エアガン

2024/05/18

知っているようで知らないバイポッドの常識!「4大バイポッド実物徹底比較」

 

 スナイパーライフルに欠かせないアイテムのひとつであるバイポッド(二脚)。一見するとどれも同じように見えるが各部に工夫が凝らされており、操作性や機能性などメーカーごとに異なっている。そこでバイポッドの違いを探るべく実銃用バイポッドとして有名な4メーカーのバイポッドをピックアップ。各部の特徴を徹底比較してみた。意外と知っているようで知らないバイポッドの常識が明らかになる。

 

 

 バイポッドはスナイパーライフルだけではなく、自衛隊の89式5.56mm小銃やイスラエルのガリルのようにアサルトライフルにも使われている。しかし、アサルトライフルに装備されているバイポッドはあくまでも射撃補助器具であり、シビアな性能が求められるものではない。スナイパーライフルの場合、バイポッドによって狙撃の結果が左右される可能性があり、それ故にバイポッドへの要求も必然的に高くなる。
 スナイパーライフルにおけるバイポッドは単純に銃を支えるだけではなく、シチュエーションに応じて柔軟に調整できる、いわば「懐の広さ」みたいなものが求められる。バイポッドがあることで狙撃の阻害になってはならず、狙撃に対してプラスの効果をもたらしてくれることが期待される。そのことを踏まえたうえで、バイポッドに求められる要素をまとめてみた。

 

●脚がスムーズに展開・収納できること
●不意に脚が折れないこと
●脚が段階的に伸縮できること
●左右の角度が調整できる(スイングできる)こと
●銃への装着がしっかり行なえること
●銃への装着方法が選択できること
●重量・サイズが適切であること

 

 これらの要素は各メーカーのコンセプトや個人的な好みによって違いがあり、どの製品が優れていて、どの商品が劣っているとは一概には言えない。ただ、今回集めた4大メーカーのバイポッドにはこれらの要素がすべて盛り込まれており、操作性や機能の範囲が異なるだけである。これらの要素をもとに自分の銃や狙撃にスタイルにあったバイポッドを選んでいただきたい。

 

 

HARRIS BIPODS S-BRM

 

スナイパーライフル向けバイポッドとして最もオーソドックスなハリスバイポッド。機能的にはシンプルながら堅牢な作りからアメリカ軍をはじめとした軍・法執行機関で採用されている。写真は脚が短めでスイング機能が備わったS-BRM。参考品

 

Versa-Pod Model1 Bipod Rest

 

ハリスバイポッドと並ぶバイポッドの傑作であるヴェルサポッド。ハリスバイポッドが「剛」に対してヴェルサポッドは「柔」といっても過言ではないほど可動域が広く、あえて遊びを多く設けた独自のコンセプトで作られている。参考品

 

B&Tインダストリーズ BT10-LW17 V8 ATLASバイポッド

 

近年、軍・法執行機関のスナイパーから注目されているのがB&Tインダストリーズのアトラスバイポッドである。スリムなデザインに加えて脚の機能にこだわっており、脚を展開した時の安定感は抜群。写真は同社の基本モデルのV8スルーレバー式クランプ付き。48,730円(G.A.W.)

 

MAGPUL MAGPULバイポッド

 

PMAGやCTRストックで知られるMAGPULのバイポッド。MAGPULらしい軽量なポリマー樹脂とアルミパーツで構成されている。ロックを解除するといった操作をせずに脚を展開できる。脚の伸縮方法にも工夫が凝らされており、見た目だけではなく機能性にもこだわっている。参考品

 

 

石突

 

 脚の先端である「石突(いしづき)」は地面や床と接触する部分であり、安定した構えにとって重要な部分である。脚は正面から見てハの字型に展開されるので、接地面を増やすために円錐形を採用しているものが多い。ヴェルサポッドはスキータイプと呼ばれるスキー板のような前方に向かって先端が跳ね上がった形状をしている。
 

ハリスバイポッド(左上)とアトラスバイポッド(左下)はラバー製、ヴェルサポッド(右上)は金属製、MAGPUL(右下)はポリマー樹脂製。ハリスバイポッドとMAGPULにはサークル状の滑り止めがあるもののアトラスバイポッドはプレーンな形状をしている。ヴェルサポッドのスキータイプは接地しやすい

 

 

脚の展開・収納方法

 

 各社の違いがはっきり出ているのが足の展開・収納方法だ。ロックボタンを押してロックを解除する方式と、ロックボタンがなくそのまま展開・収納できる方式の2通りに分けられる。アトラスは展開・収納ともにロックボタンをを解除する必要がある一方、MAGPULはロックボタンを押さずに展開でき、収納する時のみロックを解除する。ハリスはスプリングのテンションでそれぞれの脚を保持しており、直感的に脚が展開・収納できる。脚を1本ずつ展開・収納する方式が多く、ヴェルサポッドのみ両側の脚を掴んで展開・収納する。ロックボタンがないほうが素早く展開・収納できるが、脚が物理的にロックされないので不意に倒れてしまう可能性がある。脚の展開・収納方法は良し悪しが決めにくい。
 

