
PART 2
データ量が1回のレポートの上限を超えてしまいました。
そのため、Part 1とPart 2に分割しています。
SP-01 Custom項目解説の続きです
グリップパネルは以前LOK Gripsから提供してもらったG10グリップだ。手になじむ感触とデザインが気に入っていて、今もそのまま使い続けている。
▲グリップは以前LOK Gripsから提供を受けたG10グリップを装着している。
▲交換可能なグリップは、もっとも手軽にカスタマイズできるポイントだ。CZ75は標準が樹脂製のグリップパネルだが、SP-01では中央がふくらんだラバーグリップとなった。上下がやや細く、手のひら中央に当たる部分がふくらんでいる、いわゆるパームスウェルのデザインで自然に手に収まりやすい。見た目は地味ながら、人間工学に基づいた実用的なデザインといえる。
▲▼またさらなる重量増加を狙うユーザー向けには真鍮(ブラス)の塊から削り出されたヘビーウェイト仕様のグリップも用意され、装着すると約9オンス(約255グラム)増加、結果SP-01の総重量をShadow 2に近づけることができる。
但し、重量増加の中心がグリップ後方に偏るため、フロントヘビーなShadow 2とはバランスが異なり、リコイルコントロールの感覚も同じとは限らない。表面には細かいチェッカリングが施され、滑りにくさも十分だが、より強いグリップ感を求めるならアグレッシブなテクスチャーを採用したジョーズブラス仕様も選択肢となる。
こちらは表面加工が削り取る量が多くやや軽くなっており、重量も約8.25オンス(約234グラム)となっている。USPSAのプロダクション/キャリーオプティックス部門では、銃の重量上限が59オンス(約1,673グラム)まで認められている。この制限内でさらなる重量化を図る手段として、LOK Gripsが提供する約7オンス(約198グラム)の真鍮製ウェポンライトを装着すればA01-LDの重量を上回るレベルまで引き上げることも可能となる。物理的に重くなることで体感リコイルは確かにソフトになり、反動の収まりも良くなる傾向がある。
しかし、重量が増すことで銃の振り回し速度は低下し、慣性の影響によりオーバースイング(勢い回ってターゲットを通り過ぎてしまう)も起こりやすくなる。高重量化には明確な利点がある一方で、すべてのシューターにとっての最適解とは限らない。射撃スタイルやフィジカル面なども加味して、自分に合ったバランスを見極めることが重要なのだ。


マガジンはCZ Customの薄いフォロワーとスプリングにTaran Tactical Innovationsのベースパッドでほぼ140mmの全長ながら23発装填可能としている。IDPAでは装填するのは10発までだが、これもUSPSAでの使用を前提とした。マガジンキャッチもShadow2のものを移植したことからリロードはスムーズに行なえる。
▲▼CZ75用マガジンには思いのほか多く仕様の違いが存在する。プリB時代のもの(左)では15連発だったが、1990年代に入りマガジンチューブの設計が若干変更され、装弾数が16発にアップ。これに伴い、マガジンに対応するフレーム内部も再設計されている。そのためプリBモデルには現行のマガジンは太過ぎて挿入できないケースが多い(一部除く)。
さらにA01シリーズではCZ75よりも大型のP-09/P-10F用マガジンを採用し、これも互換性はない。ただしA01にCZ75用マガジンを使用可能にする専用グリップパネルが用意されており、それを装着すれば使用可能になる。

▲▼IDPAではマガジンへの装弾数が最大10発に制限されているがUSPSAのキャリーオプティックス部門ではマガジン全長が140mmのゲージに入る範囲なら装弾数の制限はない。そこで通常16発装填可能なCZ75 Bシリーズのマガジンに+4エクステンションベースパッドを装着する場合は、おおよそ20発程度まで装弾数アップする。
しかし、できれば22-23発は欲しいところだ。そこでCZ Customや数社から販売されている通常よりも薄型に設計されたフォロワーと、圧縮時のスペース確保を目的にコイル数を減らした10コイルスプリングのキットを使うことで、マガジンの内部容積を最大限に活用することができる。一部のBモデル用マガジンには適合しない場合もあるが、今回のMec-Garのマガジンでは最大23発までの装填が可能となった。ただしスライドホールドオープン機能(ラストラウンドでのスライドストップ)が動作しなくなるというトレードオフがある。USPSAでは実際のステージ攻略中にマガジンを撃ち切る前にリロードすることが多く、これが大きな問題になることは少ない。

