実銃

2023/09/17

【実銃】『ジョン・ウィック』シリーズの名銃「STI2011 Combat Master」を細部まで解説!【Chapter 3】

 

JOHNWICK

PARABELLUM

銃器

 

 

 『ジョン・ウィック』シリーズは独特な世界観を持つ娯楽作品だ。派手なガンアクションが全編を貫いており、登場する銃器はどれも入念な検討の上に選ばれ、強い個性を発散、出演者と共に物語を盛り立てる存在となっている。

 シリーズ3作目『ジョン・ウィック:パラベラム』で使用された銃について、その主なものをここに集めてみた。それぞれの銃の来歴を知っておけば、映画をもっと楽しめるだろう。

 

前回はこちら

 

※この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2019年11月号に掲載されたものです。

 

 


 

QSTI2011コンバットマスターについて教えて下さい。


A:チャド監督から「グロック34コンバットマスターのネクストレベルのハンドガンは何か?」と意見を聞かれ、私は迷いなく2011を勧めました。他に選択肢はないと言えます。

 

現在STIの主要製品群であるDVCラインよりも要求スペックが高く、フルレングスダストカバーのリミテッドモデルであるDVC-L(2,999ドル)よりも高価だ


 共同開発の話をSTIに持ちかけたところ大変に興味を持ってくれました。ここ5年でSTIは人材が入れ替わり社内はオーバーホールされています。特に昨年あたりから品質管理が極めて良くなり、彼らに任せて間違いないと確信しました。

 

 グロックのコンバットマスタースライドの外観デザインをSTIスライドに受け継がせると同時に、私が推薦する他社製パーツと細部のスペックでまとめ上げたものです。STIの技術者にアイデアを出しては改良を重ね、デザインを確定するのに数週間を要しました。

 

試作品であるため、スライドの加工が量産品よりも若干荒削りだ。トリガープルは900g~1.13kgまで軽くチューンされている。ダブルアンダーカットのトリガーガードによりハイグリップを容易にしている

 

 トリガー関連パーツはエクストリームエンジニアリング社製を指定しました。彼らのハンマーやシアはベストだからです。フロントサイト、マグウェル、ビーバーテイルの形状も事細かに私が理想と考えるものに指示し改良させました。それに現在市場でベストなマッチグレードバレルをガンスミスフィットさせ、購入した状態でハイレベルのシューターが不満なく使える究極の2011を目指したのです。

 

アンビセフティはウィルソンコンバット製でSTIのアジャスタブルリアサイトを備える。市販モデルは映画版とほぼ同一品だが、エキストラクター後部が自金のシルバーである点など再現されていない部分も若干ある

 

 従来の量産型2011では、買ってからガンスミスにチューンを依頼し、大体1,500ドル位掛けてようやく満足なモデルに仕上がりますが、STI2011コンバットマスターは妥協のないハイエンドな量産モデルとして完成させたかったのです。

 

ブランク用アダプターを挿入するためにバレル内部にネジが切られている

 

 開発が進む頃、既に射撃訓練は始まっておりましたが、2011系の採用は決まっていたので、新型が完成するまではインフィニティや従来型STIでキアヌにはトレーニングを進めてもらいました。やはり当初はセイフティレバーやビーバーテイルのないシンプルなグロックから移行するのにキアヌも慣れが必要でしたが、扱いに慣れだした頃から2011のポテンシャル引き出してグロック以上の正確なシューティングを見せてくれました。

 

激しいアクションシーンで、フロントサイトのファイバーオプティックが潰れてしまっている

 

 サイトトラッカーとブルバレルの2種類を試してもらい、訓練ではサイトトラッカーの方をキアヌは好んで撃っていました。しかし映画ではブルバレルが採用されてます。

 

