よりリアルになって販売が続けられている。
●Vintage Model-gunとは
本コーナーにおけるヴィンテージ・モデルガンは、原則的に発売されてから20年以上経過した物を対象としています。つまり2015年の現時点で1995年以前に発売されたモデルガンということになります。
Text & Photos by くろがね ゆう
協力:コクサイ 岡田節雄
撮影協力:柴田 孝
Gun Professionals 2015年4月号に掲載
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