2026/01/18
コクサイ ブローニング M1910 【Vintage Model-gun Collection No.43】

Gun Professionals 2015年10月号に掲載

定番の人気モデル、ブローニングM1910のプラスチック・モデルガン化をいち早く手がけたのが、コクサイだった。すでにリボルバーのコクサイのイメージができつつあったが、オートマチックのブローバックもいけることを見せてくれたモデルだった。
*マガジンはマルシンのものとマガジンフォロワーの形状が違っている。オプションでフィンガーレスト付きもあった。
7発入りのカートリッジボックスはスリーブ箱形式で、カラーリングのバリエーションがあったようだ。
諸元
メーカー:コクサイ(国際産業)
名称:ブローニングM1910
主材質:耐衝撃性ABS樹脂
作動方式:スピンジェットファイヤー方式ブローバック
撃発機構:ストライカー
カートリッジ:スピンジェットファイヤーカートリッジ
使用火薬5mm コクサイキャップ
全長: 153mm
重量: 380g
口径:.380(9mmショート)
装弾数: 6発+1(薬室内)付属
発売年: 1981(昭和56)年
発売当時価格:メタルフィニッシュ ¥7,800-、シルバーモデル ¥8,200-、
フィンガーレスト付きマガジン¥1,500-、専用サイレンサー¥1,000-
※smG規格以前の模擬銃器(金属製モデルガン)は売買禁止。違反すると1年以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます。(2025年現在)
※1971年の第一次モデルガン法規制(改正銃刀法)以降に販売されためっきモデルガンであっても、経年変化等によって金色が大幅に取れたものは銀色と判断されて規制の対象となることがあります。その場合はクリアー・イエローを吹きつけるなどの処置が必要です。
※全長や重量のデータはメーカー発表によるもので、実測値ではではありません。また価格は発売当時のものです。
ブローニングM1910は警察官の銃というイメージに、スマートなスパイの銃というイメージもあったから、人気は絶大だった。MGCが1965年(昭和40年)に発売した手動式の金属製モデルガンは大ヒット。以来、1970年代になってもずっと人気は高いままだったが、1977年(昭和52年)の第二次モデルガン法規制により、金属製モデルガンの銃身分離タイプが禁じられてから、姿を消してしまっていた。
そこで、MGCによって開発されたプラスチック製モデルガンが主流になり、キャップ火薬の出現により汚れが少なく手軽に発火が楽しめるようになってくると、当然のごとく名銃ブローニングM1910の復活を望む声も各メーカーに寄せられるようになってきたという。ぜひ、最新技術で、正確な外観の快調ブローバックモデルガンをというわけだ。
その結果コクサイとマルシンで、わずか4カ月ほどの差で競作という事態になった。ボクらの仲間内では、後から発売したマルシンがあえて好評なPFCブローバック方式でぶつけたんじゃないか、なんていう憶測も飛び交い、おもしろがっていた。しかし、実際には本誌2015年6月号の「マルシン製ブローニングM1910」で書いたように、両社が人気モデルをプラスチック ブローバック化しようと狙っており、偶然にというか必然的に、ぶつかってしまったことがわかっている。
マルシンは金属製のブローニングM1910を作っていた関係もあり、それをプラスチックのPFCブローバックで復活させるということで開発を始めた。ところが、基本設計はすぐにできたものの、ブローバックがうまくいかず、発売がかなり遅れることになってしまった。
モデルガンの場合、パーツ強度の問題などもあって中小型オートマチックは快調作動させるのが難しい。キャップ火薬では5mmも7mmも火薬量は同じ。どちらを使おうともガバメントなどの大型スライドを余裕で動かすパワーが、小さなスライドやフレームに掛かってくるわけだ。うまく逃がすのか、しっかり受け止めるのか。
当時はとにかくブローバックに人気があったので、大型・小型に関わらず、いろんなオートマチックがブローバック化された。32オート、PPK/S、ベレッタM1934などの中型オートマチックも次々と発売されたが、いずれもメーカーは快調作動に苦労したようだ。
その難しいものの1つにブローニングM1910も入っていた。当時はそれがまだあまり知られていなかったが、ブローバックとキャップ火薬のパイオニアであるMGCは、手を出さずにハンマー方式の32オートにした。
コクサイは人気機種ということで、第二次モデルガン法規制の直後からモデルガン化を考えていたという。設計を手がけた岡田節雄さんによると、発売の数年前にアメリカでの実銃取材は終えていたそうだ。そしてプラスチックモデルガンが広く受け入れられるようになり、機は熟したと判断していよいよ設計に取り掛かった。
モノにもよるが、だいたい基本設計には1〜2ヵ月かかるという。リアルさと安全性の両立、そして快調作動のためのアレンジをどう取り入れるか、生産性は良いか。そのあたりが肝となる。
