2025/11/28
【NEW】SIG SG551 & 553 メイド イン スウィッツァランド

市場で人気のライフルが、ほぼM4、もしくはM4に準ずる操作性を持つモデルで埋めつくされている今、それとは少し異なるライフルを撃ってみた。スイスSIG SG550シリーズの551と553だ。Stgw90は、かつて多くの人達が憧れた往年の名機であり、551や553はそのショートバリエーションとして、現在もスイスで生産され続けている。
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SIG 550 系列は、1853年に創業したスイスのSIG (Schweizerische Industrie Gesellschaft)が、1980~90年代にかけて、設計したアサルトライフル群の総称だ。
SIGは1957年にスイス軍用アサルトライフルとしてフルロード弾7.5×55.5mmを使用するStgw57を完成させたが、その後に小口径高速弾である5.56×45mmがアサルトライフルの主流となったことを受けて、1967年にSG530, 1970年代になるとSG540を登場させ、さらに7.62×51mmのSG542を生み出した。
540があって542もあるのだから、モデルナンバーとしてこの中間に位置するSG541は何かと当時噂されたが、これは、次期スイス軍アサルトライフル開発に向けた試作モデルのナンバーであった。SIGはその後長期に亘って研究開発を継続し、1983年に、5.6×45mm弾を使用するSG541の発展改良型を発表、これがスイス軍の採用を勝ち取る。実際に量産が開始されたのは1986年で、正式に採用が決まったのは1990年だ。そのため正式な名称はStgw90となった。この5.6×45mmという名称は、通常の5.56×45mmと寸法上の互換性を維持しつつ、よりパワフルなものとしてスイスが独自に開発した弾薬で、NATOの5.56×45mm(SS109)と寸法上は互換性がある。
Stgw90のスイス軍向けモデル以外の5.56×45mm仕様がSG550シリーズだ。
この銃が開発された時代とその後に、SIGには大きな変化があった。スイスの国内法が改正され、スイス製銃器の国外輸出が困難となり、これに対処すべく、SIGはドイツのSauer & Sohnを買収、輸出向け製品の製造をドイツで行ない、そこから輸出することで法改正に対処したのだ。そこで生まれたブランドがSIG SAUERであり、その製品のひとつであるSIG SAUER P226は、アメリカ軍のサービスピストルに採用される直前までいくなど、高い評価を獲得するようになった。これに対応してアメリカに現地法人SIGARMSが1985年に設立されるなど、SIGのブランドは急速に広まっていく。
その一方で、スイスのSIGに大きな変化はなかった。法的に輸出が困難なったと言いつつ、全面的に禁止ではなく、SG550シリーズはスイスから輸出が継続された。従ってSG550シリーズはこの時点においてはSIG SAUERのブランド名は付かない。

口径 5.56×45mm NATO
作動方式 ロングストロークガスピストン ロテイティングボルト
作動モード:セミオートオンリー
マガジン装弾数: 30発標準
全長:607mm/833mm
銃身長:363.5mm
重量:3,400g

