2023/11/05
【実銃】HKの誇るポリマーオート「VP9」実射から感じるHKらしさとは?【後編】
Heckler & Koch
VP9
HKニュージェネレーションポリマー
ストライカーファイア+ポリマーフレームピストルを最初に量産化したのはHKだ。しかし、それを成功させたのは後発のグロックであり、HKは完全にその後塵を拝した。そして約30年の時を経て、グロックと同じストライカーファイア+ポリマーフレームの分野にHKが真っ向から戦いを挑んだ製品がVP9であり、SFP9だ。
VP9実射編
では撃とう。
弾は、フィオッキのFMJ弾(115gr)を用意。先ずはマガジンの弾込めで少々もたつく。一発目がどうも入れにくい。ダブルカラアムの斜めフォロアーの傾斜が急なのと、金属マガジンの縁がツルツル滑って弾が逃げまくるのだ。この点、USPやらグロックの樹脂マガジンは全然込めやすい。樹脂の厚みと摩擦が助けになる。
HKのマガジンはいつも高品質で知られるが、もうひと捻り欲しいところ。
一方、新発明のチャージングサポートは物凄く使い勝手が良い。自分は既にスライドのセレーションなどすっ飛ばし、ココだけつまんで引っ張るクセが付いてしまった。それくらいに効果的だ。もしもコレを取り除いたら、一気に引きにくく感じるに違いない。
重量バランスは文句なし。グリップの感触も良好。ただ、心のどこかで「もしもフロントストラップのフィンガーチャンネルがなかったらどうだったろう」と考える部分はチョッピリあったりするが。
準備完了。自分にとっては久しぶりのHKだ。いつになく真剣に撃ちたい気持ちが湧いてくる。前後サイトの塩梅なども確認しつつ、発射!
う~ん、はいはい、手応えは期待通りあっけない。淡白でスムースで普通レベルのリコイル。ストライカー式でボアラインが低い分マズルの跳ね上がりが少なく、リカバリーショットも早く安定して撃てる道理だ。
テイル部は深く大胆に切り込んであり、これならかつてのグロックで頻発したスライドバイトの心配もまずなかろう。
前章で述べた通り、トリガーの感触は極めてアベレージでそつのない及第点の引き心地だ。HKなのだからとついつい期待してしまう分、“普通であること”を強く感じるかもしれない。が、基本、決して悪いものではないから念のため。
調子が良いので、調子に乗ってどんどん撃ちまくる。撃てども撃てども立て板に水のごとく、一片の淀みもなくツルツル動く。さすがHK、面目躍如の一言。ジャムなどは起こりようもないとは言い過ぎかもだが、それくらいの安心感が漂う。
一個だけ気になったのは、マグキャッチレバーか。コレはトリガーフィンガーで操作するわけだが、慣れないとトリガーに指が触れてしまいそうでやや怖い。それと、わりとバネ圧が強いので、トリガーフィンガーへの負担も少なからず意識してしまう。
個人的には、う~ん、やっぱりボタン式が好きかな。計50発の実射は終始快調。特に全然驚きはない。何しろ、HKですから。
派手なパフォーマンスよりも地道な詰めの作業を積み重ね、HKポリマーの一つの集大成として出てきたこのVP9。グロックキラーに成り得るかなんて野暮な話はこの際よそう。グロックはグロック、現時点では巨大過ぎて動かしようがないのは前述の通りだ。
VP9は集大成ではあるが、同時に分岐点でもあり、ココからまた始めて行かなければならない。
TEXT&PHOTO:Gun Professionals サウスカロライナ支局
この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2021年9月号に掲載されたものです
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