2023/10/03

副社長の〇〇な話 vol.2 「メッキの話」

 

 2回目もありました。奇跡! 「タナカワークス副社長の〇〇○な話」
 気分・都合・予定により不定期にされるトイガンメーカー副社長のつぶやき。
 今回は「メッキ」についてのお話。

 なぜHWメッキからHWメッキに価格変更したのか、その辺りも詳細が明かされます。


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 こんにちは!

 今日はうちが得意としている表面処理「メッキ」について少しお話したいと思います。
 基本的な事だけですが、かといってこの手の情報をまとめて入手する方法って案外ないので面白いと思います。興味があれば最後まで読んでみてください。

 

 実際、メッキの不良率を考えると、何度塗装へ浮気しそうになったことか……。今もギリギリで踏みとどまっています。

 でも、やっぱり綺麗にメッキされた銃を見るたびに「そうそうこれよ、こうでなくっちゃ」って毎回一人でつぶやいてます。だからいろんな人にいろんな場所でいつも言ってますが、可能な限り弊社はメッキを続けたいと思っています。でも、心折れたらごめんなさい。

 

 

1.成型品の話
 

 まずメッキをするならABS樹脂で成型する必要があります。成型とはタイ焼きの鉄板のような金型に高温の樹脂を流し込んで固める部品の作り方です。

 

 しかし、ABS樹脂製であれば何だってメッキできるわけではありません。

 切削品(ABS樹脂の塊を加工で削って作った部品)は絶対にNGです。未着やら色ムラやら不良になる確率がすごく高くなります。理由は長くなるので詳しくは話しませんが、刃物を当てること自体がよくないです。たとえ成型品であっても、ヒケが気になるから平を出そうと表面を刃物で切削するとかちょっとリスキーに感じます。摩擦熱をかけて磨くは問題ないと思いますが、成型したまんまが基本です。メッキするなら金型を使った成型品一択なところが面白いですね。
 ですので、削り出したABS部品をメッキしようしてる人がいたら全力で止めましょう。これトイガン業界はもちろん、メッキに携わる方でも知らない人が殆どだと思いますので、これを読んだ人だけのサービス情報になります。

 

 

2.メッキはABS

 

 一般的に電気を通さないプラスチックへのメッキは、ABS樹脂の中に入ってるB(ブタジエン)を溶かしてそのボコボコ開いた穴に食いつかせて何だかんだ処理(割愛)を進めていきます。ですので、ABS樹脂のようにやり方が確立されてるものはいいのですが、それ以外の特殊なプラスチックへのメッキは、出来ないとは言わないけれど、トライ&エラーを繰り返して独自の設備とレシピを作らないといけないのと、それに付き合ってくれるメッキ屋さんが必要になるので面倒くさいです。(ジュピター・フィニッシュがこれ。※現在廃盤になりました)

 

 

3.最強のメッキ

 

 ちなみに数あるメッキ処理の中で最強はクロームメッキになります。基本的にメッキは金属皮膜を付けることなんですが、本当に金属を付けるもんだから腐食します。例えば鉄の釘でも屋外に放置すると赤く錆びるし、銅の10円玉でも時間が経てば変色しますよね。つまりほとんどの金属は常に変化し続けてます。ところがクロームだけはもうこれ以上変化のしようのないメッキの終着駅みたいなものだから、人の手でベタベタ触ろうが、雨ざらしにしようが、まったく変化せずピカピカ光沢を永久に維持します。そんで硬いから傷にも強いです。
 ってことはクロームメッキされた銃は、火薬使おうが、水道水で洗おうが、表面は腐食せず綺麗なまま維持できる! クローム最高! ってなります。(水道水ぶっかけたら内部パーツは腐食します)

 

 そんなクロームメッキは最高ですが問題もあります。それは単純な形状にしかメッキできないことです。車のエンブレムなどがそうですね。クロームは穴や刻印があったり、複雑な形状をしたものには思った通りにメッキが回らないので不良が多く出ます。

 

 つまり、銃の形状へのクロームメッキは残念ながらあまり向いてないと思います。あと基本的に鏡のようなギラギラ光沢なので、弊社がやりたいシルバー系の艶を抑えたステンレス色も表現しにくいです。

 

 

4.新生ステンレス・フィニッシュ


 本当は性能的にクロームメッキでやりたいのですが無理なので、代替として複雑な形状にも多少対応するスズ・コバルトメッキを使用しています。コバルトが入っているので青味がかった暗めのシルバーも再現できます。弊社商品のイメージにはピッタリです。弊社が昔から“ステンレス・フィニッシュ“名目で販売してるやつですね。


 でも、こいつのスペックはちょっと癖があって、見た目100点、耐食性40点(その他の特徴:皮膜が薄く設定すると強度もない)です。それに加え、弊社のリボルバーには部品形状の問題で結局“不良率は高め”とあまり嬉しくありません。

 

 量産性・実用面で、もうちょいレベルアップしたかったステンレス・フィニッシュなのですが、ここにきて、なんと、まさかのレベルアップ成功です!
 ついに、ステンレス・フィニッシュを先に触れた最強クロームメッキで再現できました
 そう、これを報告したいがために、先にクロームメッキのウンチクを説明した次第です。若干質感は変わったのですが、パッと見て新・旧の違いも分かりにくい地味な変更ですけど、結構すごいことしたぜって社内は静かに興奮してます。なので、ちょっとは説明しておかないと「メッキ変わりましたよ!」って言ったって、反応が「へー」とか「ふーん」とか温度差があればメンタル面でNGです


 ここ最近メッキ止めてたのも、生産管理部長が一生懸命これやってました
 ちょっと前からスズ・コバルトメッキ仕様も、上から薄いクロームコーティング(2重メッキ)をして耐食性の対策をしてたので、ユーザーからすれば実用面での違いはあまり感じないかもしれませんが、2023年10月に発売を予定しているS&W M66モデルガンからメッキを切り替えますのでご期待ください。

 

 

 そんな感じで今日はメッキのお話でした。
 ほかにも改善しなければいけない課題は山ほどありますが、誰も気づかないような変更を、こっそり真剣に進めてますので、タナカワークスっぽいなと微笑ましく見守っていただけたら幸いです。

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