スライドを引くと長いマッチグレードブルバレルが大きく露出する。トライトップにカットしたスライドに、G34にデザインを受け継ぐ派手なコッキングセレーションとライトニングポートが加工されたコンバットマスターカットのスライドは、サイドポリッシュした上でブラックDLC仕上げを施してある。スライドリリースには誤作動を予防するために凹みを加えている

 

ダストカバーには長いピカティニーレイルが加工されている

 

9mm×19だが規格外の9mmメジャー弾にも十分に耐える耐久性を誇る。バレルの仕上げはブロンズカッパーのTiNコート

 

空砲作動のため、バレルのロッキングラグの角は丸められてロック機能は取り除かれてストレートブローバックになっている

 

サムセイフティレバーの操作性は良好だ。大型マガジンリリースボタンも(ドーソンプレシジョン製) エクステンデッド仕様

 

セイフティレバーはアンビ、ビーバーテイルグリップセイフティの形状など細かい部分までタランが監修している

 

TTIの訓練用のモデルではシリコンカーバイドのグリップが備わっている

 

DVC系と同仕様のスティップル加工が施されたグリップ

 

映画ではマグウェルにちょうどフィットする126mm のマガジン(21発)を主に使用しているが、
市販モデルではTTIベースパッド付きの140mm(22連発)マガジンが4本付属する

 

通常のブルバレルとバレルにリブのあるサイトトラッカーの比較。訓練時にキアヌは両者を撃ち比べてサイトトラッカーの方を好んでいたが、映画ではブルバレルが使用された

 

サイトトラッカーモデルのスライドホールドオープン時。スライドには大きなスロットが加工されてリブがそこにきれいに収まる

 

サイトトラッカーはブルバレル、ライトニングカットの発想の延長であり、リブを設けてバレル側をより重くする事でスライドをさらに軽量化し、スライド作動サイクルを軽やかにし、閉鎖時の慣性の勢いも引き下げられる。そしてフロントサイトがバレル側に移動しスライドと共に大きく後退しないのでサイトをトラックしやすくなり、その名が与えられた。
マズルライズの大きな.40S&Wなどではその恩恵を強く感じるところだが、タランの意見では跳ね上がりの少ない9mmモデルなら個人的にはどちらでも良いかな、という事だ。バレルのフィッティングは精密でガタはないがスムーズに作動する

 

4140スチールをCNC加工した上部金属フレームにナイロンコンポジットの樹脂製グリップを組み合わせた2011モジュラーグリップフレーム。金属フレームの強度と軽量さの両方の利点を兼ね備えている

 

各パーツはタランが選択したものでシア、ディスコネクター、ハンマーなど内部パーツはLA郊外のEE(エクストリームエンジニアリング)社のものが用いられている

 

EE社のマッチディスコネクター、ウルトラローマスシア、ライトスピードハンマーを採用。特に軽量シアは熱処理でロックウェル53-56まで強度を上げており、表面を磨き上げ、トリガープルを2ポンド(906g)に設定する事も容易であり、4万発以上の発射でもハンマーフォローの問題が起こらない耐久性を維持しているという

 

続きはこちら

 

TEXT&PHOTO:Gun Professionals LA支局

Special thanks to Taran Butler, Gary Tuers, Chad
Stahelski, and Keanu Reeves.

 

この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2019年11月号に掲載されたものです。


 

『ジョン・ウィック』シリーズ最新作を観る方にオススメ!!

月刊ガンプロフェッショナルズ 2023年10月号

 

 

 キアヌ・リーブス演じる伝説の殺し屋ジョン・ウィックの最終決戦が描かれる第4作目『ジョン・ウィック:コンセクエンス』が、いよいよ9月22日に日本でも公開される。この映画でジョンは様々な銃を使いながら戦いを進めていくが、今月号のガンプロフェッショナルズではメインとなる3機種について、デザインを手がけたタラン・バトラーのインタビューを交えながら詳しくご紹介している。登場銃について知ることができるので、上映前にぜひご一読いただきたい。

 

 


 

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