▲マガジンキャッチはShadow 2用のエクステンデッドタイプをそのまま移植している。この拡張タイプは押す面積が広く、わずかな動作で確実にマガジンリリースが可能となるため、操作性が大幅に向上した。
実はこのSP-01には、近い将来バレルをゴールドのTiNコーティングで仕上げたり、スライドに軽量化加工を施したりといったカスタムも考えていた。見た目のインパクトも増すし、作動性の向上も期待できるからだ。しかしIDPAのキャリーオプティックス部門のルールに抵触してしまう(USPSAでは許可されている)。目的がブレてしまうことになるので、そのアイデアを見送ることにしたが、表面処理はCZ Custom取材中に以前見せてもらったガンメタル系カラーのポリーコートが印象深かったので、ある程度使い込んだら再仕上はしたいかなと思う。
こうして完成した今回のカスタムSP-01は、これまでに周囲の人たちが使っていたものを試してみて、これは良い!と感じたパーツだけを選び抜いて組み上げた一挺で、面白いキャリーオプティックス仕様になったと思う。
中でも特に気に入っているのが、Eemann Tech製のカスタムトリガーだ。メーカーの説明によれば、このトリガーはバイオメカニクスのエンジニアや医師の意見を基に設計されており、カーブの半径はほぼフラットに近いものの、完全な直線ではない。その絶妙な形状が指に自然にフィットし、スムーズにトリガー面をなぞるような感覚で引ける。
フラットトリガーよりも指が滑らかに移動しやすく、さらにテコの原理が働くため、従来のカーブトリガーに比べてトリガープルもわずかに軽く感じられる。引き始めから切れるまでの力の掛かり具合が均一なのも好印象だ。これまで様々なCZ75用のトリガーを試してきたが、現時点ではこのトリガーが最も自分の手に合っていると感じている。
▲CZ75のトリガーメカニズムを分解には、まずセイフティレバー軸に設けられた切り欠きに引っ掛かっているシアスプリングを持ち上げて外すことから始まる。そしてセイフティレバーを引き抜き、それに連動してシアと一体となっているエジェクター(シアハウジング)や、右側面のセイフティレバーも分解できるようになる。
▲グリップスクリューを外してグリップパネルを取り外すと、マガジンガイドと、それを固定しているマガジンガイドピンを取り、メインスプリングプラグ(※写真に入れ忘れ)とハンマースプリング(メインスプリング)も分解可能となる。
▲次にハンマーピンが抜け出ないよう上から差し込まれているハンマーピンリテイニングペグを軽く押し上げる(完全に抜き取る必要はない)。これでハンマーピンがフリーになるので、ピンを横から押し出せばハンマーも取り外せる。
▲BシリーズのモデルをShadowシリーズと同様のショートリセット仕様にチューンするには、スライド側にあるファイアリングピンブロックの除去が基本となる。これにより、トリガーリセット距離を大幅に短縮できる。同時にフレーム側ではシアの右隣にあるリフターとそのスプリングを取り外し、代わりに約2mm厚のアルミ製スペーサーを装着する。これでブロック機構がなくなり、シア周りがシンプルになる。
但し、落下時の安全性はプリBモデルと同じレベルまで後退する。今回のSP-01にはCZ Custom製のエクステンデッドファイアリングピンと、テンションを弱めたファイアリングピンスプリングを組み込んでいる。これにより軽量化したハンマースプリングでもより確実な撃発が可能となってくる。なおファイアリングピンはスライド側面のロールピンで固定されており、今回はCGWのカスタムピンに置き換えている。
▲シアにはCGW製のスチール切削加工シアを採用。熱処理後にハイポリッシュ仕上げされた高品質なもので、ハンマーとの接点にはセカンダリーアングルが施されており、シアクリープを抑え、シャープでキレのあるSAトリガープルを実現してくれる。このシアはBシリーズ対応のため、今回のようにファイアリングピンブロックを取り除いたカスタムモデルや、Shadow/TSシリーズに使う場合には、リフターの代わりに装着するアルミ製スペーサーが必要になる。またシアやハンマーの形状変更により、セイフティレバーが掛からなくなることがあるが、CGW製シアではセイフティとの接点にセットスクリューが設けられており、このネジを調整するだけで対応可能だ。ヤスリで削るような加工は不要で、セイフティの調整も手軽に行なえる。
▲カスタムシアやハンマーの交換後、マニュアルセイフティレバーが掛からない場合はこの部分をヤスリで削って調整する。
