2026年1月号

2025/11/27

【NEW】タナカ SIG P229 ウォームシルバーコーティング エボリューション2 オールHW

 

1990年代中頃、SIGARMSが少数限定生産したP229オールシルバーモデルを再現した製品だ。他には無い357 SIGカートリッジを使うブローバックモデルで、美しい表面塗装と高い作動性、耐久性、重量感などを併せ持つ魅力的なモデルガンに仕上がっている。


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 P229は1992年にSIG SAUERブランドでは初の40 S&W対応モデルとして登場、その2年後に、フェデラルアムニッションと共同開発した357 SIG弾を使うモデルがこれに追加された。そのあたりの経緯は11月号で解説させていただいている。
 SIG SAUERのアメリカ法人であるSIGARMS,Inc.は、1985年に設立されたが、90年代半ばの時点では現在のSIG SAUER Inc.とは比べ物にならない小規模な組織であった。 

 そのことを裏付ける資料として、1996年に発行した同社のカタログが自分の手元にある。195mm×134mmというB5判の半分強の大きさで薄い紙を使った48ページの中綴じ小冊子という体裁で、その後の豪華版(印刷された最後の2020年版カタログは厚紙216ページ、サイズは203mm×273mm)とは比べ物にならないささやかなものだ。

▲SIGARMS 1996年版カタログの表紙。そこにはP229とザウアー90ボルトアクション、そしてヘンメリー280ターゲットピストルの3機種が載っている。

 

▲1996年版カタログのP229を紹介したページ。表紙と同じ、シルバースライドのP229が載っている。


 これに載っているP229は、ブラック仕上げのモデルと、スライドシルバー、フレームブラックの2トーンモデルだ。P229はP228までのプレス加工スライドとは違い、ステンレス削り出し加工スライドを採用、強度を高めることによって40 S&Wや357 SIGといった高圧カートリッジにも対応できるようにしている。
 通常モデルはステンレス製のスライドを黒染めして販売していたが、この2トーン仕様はスライドにニッケルメッキを施して販売された。当時のP226やP228とは異なり、P229はステンレススライドなので、その地肌のままでも2トーンになると思うのだが、わざわざ無電解ニッケルメッキ仕上げとしている。これは当時のラインナップであるP220、225、228、230にも同様のニッケルメッキ2トーン仕様があるため、同じように加工したのだろう。このニッケルメッキをおこなったのが、以前にも書いた通り、ペンシルベニア州のKlein Plating Worksだ。
 今回タナカが製品化したP229ウォームシルバーコーティング仕様は、スライドだけでなく、フレームもシルバーとなっている。当時のSIGARMSはオールシルバー仕様をカタログに載せていないが、当時も少数限定生産品でこのような仕様は存在した。タナカはそれを再現している。

 

▲このP229旧型スライドは実銃の場合、ステンレススチールからミリング(削出し)加工されたもので、一般的にLegacy Slide(レガシースライド)と呼ばれている。レガシーは良い意味と悪い意味の両方に使われる言葉だが、この場合は当然、良い方の“遺産”だ。これがあったからこそ、SIG SAUERはFolded Carbon Steel Slide(鉄板を曲げて作ったプレス加工スライド)から脱却したのだ。

 

▲特徴的なhalf-height cocking serrations(ハーフハイツ コッキングセレーション)は、スライドの下半分にあるreinforcing bands(リーインフォーシングバンド:補強バンド)部にのみ刻まれている。レガシースライドはSIG P220シリーズのスライドをひたすら強化するためにデザインされたが、ここまで補強する必要はないということで、現在のpost 2009スライドに切り替わった。

 

 メッキ加工はタナカの得意分野だが、HW材へのメッキは物理的にできない。そのため、この製品はウォームシルバー塗装による再現となっている。ニッケルメッキではないが、それを思わせるような温かみのある仕上がりだ。
 フレーム、スライド共にヘビーウエイト樹脂で製作されており、高い剛性と重量感が楽しめる。一方、大きな力が掛かるバレルは強化樹脂とし、リコイルスプリングガイドにはバッファーシステムを搭載した。フレームにもハンマーがぶつかる衝撃を吸収するエラストマー製ハンマーストップが組み込まれていて、その耐久性は高い。発火を繰り返しても簡単には壊れないことは、既存の製品であるP226やP228で実証済みだ。プレスパーツはコーティング処理され、スプリング類もステンレス素材が使われるなど、発火後のメンテナンスはかなり容易になっている。

 

▲40S&Wのケース(薬莢)を絞って9mm口径とした357 SIG。このカートリッジをモデルガンで再現したのは、このP229シリーズが最初だ。わざわざ357 SIGを選択して製品化したところに、タナカのこだわりを垣間見た。商品名には明記されていないが、このカートリッジも快音トップを採用しており、音抜けの良さを楽しめる。

 

 P229ウォームシルバーコーティングは、美しい外観と、安心して発火を楽しめる高い作動性能、保守管理性、そして手にした時の重量感など、そのすべてを併せ持つ製品だ。357 SIGカートリッジを使うという他にはない独自性も加わり、その魅力をさらに高めている。

 

▲タナカ SIG P229 ウォームシルバーコーティング エボリューション2 オールHW
全長:178mm
重量:685g(カートリッジ別)
装弾数:10発
主要材質:HW樹脂+亜鉛ダイキャスト
仕様:5mmキャップ火薬使用発火式モデルガン
付属品:357 SIG Evolution 2 快音カートリッジ5発付属
価格:\45,980 (税込)
発売時期:12月中旬予定
お問い合わせ先:タナカ

 

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