口径 5.56×45mm NATO
作動方式 ロングストロークガスピストン ロテイティングボルト
作動モード:セミオートオンリー
マガジン装弾数: 30発標準
全長:503mm/733mm
銃身長:347mm
重量:3,400g
しかし、2000年にSIGは銃器生産事業の将来性は暗いと判断、ドイツのLüke & Ortmeier Groupに売却、これ以降のスイスSIGはこれまでとは大きく異なる大手梱包機器メーカーとなって現在に至っている。
一方、ドイツのSIG SAUER GmbHとアメリカのSIGARMS(2007年以降はSIG SAUER Inc.)は2000年以降、積極経営に転じ、その事業規模大きく拡大していく。
スイスの拠点もSAN Swiss Arms AGとなって事業を継続したが、その動きは地味なものだった。そしてSAN Swiss Armsは2019年12月に社名をSIG Sauer AG.に変更している。
一方、アメリカのSIG SAUERはどんどんその守備範囲を広げ、その製品のひとつであるP320はアメリカ軍の新型サービスピストルM17/M18に採用されるなど、飛ぶ鳥を落とす勢いで事業を拡大していった。そして2020年末にドイツの拠点SIG SAUER GmbHとを閉鎖、SIG SAUERはアメリカ企業SIG Sauer Inc.となる。
アサルトライフルもアメリカのSIG SAUERは、スイスのSG550系とは別に独自の製品、MCX、M400、516、716、556を展開、2022年にはそのひとつであるMCXの発展型がアメリカ陸軍のアサルトライフルM7としての採用を勝ち取って現在に至っている。
そんな華々しさとはうって代わり、スイスのSIGは依然として地味な事業展開を続けた。SIGは2000年にLüke & Ortmeier Groupに売却されるまでの間に、スイス軍用Stgw90を約45万挺製造していた。冷戦が終結した時点におけるスイス軍の総兵力は78万人であったが、その後、その規模は縮小され、1995年には40万人にまで縮小、その流れは時間と共に進んでいった。この流れがSIGに銃器製造事業の売却を決断させたのだろう。すなわちStgw90はすでにこの時点で必要数の上限を超えていたのだ。
往年の名機Stgw90 (SG550)のコンパクトバージョン。セミ/フルセレクティブファイアモデルも存在するが、これは民間市場向けにセミオートオンリーとしている。1980年代からほとんど変わらず、スイスで製造が続いている。
この個体はレシーバートップにB&T製ピカティニーレイルを載せ、Aimpont C-2を装着したものだ。

さらにコンパクトにしたのがSG553だ。現行の553はレシーバーのデザインが少し変わっているが、この個体が製造された2011年は、Stgw90の小型版として、同じデザインを採用していた。
全長がSG551 SP SWATより100mm短縮されているが、さらに短いSB仕様も用意されている。