▲左が純正のリングハンマーで、ハンマー前方には結合されているL字型ディスコネクターの両側面の突起をトリガーバーが押すことでハンマーをコックする。CZ75のトリガージョブをする上でスムーズなトリガープルやリセット距離を設定する上でディスコネクターは大きな存在だ。Bシリーズではファイアリングピンブロックをリセットするために、その内側は大きくカットされている。右は今回のカスタムSP-01に組み込んだCGW製のレースハンマーとEemann Techのプリトラベルとリセット距離を短縮するアルティメットディスコネクター。写真のハンマーはステンレス製だがスチール製もある。いずれもスチールの塊からEDM加工で高精度に切削されたもので表面には熱処理が施され、純正ハンマーの硬度(RC45)を大きく上回るRC53まで引き上げられている。競技シューターの多くがこのハンマーを選んでおりCGWの人気商品で、シアとのセット販売もされている。
CZ Customのゴーストハンマーも軽量かつシアノッチも適切にカットされているので大変切れの良いSAトリガーが得られる。
▲各社からカスタムディスコネクターがオファーされており、CGWのステンレス製が個人的な好みだ。他にも使用できるトリガーが限定されるが、DA時のトリガーリーチを5mmも短縮するリーチリダクションキットも勧められる。
▲ハンマースプリング(メインスプリング)は、トリガープルの重さを左右する最も重要な要素のひとつだ。メーカー純正では20ポンドとかなり強めで撃発の確実性を優先した設定となっている。競技を主目的としたカスタムCZ75では10-13ポンドあたりの軽量スプリングが一般的だ。極端なところではCGWは8.5ポンド、Eemann Techは7ポンドという超軽量スプリングも提供しているが、これらはエクステンデッドファイアリングピンや軽量ファイアリングピンスプリングとの併用が前提であり、ハンマーの質量とのバランスも影響して来る。フェデラル製の柔らかいプライマーを中心とした特定のアモに合わせたものだ。
筆者としてはイグニッションの確実性を保ちつつ、十分に軽いトリガープルが得られるCGWの11.5ポンドを好んで使用してきた。ただセルフディフェンス用途を考慮するなら13-14ポンド前後が妥当なラインと感じている。今回のカスタムSP-01では試験的にEemann Techの10ポンドスプリングを使用中だが、今のところ作動には問題は見られていない。シューターの目的や使用弾によって、最適なスプリング設定を見極めることが重要だ。
▲特にトリガーの形状がDAの引きやすさを左右するため、カスタムトリガーへの交換は重要だ。Bシリーズからファイアリングピンブロックが追加され、トリガープルがやや重くなったことから、CZも改良を重ねてきたが…むしろ改悪と言ってよく、ハッキリ言ってカーブがきつくなり過ぎて、かえってトリガーが引きづらくなってしまっていた。左が現行SP-01に付属するトリガーだが、これも数年前に仕様変更され、曲面を以前より抑えることで、随分と改善された。
今回は少し前からテストしていたEemann Techのアルティメットトリガーを導入した。完全なフラットトリガーではDAがやや引きづらいため、わずかに曲面を加えたストレートに近い形状となっており、DA/SAの両方で非常に引きやすく気に入っている。
▲トリガーメカニズムに関わるパーツを取り除いたフレームの内側。表面の加工痕が荒い部分もあるので、トリガーバーとの接触するエリアなども紙ヤスリで軽く磨いてある。
▲トリガープルはDAが約1.6㎏(約3.5ポンド)、SAが602g(約1.3ポンド)まで軽量化された。トリガー関連パーツの摩擦が生じる部分を磨き込んでいるのでかなりスムーズだ。
▲こちらは A01-LDのトリガーメカニズムだ。基礎設計はCZ75を踏襲しており、パーツの互換性を極力維持しているが、一部は見直され、より合理的な構造に改められている。まず、ハンマーストラットとハンマースプリングについてはコンパクトモデルへの展開がしやすいように最初からCZのコンパクトモデル系の仕様に統合されていることだ。またエジェクターが独立したピンでフレームに固定され、通常のCZ75系に見られるようなエジェクターの微細なガタツキがトリガープルに影響を与える問題を解消している。さらにマガジンキャッチの構造も改良され、CZ75で採用されて来た大型スプリングスクリューではなく、ディスク型パーツで固定される方式となった。メカニズムの完成度は非常に高い。