ハリスは4つの中でいちばん素早く展開・収納できるが、展開・収納時にスプリングのテンションがかかるため銃にしっかり固定しないと脚の展開・収納がしにくい。もっともストレスなく展開・収納できるのはヴェルサポッド。アトラスはロックを解除する必要がある。MAGPULは展開はロックを解除する必要はないが、収納する時にロックを解除しなければならない

 

脚を展開したところ。各社とも脚の開いた角度に大きな違いはない。ヴェルサポッドのみ片脚だけ展開・収納したりはできない。ただ実際には片脚だけ展開・収納することはないので、それほど大きな問題ではない

 

ヴェルサポッドとアトラスは脚を前後(180度)に展開・収納できる。さらにアトラスは45度(135度)の角度で脚を固定できる

 

アトラスの両脚を45度の角度で固定したところ。銃の高さをギリギリの低さまで下げることができる。展開・収納時に左右のロックを解除する必要はあるものの他社にはないアイデアだ

 

MAGPULは収納時のみロックを解除する必要がある。脚が即座に展開できる利点はあるものの使い慣れていないと展開時にもロックを押してしまいそうになる。その逆もしかりである

 

 

脚の伸縮方法

 

 脚の伸縮方法にも各社のこだわりが感じられる。4社の中で最も素早く伸ばせるのがハリス、次にヴェルサポッドとなる。両社はカメラ用三脚に構造が似ており、そこからヒントを得たと思われる。アトラスは脚の上部にあるノブを引きながら脚を伸ばすのだが、ハリスに慣れていると石突部分が伸びるものと勘違いしがち。MAGPULは脚の後方にあるロックを押しながら伸縮させる。
 

4つともロックを解除して脚を伸縮させるものの、ロックを「押す」か「引く」かによって伸縮のスピードが変わってくる。ハリスのみスプリングが内蔵されているのでロックを解除すると脚が飛び出てくる。調整範囲はハリスは6段階、ヴェルサポッドは6段階、アトラスは5段階、MAGPULは7段階となっている

 

脚を伸ばしきったところ。ハリスは今回用意したのが短いタイプなので、他社と比べて短くなっている。ハリスを除いて3本ではアトラスがやや短い。MAGPULがもっとも脚の伸び率が高い

 

 

スイング機能

 

 スイング機能とは銃を左右に傾けられる機能のことだ。傾斜している場所などに銃を置かなくてならない場合に役に立つ機能だ。ハリスはもともとはリジット(固定)式だが、今回用意したモデルはスイング機能が付いている。ヴェルサポッドはアダプターに装着することでスイング機能が活用できる。アトラスは左右に加えて前後とロール(回転)方向に15度ずつ傾けられる。MAGPULはスイング機能がついており、本体下部のノブを回すことでテンション調整できる。

 

ヴェルサポッド以外はテンションが調整できるノブが設けられている。ヴェルサポッドはテンションがないので常にフリーの状態。ハリスは傾けられるもののスプリングのテンションにより水平状態に保とうとする。MAGPULはノブを緩めると完全にフリーな状態になる。アトラスは角度は控え目だが各方向に傾けられる

 

 

銃への装着方法

 

 ボルトアクションライフルへの装着を前提としていたハリスやヴェルサポッドはスリングスイベルスタッドに装着する方法を採用していたが、時代の変化とともにピカティニースペックのレールやM-LOKなどのマウンティングシステムに装着できるものが登場している。ピカティニースペックのレールに対応したものは汎用性が高く、スリングスイベルスタッドに装着するタイプをピカティニースペックのレールなどに装着したい場合は別途アダプターが必要になる。

 

ハリスとヴェルサポッドは古典的なスリングスイベルスタッド、アトラスとMAGPULはピカティニースペックのレールに対応している。汎用性の高さならピカティニースペックのレールに対応しているものだろう。MAGPULはM-LOKに直接装着できるモデルもラインアップされている

 

フォアエンドにスリングスイベルスタッドが標準装備されている東京マルイのM40A5に各バイポッドを装着したところ。これらの中でヴェルサポッドとスルーレバー式マウントが付いたアトラスは工具を使わずに着脱できる。ハリスも工具を使わずに装着可能

 

 

重量

 

 重量は銃に装着した時のバランスにかかわることであり、あまりに重い場合はバランスを崩しかねない。それぞれ重量を計測したところ、アダプター付きのヴェルサポッドが最も重くて578g、いちばん軽いのはMAGPULで334gだった。
 

ヴェルサポッドはアダプターなしで装着できないので、どうしても重くなってしまう。ハリスが368g、アトラスが376g、MAGPULが334gとなっている。マウントの種類によって重量は変化するが、バイポッドの重量は350g前後と考えておくのが無難だろう

 

TEXT:毛野ブースカ

 

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