SAN Swiss Arms AG.となった以降も、同社には大きな動きはない。Stgw90のショートバージョンとしてStgw04、550バリエーションのSG553, 7.62mm対応のSG751 SAPR, 50BMGのSAN 511といったモデルがあるだけだ。SAN511はNemesisの名前でも知られる50BMGのアンチマテリアルライフルだが、現在のSIG Sauer AGのラインナップにはない。
そんな中、SIG Sauer AGは、SG 56X、およびSG563を2024年に発表した。これはSG550シリーズの5.56mmアッパーレシーバーをSIG SAUER MCXのロワレシーバーに載せたような、SIG Sauer AGの新作だ。
本来ならこのSG 56X, 563を紹介したいところだが、残念ながらまだアクセスすることができない。そのため、今回は現物を手にし、撃つことができたモデルをご紹介したい。SG553 / SG552 SWATだ。いずれもStgw90の派生型であり、事実上、SG550シリーズの最終型ということになるはずだ。
M4ばかり
今やアサルトライフル、およびそれをベースにしたセミオートライフルはAR-15, M16から進化したM4デザイン、もしくはAK47, AKM,AK74、AK100シリーズの流れに基づくAKデザインの2つにほぼ集約されている。
21世紀が始まって10年ぐらいまでの間は、HKのG36や、ブルパップライフルの成功作であるAUGとそのクローン、ベレッタのARX160、FNハースタルがポストM4のポジションを狙って開発したSCARなど、いくつかの選択肢があった。他にもIWIのTAVOR系などもあり、それなりにバラエティに富んでいたといえる。さらにいえば、レトロ系ではFALやG3もあった。
しかし、近年ではもうM4系一色となってしまったといえる。選択肢があるといえるのは、ガスシステムとしてAR系オリジナルであるダイレクトインピンジメント方式と、それを止めてガスピストン方式に切り替えたものとの選択肢がある程度だ。各メーカーはそれぞれの独自性を盛り込むべきところところだが、すでにデザインパテントの切れたAR系はアッパー、ロワー共にでき上ったパーツを購入して組み立てている場合がほとんどのため、大きく変更を加えることはできないし、ユーザーもまたそれを望んではいないようだ。その結果、右を見ても左を見ても同じようなものばかりが並ぶ状況に陥った。
2010年代以降、もちろん違うものも新規に開発されてはいる。クロアチアのHS ProduktのブルパップライフルVHS-2とそれを元にしたスプリングフィールドアーモリーのHELLION(ヘリオン)や、CZUBのBREN 3やBREN 2などだ。
しかし、注目度は低い。そしてそれらの独自デザインと特徴を持つライフルを製造するメーカーもこぞってM4デザインか、それに準ずる操作系を持つライフルを発売し、そちらの方が注目されているのが現状だ。
SG550
SIG SAUERのMCXは、M4ではないが、操作系はM4に準ずる。ベレッタの新しいアサルトライフルN.A.R.P.(New Assault Rifle Platform)も中身は異なるものの外観上はM4に近い。SteyrはAUGを展開しつつ、ドイツのラインメタルと組んで、M4に準じたSTM556やRS556を試作、ドイツ軍の新型アサルトライフルトライアルに臨んだ。これらはいずれもガスピストン方式だ。
開発は2000年代にさかのぼるが、HKはポストM4としてHK416を登場させた。これがM4のガスピストン仕様で、その発展型HK416Fは2016年にフランス軍に採用され、2021年にはドイツもHK416A8をG95A1として採用している。HKはこのドイツ軍トライアルに向けて新型HK433を開発したが、こちらはM4クローンではない。しかし、操作系はM4にやや近い。
右を見ても、左を見ても、M4、M16, AR-15似のライフルばかりが目立つ現在、SIG 550シリーズは全く違うデザインをまとっている。これが開発された1980年代は、他社製を真似ることを良しとする文化は無かった。従ってSIGのエンジニア達は自社のオリジナリティを重視し、独自のデザインを付き進めている。
当時のSIGはStgw57を5.56mm化させる過程において、ベレッタと共同開発をおこなった。ガスオペレーション、ロテイティングボルト化を主張するベレッタに対し、あくまでもStgw57と同じローラーディレイドブローバックを主張するSIGとの間で技術的な対立が生まれ、最終的に共同開発計画は消滅、SIGは独自でSG530を開発した。しかし、これは失敗に終わる。急速に高圧化する5.56×45mm弾は、ローラーディレイドブローバックには不向きだったからだ。
これを教訓に再度開発をおこなったのが、SG541で今度はロングストロークガスピストンを採用、ロッキングメカニズムもロテイティングボルトとした。このオペレーティングシステムについて、SIGが参考にしたのがAKだ。すでに20年以上の実績を持つAKのシステムをほぼそのまま取り入れている。
しかし、SG541はAKのコピーではない。操作性や各部のデザイン、加工精度は全く異なり、遥かに高品質に仕上げられている。
スイスはこのSG541の改良発展型を採用し、正式にStgw90として以来、すでに35年が経過する現在も使用継続中だ。Stgw90のスイス軍向け以外の製品がSG550シリーズだ。
今回、実機を検証できたのは SIG SG 551 SP SWATと SIG SG 553 LB の 2 機種だ。551SP は363.5mmのショートバレルを装備しており、バリエーションには551 LBという454mmバレル仕様がある。ちなみにフルサイズに相当するSG550のバレル長は528mmだ。
この個体はハンドガード下部にピカティニーレイルを後付けしており、アクセサリー装着も可能となっている。オプションとして4-Schienen Handschutzと呼ばれるクワッドレイルハンドガードも用意されており、たくさんのアクセサリーを装着することも可能だ。
一方、553 はハンドガードが短いコンパクト仕様で、レイル無しだ。サンプルはSG553-2 LBで、バレル長は347mmとなっている。こちらにもSB仕様があり、バレル長は271.5mmだ。
553の短いハンドガードは取り回しが容易で、素直なハンドリングが可能となり、閉所で使用する場合の高い実用性が感じられる。


