ミリタリー

2026/01/18

現代アメリカ海兵隊の戦い方 市街地戦闘訓練に臨む第4海兵連隊に密着

大変革を進めるアメリカ海兵隊に注目

 

 

 現在、アメリカ海兵隊は世界的な安全保障環境の変化を受け、戦車部隊を全廃したり、砲兵部隊(通常の火砲を装備)を大幅削減する一方で、歩兵部隊に加え対艦ミサイル部隊、防空部隊、兵站部隊などを擁するMLR(海兵沿岸連隊)を新編したり、ロケット砲兵部隊や無人機部隊を増強するなど大変革を進めつつある。それは、我が国の安全保障とも密接に関係していると言っていいだろう。
 そこで、アームズマガジンWEBでは改めてアメリカ海兵隊に注目。少し前の記事にはなるが、フォトジャーナリスト・笹川英夫による沖縄の31st MEU(第31海兵遠征隊)への取材記事(「月刊アームズマガジン」2023年8月号および9月号掲載)を抜粋、再構成してご紹介していく。取材ではアメリカ海兵隊の主要な職種である歩兵を中心に、各種訓練や装備などを収録。ここでは前回の31st MEUのBLT 2/1(第1海兵連隊第2大隊・大隊上陸チーム)による上陸訓練に続いて実施された、市街地戦闘訓練をレポートしていく。

 

 

第1回 M27 IAR編はこちら

 

第2回 M4A1/M16A4編はこちら

 

第3回 Mk13 MOD7/M240B/M18/M9編はこちら

 

第4回 第31海兵遠征隊 上陸訓練【前編】はこちら

 

第5回 第31海兵遠征隊 上陸訓練【後編】はこちら

 

 

市街地戦闘を演練するための街

 

コンバットタウンの外観。オフィスビル、住居、教会などを模した様々な建物が配され、リアルな街が再現されている

 

 ここでご紹介するのは、2023年5月に沖縄県金武(きん)町にある米海兵隊の基地、キャンプ・ハンセンで実施された市街地戦闘訓練の模様である。

 前回までの上陸訓練の記事でも解説しているように、取材時には演習「MEUEX(MEU Exercise)」が行なわれていた。これは、ローテーション配備された部隊が31st MEUの一員としてしっかり機能するように、様々な状況を想定した各種訓練を通じ即応性を維持することを目的としている。
 取材時のMEUEXのシナリオは「BLT(大隊上陸チーム)2/1がブルービーチに上陸した後、ビーチ近くの街を制圧する」というもの。その街として想定されていたのが、キャンプ・ハンセンの敷地内にある市街地戦闘訓練施設、通称「コンバットタウン」だ。

 

 

コンバットタウンで待ち構える対抗部隊に密着

 

建物の2階の窓から、M27 IARを構えて射界を確認する海兵隊員。レシーバー上にはTrijicon VCOGを搭載している。戦闘時には窓から離れて射撃することになるだろうが、建物を制圧していく攻撃側にとって、こうしたスナイパーの存在は脅威となるはずだ

 

 このコンバットタウンの制圧を図るBLT2/1の対抗部隊(敵役)となったのが、4th Marines(4th Marine Regiment:第4海兵連隊)隷下の小隊だ。 取材では、ここで迎撃準備を進めていた彼らの姿を捉えることができた。

 アメリカ軍において市街地作戦はMOUT(Military Operations on Urbanized Terrain)と呼ばれ、アメリカ海兵隊は近年の対テロ戦争において数々の市街地戦闘に参加してきたことでも知られている。遮蔽物の多い市街地においては、敵がどこに潜んでいるのか分かりにくく近接戦闘になりがちなので、ひとつの建物を制圧するだけでも大きな犠牲を伴う場合がある。自ら血を流してMOUTの経験を積んできた彼らだからこそ、この訓練もひときわ真剣味を感じさせるものとなっていた。

