その他

2021/07/27

ルフォーショー20連発ピンファイアリボルバー

 

 

Lefaucheux 20 shot Pinfire Revolver
ルフォーショー20連発ピンファイアリボルバー

 

 銃器が進化してきた歴史を辿ると、その最古のものとして12世紀ごろに中国で作られた火槍(かそう)に辿り着く。もっともこれはロケット花火のようなもので、厳密には銃とは言い難い。火薬は9世紀ごろに中国(唐)で発明されたもので、火槍はこれを応用したものだ。現代の銃に近いものは、13世紀の中東、またはヨーロッパで作られたと言われている。金属の筒に発射火薬と飛翔体を詰め、火薬のある部分の横の穴(点火孔)から火を点ける。この点火を少し機械的にしたものがサーペンタインロックであり、マッチロックだ。このマッチロックが日本に伝わり、火縄銃になる。日本は鎖国政策の影響もあり、火縄銃がそのまま使われ続けたが、海外ではホイールロック、スナップロック、ドッグロック等を経て17世紀初頭にフリントロックと進化した。フリントロック時代は約200年続いたが、その間に結束式などの連発銃が生まれている。
 そして1814年にメタリックパーカッションキャップが発明され、発火方式は急速に進化した。それでも装填方式はまだマズルローダー(先込式)であり、この部分に限っていえば、銃は13世紀からさほど進化したとはいえない。それでもパーカッションキャップはリボルバー型式の連発銃を生み出した。1836年、コルトはパターソンリボルバーと呼ばれるハンマーのコッキングとシリンダーの回転を連動させた製品を発表している。
 そんなパーカッションキャップの時代も長く続くことはなかった。ブリーチローディング方式(後装式)とメタリックカートリッジ(金属薬莢)の組み合わせという、現代の銃に直接繋がる画期的な装填方式がパーカッションキャップの登場とほぼ同時期に誕生したからだ。
 現代の装薬銃は、そのほぼすべてがセンターファイア、またはリムファイアのメタリックカートリッジを使用する。このリムファイアカートリッジが登場したのは1845年だが、その少し前にピンファイアと呼ばれる別のメタリックカートリッジが誕生していた。
 ピンファイアカートリッジの銃が使われていた時代は1850年代と1860年代で、センターファイアカートリッジの普及に伴い、1870年代には急速に需要が減少、やがて消えていく。


 そんなピンファイア型式の銃器について、ガンプロフェッショナルズで紹介されたことはこれまで一度もない。その前身である旧Gun誌でもそれはなかったと思う。アームズマガジンでも同様だろう。古い形式の銃であり、それは無理もないことだ。
 しかし、そんなピンファイアリボルバーの中に、20連発というハイキャパシティな製品が存在する。いうまでもなく現代のリボルバーは通常6発で、一部が5連発だ。稀に7連発、あるいは8連発といったものもあり、.22LRなら9連発も存在する。しかしこれはそれらを遥かに凌駕する20連発なのだ。
 自分はこの銃の存在は知っていたが、これを紹介する機会はまずないだろうと思っていた。現存数は少なく(おそらく製造数もわずかだろう)、コレクターズアイテムであり、海外のレポーターがこの銃に出会う機会はまずないだろうと思ったからだ。ところが、意外なほど身近にこのルフォーショー20連発ピンファイアリボルバーがあった。無可動実銃を扱う“シカゴレジメンタルス”では、無可動実銃だけでなく、登録証付古式銃も数多く扱っている。その販売品としてこれがあったのだ。もちろん古式銃は歴史的にも価値がある美術品であり、ちゃんと可動する。
 奇しくもガンプロ9月号は特集号で、そのテーマは“Cutting-Edge Firearms”(それぞれの時代で最先端だった、あるいは鋭い切れ味を持っていた銃)だ。ルフォーショー20連発ピンファイアリボルバーは、まさに1850年代のカッティングエッジファイヤーアームズだっただろう。
 ガンプロ9月号では、このルフォーショーリボルバーについて、実寸でご紹介、ピンファイアリボルバーが開発された歴史や、カートリッジのパワーなどについても詳しく解説している。現代の銃がお好きな方々からみれば、これは古臭い、変な銃にしか見えないかもしれない。しかし、銃が発達してきた歴史の中で、このようなハイキャパシティリボルバーが作られたという事実は面白いと感じて貰えるのはないだろうか。
 ちなみにこの銃のシカゴレジメンタルスでの販売価格は\2,750,000(税込)となっている。

 

TEXT:Satoshi Matsuo(月刊ガンプロフェッショナルズ副編集長)

 

 訂正 
誌面では、古式銃ルフォーショー20連発ピンファイアリボルバーの価格を間違って
\2,750,00(税込)と表記してしまいました。
正しくは\2,750,000(税込)です。最後のゼロが抜けていました。
関係各位にご迷惑をお掛けしましたことを、深くお詫び申し上げますとともに謹んで訂正させていただきます。

 

Twitter

RELATED NEWS 関連記事

×
×