2023/09/28
エラタック傾斜マウントでドロップ攻略。
【はじめに】
こちらはエラタックマウントについての記事です。2022年の年明けに埼玉県長瀞射撃場へ伺い、そこでエラタック傾斜マウントのテストを行いました。使用したのは狩猟用スプリング式の空気銃です。エアライフル市場の先端を走るプリチャージ式は、ハイパワーかつ、高精度。一方、スプリング式は経済的でお財布に優しい反面、仮に50m先の標的に当てようとする場合、なかなか当たらないストレスに加え、目的を成し遂げるまでには多少の努力と忍耐力が要求されるタイプの空気銃かもしれません。エラタック、果たしてエアソフトには過剰すぎるタクティカルマウントなのか。その性能を見ていきます。
【狩猟用】
当方はドイツ製のエアライフルを所持しておりますが、50mというのはなかなか遠い距離です。というのも、ドイツ国内で流通している猟銃としての空気銃は、モデルによってはFire Armsの所持許可を必要とせず、その代わり、弾の威力上限(*ジュール)に制限が課されています。つまるところ、これはスプリング式全般に言えることではなく、当方が所持する個体はドイツ国内の該当する銃器の管理基準に則り、メーカー側で意図的に低パワーに抑えているモデルということです。
そこで、落下する弾道を含め面白さを感じるこのエアライフルに、エラタック傾斜マウントを搭載していくと、どのような効果が得られるかを見ていきます。ペレットのそれは、BB弾の弾道とは異なるものですが、ロングレンジにおける着弾点補正という場面に重なると、面白く読んでいただけるかと存じます。
【スプリング式】
本題の前に、エアライフルでは、エアソフトで用いるBB弾ではなく、ペレットと呼ばれる弾を使います。前述の個体の場合、30mを超えたあたりからの弾道落下は著しく、スコープ中心に狙いを定め引き金を絞るといった通常射撃の要領で標的に当てることは困難な作業です。銃を僅かに上方向へ傾斜させ、弾道落下補正を入れた状態で、かつスプリング式空気銃の特長といわれるダブルリコイルによる振動に対応しつつの射撃となるわけです。
【ドロップ攻略の面白さ】
しかしながら、弾道落下を体感できる貴重な機会が得られるのもスプリング式の醍醐味です。狩猟道具としてのスプリング式 空気銃が面白いと感じられる理由は、楽々と超えさせてもらいないハードルを何とか攻略していく過程と、問題解決時の達成感(ついに意図したポイントに着弾した…)、この辺りにあるように思います。だんだんエラタックの能力が発揮できそうな領域の話に迫って参りました。
【マウント自体が傾く】
写真にあるこのエラタック傾斜マウントは、シューターの特殊な射撃ニーズに特化した製品です。その特殊ニーズとは、超ロングレンジ射撃です。ロングレンジの更に先ということになります。米国で競技として競われるニッチな射撃分野のひとつ、超ロングレンジ射撃の定義ですが、的までの距離が1.8キロメートル以上(aprox:2000 yards)の射撃とされているようです。こうした競技に参加するシューターの方々も、もちろんスコープは使うのですが、エレベーションの移動量が絶対的に足りません。
【その先の距離へ】
そこで登場するのがエラタック傾斜マウントです。遥か遠く離れた標的へ着弾させるため、スコープを物理的に大きく前傾させる方法が用いられます。 ライフルスコープ自体では到底対応しきれないエレベーション移動量を、ハイライザーといったベースレールや、マウントの傾斜で補い、シューターが望むポイントへの着弾を可能にするというものです。日本国内において超ロングレンジ射撃は叶いませんが、これは空気銃にも通じるところが多々あります。
一部のハイパワータイプを除き、エアライフルを装薬銃と比較した場合、言うまでもなく空気銃は圧倒的にそれよりもパワーが劣ります。更にスプリング式空気銃については比較対象にはなり得ません。パワーが不足する分、例えば50mという射撃距離では、空気銃でもペレットのドロップ幅が一番著しいのはスプリング式です。
【有効射程の外から中へ】
スプリング式空気銃で50m先の標的に着弾させようとする場合、上図写真にあるような位置(*私の銃では実際はもう少し上で保持する必要がありました)で、標的に対してスコープのレチクルを保持する必要があります。これはミルドットレチクルですが、レチクルによっては下側ポストのどの位置に狙点を合わせていいのか、アバウトになってしまいます。こうした場合、BDCレチクルの方が扱いやすいかもしれませんが、ミルドットレチクルユーザーの方でも心配ありません。解決方法はあります。
【エラタックでこうなります。】
ということで今回、距離は50m、ライフルスコープに内蔵されるエレベーション移動量では補い切れないスプリング式空気銃のペレット落下幅をこのエラタック傾斜マウントで補完してみました。エラタック傾斜マウントを使うことで、これまで視野中心で捉えることが出来なかった標的を、レチクルのセンターで捉え、着弾をさせることが出来るようになります。
【エラタックを使う】
使用したマウントはドイツメーカー、Recknagel社のエラタック アジャスタブル 傾斜 マウントです。マウント本体には、ダイヤル調節式の傾斜機構が組み込まれています。0 MOA(傾斜無し)から始まり、最大で 70MOA までの物理傾斜設定を可能にしています。このマウントを使うと、10MOA刻みで70MOAまでをダイヤルで調整することが可能です。一般的な傾斜マウントは、角度が一定の固定式ですが、これはアジャスタブルと呼ばれる可変タイプです。
【POI調整幅】
仮にこの場では1MOA at 100mを約3cmとして少し説明をすると、50m先のターゲットで0~最大105㎝(70MOA)、100m先のターゲットで0~最大210㎝(70MOA)までの範囲で着弾点補正が可能ということになります。
これが意味することは、ライフルスコープに内蔵されているエレベーション移動量、例えばVixen アルテス 5-30x56 ELD20 であれば +/-50MOA ですが、アジャスタブルを併用することにより、追加で最大70MOAのエレベーション移動量が得られる(*設定によっては、合計120~170MOA)ということです。
【追加機能を後付け】
つまり、所有するライフルスコープを問わず、エレベーションを後付けすることが出来る。更に、傾斜が必要ない平常時には、ゼロインを済ませたゼロ位置へ、ダイヤルを回してマウントをフラットな状態へ戻すことが出来る。というマウントが、アジャスタブルなのです。
【エアソフトにも】
HK417 VFC電動ガンとのセットアップに加え、エアソフト向けのSAKO TRG M10との組合せもマック堺様によるYouTube動画にてご紹介をいただきました。実銃において、超ロングレンジに対応可能なエラタック傾斜マウントと、SAKO TRG M10は、ひとつの理想形とされている組合せでもあります。エアソフトでもぜひ。
今回もここまでお付き合いをいただきありがとうございました!
エラタック傾斜マウントについての詳細はこちらのドイツと狩猟とおいしい話でぞうぞ。
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