 建物が林立するこの広大な施設には、それを裏付けるかのように遮蔽物が複雑に配置され、随所で多様な近接戦闘が生起するような工夫がなされていた。

 

射界を確保し、相互に援護できるポジションを決め隊員を適所に配置。迎撃の準備は着々と進む

 

室内へのドアエントリーに備えていた海兵隊員

 

 

ローテーション配備と即応性の維持

 

 

 第4海兵連隊は3rd MEF、3rd MARDIV(第3海兵師団)の隷下部隊として、連隊本部は沖縄のキャンプ・シュワブに所在。3個の歩兵大隊が配され、こちらも本国からローテーション配備されている。MAGTFにおいて海兵連隊はMEB(海兵遠征旅団)を編成する際の基幹となる存在で、MEF(海兵遠征軍)規模となると、上位の師団ごと組み込まれる。MEUではこれが大隊基幹となるので、例えば4th Marinesに配属されていた歩兵大隊が31st MEUにBLTとして組み込まれることもありえる。
 31st MEUにせよ4th Marinesにせよ、アメリカ本国からのローテーション配備はそれなりのコストを必要とするはずだが、それ以上に米海兵隊の特性である「即応性」を一定のレベルで保てる、というメリットはあるのだろう。 

 

対抗部隊は屋外にも兵を展開。写真の海兵隊員は道路の交差点を警戒している

 

植生や地形を活かして待ち伏せする。なお、対抗部隊の隊員は、ほとんどがFirstSpear製のプレートキャリア、Gen3タイプを着用していた

 

防御側の対抗部隊は、攻撃側のBLT 2/1よりも早い時期から沖縄に配備されていた分コンバットタウンにも慣れており、その点で優位に立っていた

 

対抗部隊を指揮していた少尉。「月刊アームズマガジン」2023年8月号の表紙を飾っていただいた

 

 

 

電子書籍版も発売中!!
「イラストでまなぶ!用兵思想入門 現代アメリカ海兵隊の戦い方編」

 

 

 最後にちょっと宣伝になるが、「イラストでまなぶ! 用兵思想入門」シリーズ最新刊となる『イラストでまなぶ!用兵思想入門 現代アメリカ海兵隊の戦い方編』が発売中だ。

 「用兵思想」とは、戦争のやり方や軍隊の使い方に関するさまざまな概念の総称である。これについて知っておくことで「その軍隊がどのような任務を想定し、いかに組織を作り戦うか」といったことを理解できるようになる。

 本書では現在進行中のアメリカ海兵隊の大規模な変革と、それを必要としている海兵隊やアメリカ海軍、さらにはアメリカ軍全体のあたらしい用兵思想、それを実行するために編成される海兵隊のあらたな部隊とその装備、指揮統制の方法などを、イラストとともにくわしく解説している。

 

 

 

 

 

日本周辺の有事におけるアメリカ軍の戦い方が見えてくる

 

 本書では「イラストでまなぶ! 用兵思想入門」シリーズ(ホビージャパン刊)を手掛ける田村尚也が解説を、しづみつるぎがイラストを担当。現代のアメリカ海兵隊が大変革を進める理由や、その用兵思想がわかりやすくまとめられている。

 日本の安全保障とも密接に関わっているアメリカ海兵隊が抑止力としていかに機能し、有事にはどのように戦うのか。ご興味をお持ちになった方に、お薦めしたい1冊だ。

 

 

 

Text & Photos:笹川英夫/アームズマガジンウェブ編集部

取材協力:U.S.MARINE CORPS 31st MEU

 

 

 

 

この記事は月刊アームズマガジン2023年9月号に掲載されたものから抜粋、再構成されたものです。

 

※当サイトで掲示している情報、文章、及び画像等の著作権は、当社及び権利を持つ情報提供者に帰属します。無断転載・複製などは著作権法違反(複製権、公衆送信権の侵害)に当たり、法令により罰せられることがございますので、ご遠慮いただきますようお願い申し上げます。

×
×