2025/08/22
スピットファイアの意匠を凝縮した限定モデル CZ 75 RAF

Text by Tomonari Sakurai 櫻井朋成
Photos by Česká zbrojovka, a.s.
第二次大戦終結80周年に合わせて製作されたトリビュートモデル“CZ 75 RAF”、この銃が持つ“歴史的背景”と“こだわり”は、名ばかりの限定モデルとは大きく異なる。
CZ 75 RAF Limited Edition
オンラインオークションで販売されるCZ75 RAFリミテッドエディション。この銃の追加ロット12挺が、Livebid.czで入札受付中となっている。リミット(上限額)入札は8月22日20:00(CEST)までで、その直後にライブ入札が始まり、終了間際の新規入札で残時間が自動延長される方式だ。海外からの参加も可能で、各国法令に従って手続きが進む。実機はプラハのCZストアに展示中だ。
CZ 75にスピットファイアの意匠を凝縮
CZ 75 RAFは総数56挺のみ。第二次大戦中、チェコスロバキアからで英国王立空軍(Royal Air Force:RAF)に従軍したチェコスロバキア人パイロット、および地上要員約2,500名に捧げる限定版だ。ベースは名銃CZ 75。外装はスピットファイア戦闘機へのオマージュで統一し、単なる刻印に留めない立体的な造形で差別化している。
スライド:ロールス・ロイス マーリンエンジンの排気管を想起させるポートを加工
フレーム:リベット打ちの機体クラフトパネル風テクスチャー
グリップ:翼面を意識した“ティアドロップ”形状、左面にはチェコスロバキア空軍のバッジを配置
マーキング:RAFのラウンデルと、標語“PER ARDUA AD ASTRA”(苦難を越えて星へ)」を刻印
フィニッシュ:主要部材はクロモリ鋼、外装はニッケル系フィニッシュ。操作系は“Rainbow Blue”仕上げでアクセントを付ける。
シリアルはRAFで編成されたチェコスロバキア人飛行隊:310, 311, 312, 313中隊にちなむ体系。コレクターにとって“由来”が一目で分かる点が魅力だ。
アルミ製専用ケースはスピットファイアのオイルタンクを模した形状となっている。蓋はコクピットのウインドシールド風、裏面には計器盤のエングレービングを施す。外箱にはチェコのアーティストDavid Cernyの直筆サイン。
内容物は真正証明書、ディスティングイッシュト・フライング・クロス(DFC)複製メダル、スピットファイア型キー、RAFチェコスロバキア人兵士の小冊子、イラストレーターJaroslav Velcによる手描き機体画など。造形・意匠はマスター・エングレーバーRene Ondraらの協働でまとめ上げている。
今回の入札対象(12挺)
RAF310-05, RAF310-09, RAF311-16, RAF311-17, RAF311-18, RAF311-20, RAF311-21, RAF311-22, RAF311-23, RAF311-26, RAF311-27, RAF311-28
オークション参加要領(要点)
プラットフォーム:Livebid.cz
-スケジュール: 事前のリミット入札は8/22 20:00(CEST)まで
直後にライブ入札開始(終了間際の入札で自動延長)
海外参加:可。輸入・所持は各国法令に準拠
実機展示:CZストア(プラハ)
GP Web Editor補足:
こう紹介されても、ほとんどの読者は、“これは一体何?”と思われるだろう。自分もさっぱりわからなかった。というわけでちょっとだけ調べてみた。
第二次世界大戦直前の1938年から1939年にかけて、ナチスドイツはチェコスロバキアを解体・消滅させた。そんな中、ドイツに屈することを潔しとしなかったチェコスロバキアの飛行士ら約2,500名は祖国を脱し、ナチスの暴政からヨーロッパを開放すべく、英国王立空軍に参加、大空でナチスと戦った。
ところが、民主主義のために命懸けで戦い、戦後帰国した彼らを、再建されたチェコスロバキア共産党政府は迫害したのだ。これはチェコの人々にとって暗い記憶となっている。
40年以上の時間を掛けて、やっと民主主義を手にしたチェコの人々にとって、彼らは英雄であり、深い敬意と感謝の念を抱かずにはいられない存在だ。
そんな航空兵らの功績を称え、追悼するための記念碑Winged Lion(有翼のライオン)が2014年6月、プラハに建てられている。このCZ75 RAFもまた、チェコの英雄達を称えるものだ。
従ってこれは単なる“限定モデル”ではない。様々なメーカーが折に触れ、限定モデルや記念モデルを生産している。しかし、そのほとんどは通常のカタログモデルに少し特別なパーツを付けたり、刻印を変えただけのものに過ぎない。それらと比べ、このCZ75 RAFは歴史の重みが違うし、スピットファイア由来の造形をスライド加工や表面テクスチャー、パッケージにまで徹底して落とし込むなど手の加え方が違う。
世にあふれる限定モデルの中には、こんな手の込んだ製品もあるのだということを知って頂ければ幸いだ。
日本から入札に参加することも可能。もちろん、落札しても日本に持ち込むことはできない。
入札期限は8月22日20:00(CEST:Central European Summer Time:中央ヨーロッパ夏時間)だ。これは日本標準時間23日午前3時に当たる。
Photos Courtesy of Česká zbrojovka, a.s.
Text by Tomonari Sakurai 櫻井朋成
Gun Pro Web 2025年9月号
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