2026/01/24
現代アメリカ海兵隊の戦い方 歩兵装備ピックアップ【M320A1/M136/M224A1】
大変革を進めるアメリカ海兵隊に注目
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現在、アメリカ海兵隊は世界的な安全保障環境の変化を受け、戦車部隊を全廃したり、砲兵部隊(通常の火砲を装備)を大幅削減する一方で、歩兵部隊に加え対艦ミサイル部隊、防空部隊、兵站部隊などを擁するMLR(海兵沿岸連隊)を新編したり、ロケット砲兵部隊や無人機部隊を増強するなど大変革を進めつつある。それは、我が国の安全保障とも密接に関係していると言っていいだろう。
そこで、アームズマガジンWEBでは改めてアメリカ海兵隊に注目。少し前の記事にはなるが、フォトジャーナリスト・笹川英夫による沖縄の31st MEU(第31海兵遠征隊)への取材記事(「月刊アームズマガジン」2023年8月号および9月号掲載)を抜粋、再構成してご紹介していく。取材ではアメリカ海兵隊の主要な職種である歩兵を中心に、各種訓練や装備などを収録。ここでは前回の市街地戦闘訓練において、4th Marines(4th Marine Regiment:第4海兵連隊)の歩兵小隊が装備していたM320A1グレネードランチャー、M136無反動砲、M224A1迫撃砲をピックアップする。
第1回 M27 IAR編はこちら
第2回 M4A1/M16A4編はこちら
第3回 Mk13 MOD7/M240B/M18/M9編はこちら
第4回 第31海兵遠征隊 上陸訓練【前編】はこちら
第5回 第31海兵遠征隊 上陸訓練【後編】はこちら
第6回 市街地戦闘訓練に臨む第4海兵連隊に密着 はこちら
M320A1グレネードランチャー
SPEC
使用弾:40mm×46グレネード
全長:350mm
銃身長:280mm
重量:1.5kg
作動方式:ダブルアクション
装弾数:1発
M320A1はヘッケラー&コックのグレネードランチャー・GLMをアメリカ軍が採用したもので、海兵隊では2019年に導入された。「アメリカ軍の」「320と名付けられた銃」と聞くと、制式拳銃M17、M18のベースであるSIG SAUERのP320が連想されるかもしれないが、当然まったくの別物で、採用もM17、M18が2017年であるのに対しM320は2009年(陸軍)とはるかに早い。
M320はM203の後継として採用された機種で、その最大の特徴はダブルアクション(トリガーを引くだけでハンマーのコックと発射を連動して行なえる)の発射機構を搭載していることだろう。これにより、万が一不発だった場合もトリガーを引くだけで再度発射が可能となる(M203はシングルアクションのため、不発の際はバレルを前方にスライドして再度コッキングする必要があった)。また、銃身を左側面へスイングアウトする装填機構を採用したことにより、異なる長さの弾薬にも対応可能であることも大きな進化といえる(M203の装填機構では長い弾薬は装填できなかった)。
小銃の銃身下部に取り付けるアドオンランチャーとしての運用が主であったM203とは対照的に、海兵隊においてはスタンドアローン(単体)運用がよく見られる(アドオンランチャーとしての運用例も少数だが確認されている)。M203をスタンドアローン運用するには別途オプションパーツが必要なのに対し、M320はグリップや照準器、ストックなど射撃に必要なパーツは一通り備えている。高い汎用性を実現したM320はグレネーダー(擲弾手)を重視する海兵隊においても、重宝されている装備のようだ。
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M136無反動砲
SPEC
使用弾:84mmHEAT(成形炸薬弾)
全長:1,016mm
重量:6.7kg
装弾数:1発
M136はAT-4無反動砲のアメリカ軍の呼称である。AT-4はスウェーデンのサーブABで開発され、個人携行式のカール・グスタフ無反動砲をベースに使い捨て型に改めたものだ。現在は子会社であるサーブ・ボフォース・ダイナミクスが製造している。
主に装甲目標対処を目的とする成形炸薬弾頭装備の84mm砲弾を発射可能で、名称もその口径(エイティ・フォー)に由来。比較的単純な構造のため少ない訓練で射手を育成できるのもメリットだ。AT-4はNATO加盟国各国で採用され、M72 LAWの後継を求めた米軍はM136として採用した。
AT-4に限らず無反動砲では砲弾の運動量と同等程度のガスを噴射することで反動を相殺する。その際、バックブラスト(後方に噴射されるガス)は非常に高温かつ高圧で周囲の味方だけでなく射手自身にとっても危険なため、射手はバックブラストの噴射範囲を把握し、安全を確認してから射撃する必要がある。なお、改良型のAT-4 CSでは発射時にガスではなく大量の塩水を噴射する方式に改められてバックブラストの問題を低減させ、狭い建物内や塹壕内からも安全に射撃できるようになった。また、HEATとHE(榴弾)を組み合わせ市街地戦闘に適した弾頭を備えるタイプなども開発されている。
M224A1迫撃砲
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SPEC
使用弾:60mm迫撃砲弾
砲身長:1,000mm
重量:17kg(二脚使用時)
M224迫撃砲は米軍がM2迫撃砲やM19迫撃砲の後継として採用。従来の60mm迫撃砲弾のほか、1㎞以上射程が延長された新型砲弾も使用可能だ(通常の榴弾を用いた場合、射程は約70~3,490m)。射撃はセレクターの切換えにより装填後すぐに発射、あるいはトリガーを引いての発射を選択できる。さらに二脚を外して1人で射撃することも可能で、堅実ながら汎用性を高める設計がなされている。
改良型のM224A1では、構造の簡略化や軽量な素材への材質変更が行なわれ、約4kgの軽量化に成功。海兵隊では歩兵小隊の迫撃砲チームを中心に運用されている。
電子書籍版も発売中!!
「イラストでまなぶ!用兵思想入門 現代アメリカ海兵隊の戦い方編」
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最後にちょっと宣伝になるが、「イラストでまなぶ! 用兵思想入門」シリーズ最新刊となる『イラストでまなぶ!用兵思想入門 現代アメリカ海兵隊の戦い方編』が発売中だ。
「用兵思想」とは、戦争のやり方や軍隊の使い方に関するさまざまな概念の総称である。これについて知っておくことで「その軍隊がどのような任務を想定し、いかに組織を作り戦うか」といったことを理解できるようになる。
本書では現在進行中のアメリカ海兵隊の大規模な変革と、それを必要としている海兵隊やアメリカ海軍、さらにはアメリカ軍全体のあたらしい用兵思想、それを実行するために編成される海兵隊のあらたな部隊とその装備、指揮統制の方法などを、イラストとともにくわしく解説している。
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日本周辺の有事におけるアメリカ軍の戦い方が見えてくる
本書では「イラストでまなぶ! 用兵思想入門」シリーズ(ホビージャパン刊)を手掛ける田村尚也が解説を、しづみつるぎがイラストを担当。現代のアメリカ海兵隊が大変革を進める理由や、その用兵思想がわかりやすくまとめられている。
日本の安全保障とも密接に関わっているアメリカ海兵隊が抑止力としていかに機能し、有事にはどのように戦うのか。ご興味をお持ちになった方に、お薦めしたい1冊だ。
Text & Photos:笹川英夫/アームズマガジンウェブ編集部
取材協力:U.S.MARINE CORPS 31st MEU
この記事は月刊アームズマガジン2023年9月号に掲載されたものから抜粋、再構成されたものです。
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