基本設計が終わると、その図面を元に金型製作の図面を起こし金型を製作する。これに数カ月を要するという。
金型が完成したらテストショットを行ない、細かな手直しに入る。不具合はないか、ちゃんと作動するか。コクサイの場合、ブローバックはだいたい数千発の発火テストを行なって調整したそうだ。これにおよそ6ヵ月。つまり基本設計開始からトータルで1年近く掛かることになる。
コクサイのブローニングM1910は1981年の8月くらいには発売されていたようだから、逆算すると金型が上がったのは1981年2月くらい。すると基本設計が上がったのは1980年11月か12月あたりで、取り掛かったのはさらに前の9月か10月あたりということになるのかもしれない。フレームには1981の文字があるから、これは金型完成の年を表しているのだろう。
コクサイはプラスチックでも金属の質感を出すため、このブローニングM1910から業界初となるブルーメタルフィニッシュを採用した。驚いたことに、第1号となるこのモデルでは、仕上げに関して広告等で何もアピールしていない。つまりコクサイとしてはこれがスタンダードな仕上げという気持ちだったのだろう。しかしこれが大反響を呼び、一気に知れ渡った。次作となるコルト.25からブルーメタルフィニッシュの名称が広告で見られるようになる。そしてマルシンもこの仕上げを採用し、メタルフィニッシュと呼んだことから、短い「メタルフィニッシュ」が一般的な呼称となっていく。
ただし、これが大変だったという。特にメタルフィニッシュの場合は下地の銅めっきがあり、その上に中間めっきのニッケルを施した後、仕上げに黒ニッケル(ブラックニッケル)がめっきされているそうで、相当分厚い。そのためめっきによる変形が大きいのだとか。さらにABS樹脂もブローバックの衝撃に耐えるよう硬めのものが選ばれており、これが変形しやすかったという。あまりに変形が大きいとめっきがはがれるし、ほかにもさまざまな問題が生じてくる。
そこでプラスチックパーツにはアニール処理を行なっていたという。これは金属で言うところの焼きなましで、金型から出したあと60℃くらいに熱した釜の中に入れ、2時間ほど熱するのだそうだ。これで残留応力がなくなり変形しなくなる。
製造工程では、まず金型から出したらアニール処理し、次にスライドは機械加工によってフレームとかみ合う溝をカットする。そしてその溝にベークライト材をはめて塞ぎ、めっき加工。終わったらベークライトを引き抜いて完成だ。これは、めっきしてから溝をカットすると、めっきがはがれてしまうことがあるからだという。
コクサイのブローニングM1910はこれだけの手間をかけて作られていた。実際にはシルバーモデルもメタルフィニッシュもコスト的には変わらなかったというが、メタルフィニッシュを普及させるために、あえてメタルフィニッシュを割安にして発売したという。
それもあってメタルフィニッシュは大ヒットになった。何度も書いているように、唯一の弱点は色落ちしやすく、火薬を使わなくても手で持っているうちにシルバーになってしまうこと。どうも初期のものは表面を保護するトップコート(クリアコート)という被膜がなかったようだ。撃つのならシルバーモデル。これがボクら仲間の結論だった。
ブローバックはコクサイ・オリジナルのスピンジェットファイヤー方式。後のMGCのCP-HW方式にかなり近い。違いはピストン(スピンピストン)の真ん中にガス抜きの穴が開いていること。つまり発火ガスの抜き方に違いがある。コクサイは早い時点でガスを抜く。中型オートとしてはこうしないとパワーが強すぎたのだろう。
ボクはすっかりコクサイ製ブローニングM1910のブローバックの撃ち味を忘れていた。そこでかつてリポートしたコンバットマガジン1982年1月号を読み返してみた。すると、削りカスが原因でスライドリング(トップリング)が抜けることがあったものの、削りカスをきれいに取り除けば快調作動したとあった。手が痛くなるくらいの強い反動。そして100発くらいでフレーム後部にひびが入ったと書かれていた。コクサイのブローニングM1910には金属製のサブシャーシ(インナーフレーム)が使われていなかったのだ。
それでも、快調作動だったことを思い出した。ウッズマン マッチターゲットに続き、ブローニングM1910はコクサイの快調ブローバックを証明したモデルでもあった。
右:スライドリングの溝は1つ1つ機械加工により切られている。ただ削りカスが悪さをすることがあった。
●Vintage Model-gunとは
本コーナーにおけるヴィンテージ・モデルガンは、原則的に発売されてから20年以上経過した物を対象としています。つまり2015年の現時点で1995年以前に発売されたモデルガンということになります。
Text & Photos by くろがね ゆう
協力:協力:コクサイ 岡田節雄
撮影協力:鈴木俊彦、古川重利
Gun Professionals 2015年10月号に掲載
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