2025/11/21
サブマシンガン対決! H&K MP5 vs コルト9mm AR【動画あり】

Text & photos by E. Morohoshi
Gun Professionals 2021年9月号に掲載
1977年以降、特殊部隊用サブマシンガンのディファクトスタンダードとなった傑作がH&K MP5だ。近年では、これに勝る機能性を持った製品も登場しているが、MP5は現在も世界中で活用され、供給が続いている。そんなMP5のサブマシンガンとしての操作性や基本構造について、MP5が最も輝いていた1980年代の9mmARサブマシンガンと比較、その実力を検証してみた。
1977年10月18日、ルフトハンザ航空181便をハイジャックしたPFLPのテロリストをGSG9が鮮やかに強制排除したオペレーション・マジックファイア(Operation Feuerzauber)によって、H&K MP5は衝撃的なデビューを果たした。それまでサブマシンガン(SMG)の作動方式として主流だったオープンボルト・ストレートブローバック方式にとって替わり、クローズドボルト方式のSMGが特殊部隊用装備として脚光を浴びるようになったのだ。
しかし、近年になるとピストル口径SMGは、その威力不足が問題視されるようになり、現在アメリカではそのほとんどが5.56mm口径の自動カービン等に切り替えられた。しかしその一方、要人警護や特殊施設の警備、あるいは人口過密地域での治安活動といった特殊な分野においては、SMGは依然なくてはならないショルダーウェポンとして位置づけられ、現在も活用され続けている。
今回は、警察のSWATチームなどの装備として一世を風靡したクローズドボルト方式SMGの雄であるMP5と、それが世界中に普及しつつあった1980年代に登場した9mm口径化されたARにスポットを当てる。同じ9mmのSMGであっても、そこには大きな違いがあるのだ。


MP5と9mmAR
MP5については、本誌2020年11月号のAkita氏の記事であるH&K SP5ピストルに詳しく解説されているので、詳細はそちらをご覧いただきたい。同じSP5が今回も登場するが、内部にレジスタード・オートシアー(BATFE:Bureau of Alcohol, Tabaco, Firearms and Explosivesアルコール、タバコ、火器及び爆発物取締局にフルオート火器として登録されている装置)を組み込むことで、銃の法的なステータスはSMGになっている。そのため伸縮ストックを合法的に装着することが可能となり、スペック的には限りなくオリジナルのMP5 A5あるいはMP5 NAVYに近い状態にしている。
MP5が特殊部隊装備として大いに注目が集まったのが1980年代だ。冒頭に述べたGSG9の活躍に続いて、1980年5月5日、イラン人テロリストに占拠され駐英イラン大使館をSASが急襲するオペレーション ニムロッド(Operation Nimrod)が実行され、ここでもMP5が注目を集めた。西側世界の特殊部隊が装備するSMGがMP5一色に染まろうとしている最中、1984年、Colt社は5.56mm口径のAR-15を改造し、限定的な制圧力を必要とする都市部の警察組織などを対象とした9mm口径SMG、M635としてリリースした。M635の操作方法やスペックは、作動方式をストレートブローバックに改めた以外は、ほぼAR-15に準じたものだ。ボルト内部への詰め物によるボルト質量の増加など、機能的には重量閉鎖式ともいえる。レシーバーのサイズも同じとし、9mmへの口径コンバートには、マグウェル内にレトロフィット式に固定されたアダプターブロックが用いられた。そしてColt純正M635専用スチール製32連マガジンを使用する。
1986年に成立した民生マシンガン規制法、FOPA86(Firearm Owner Protection Act:銃器所有者保護法)が施行されるまでの数年間、警察や民間の個人に登録されたM635 SMGは、NFA(National Firearm Act:国家銃器法)ウェポンとしての正規の手続きを踏むことにより、現在でも民間人による売買や所持が可能だ。ただし1984~1986年の2年間に製造された、民間でも入手可能なステータスを持つColt純正M635 SMGの絶対数は極端に少なく、銃器市場で見かけることは滅多にない。もしも売りに出るようなことがあれば、価格は3万ドル(330万円)を優に超えるだろう。
今回は以前入手してあったM635仕様のColt製10.5インチ9mmアッパーアッセンブリーとHAHN PRECISION製9mmARコンバージョンキットを使い、手持ちのフルオートARロアーレシーバーを、ほぼオリジナルM635と同じスペックの9mmARにコンバートした。ドロップインパーツの応用により、登録レシーバーへの永久改造は施されていないので、法的には一切問題はない。唯一ショルダーストックがオリジナルのM635とは異なるが、その理由については後述する。
それではMP5と9mmARについて、一連の作業や操作方法を見ていこう。まずはマガジンの弾込めからだ。
マガジンの弾込め
サブマシンガンのマガジンへの弾込めは、近年でこそ良質のものが揃ったおかげで扱いやすくなっているが、一昔前までは簡単なものから非常に込めづらいものまで、機種によって難易度に大きな開きがあった。
SMGのマガジンを大別すると基本的にボディー部はダブルスタック形式で、フィーディングポジションにはシングルフィードとダブルフィードの2種類がある。一般的にSTENやMP38/40といった旧タイプのSMGはシングルフィードが多いのに対し、第二次大戦以降のSMGはほとんどがダブルフィードになっている。シングルフィード・マガジンの弾込めは全般的にやりにくく、STENの32連などは指で込められるのは最初の数発がいいところだ。それ以降は専用マグローダーを使わない限り、にっちもさっちも行かなくなる。
ダブルスタック・ダブルフィードは1発目がフォロワーと片側のリップ、そして2発目以降はマガジン上端のカートリッジと反対側のリップとの間にカートリッジを割り込ませていくので、シングルフィードに比べて弾込めは容易だ。しかし同じダブルフィードでも、マガジンの厚みやリップの角度、それにマガジンスプリングのテンションといった3次元的な要素が機種によって異なり、弾込めの難易度に差が生じるのだ。
MP5の純正30連マガジンは、指で込めてもカートリッジが最後までカチンカチンと気持ちよく入るので、弾込めは1分もかからず、ストレスなしに完了する。マグローダーはほとんど必要ないが、使用すれば時間は半減するだろう。
それに対し、今回初めて接することになったColt製32連マガジンでは、予期していた以上に汗をかくことになった。弾込めが比較的楽なはずのダブルフィード・タイプでありながら、1発目からかなりの力を必要とするのだ。専用マグローダーがなかったので、仕方なく指と割り箸を使って四苦八苦しながら弾込めを続け、32発を詰めるのに15分以上も掛かる始末だった。
余談になるが、筆者の知るかぎり弾込めが最もやりやすいSMGのマガジンは、ローラー状のフォロワーを持つスターリングMkⅣの34連マガジンである。個人的な意見として、例えば弾込めが楽なスターリング マガジンを満点の10点とした場合、MP5が最初は9点で後半が8点、Colt製9mm用マガジンは最初が5点、10発目あたりから3点、20発目くらいからは1点という感じだ。前述のシングルフィードSTEN 32連マガジンに至っては、途中からマイナス10点以下というレベルで、素手ではとても太刀打ちできない。
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HK Slapによる初弾装填
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