2025/05/10
【Rifleman's Corner】フリーリコイル

Turk Takano
Gun Professionals 2014年12月号に掲載
以前、リポートの中でフリーリコイルについて触れた事があった。スカイダイビングのフリーフォールを“自由落下”と訳すのと同様にすれば、フリーリコイルは“自由反動”ということになる。自由反動といわれると、釈然としない読者もいるだろう。事実、フリーリコイルとはなんのことか?という質問も受けた。
ライフルの反動を抑えることをせず、後方に流す射撃法がフリーリコイルだが、リコイルの大きな銃でそれをやると、ライフルが派手に後方に動き、スコープのアイピースがシューターの眼窩付近にぶつかる場合もある。その度が過ぎれば、アイピースで額や眼の回りを切って出血する。スコープ付ライフル所持者なら、そんな経験もあるかもしれない。フリーリコイルに対して、その反対は単にホールド(グリップストックを支える、または掴む)と呼ぶ。リコイルを肩や身体で押さえる射撃法だ。フリーリコイルと言っても完全にフリーで撃つわけではない。この辺は解釈のグレーエリアとなる。


フリーリコイル射法
フリーリコイル射撃はベンチレスト(BR)射撃から生まれた射法で、既に1960年代に実践されていた。トリガーを引いてからブレットが銃口から出るまでの間、ライフルはフリーリコイル、すなわちブレットがマズルから出るまでの瞬時の間、ライフルは保持具にガイドされた中をフリーに後退する。
もう少し段階的に説明すると以下のようになる。
トリガーを引く。シアが下降、リリースされたストライカーはストライカースプリングの反発で前進、プライマーを撃つ。ブレットは燃焼膨張する発射ガスによりマズル方向に加速される。これまで何回も述べたが、ブレットがボア内を前進した瞬間からリコイルは始まる。時間的に分けるとトリガーが引かれ、ストライカー先端がプライマーに当たるまでのロックタイムは最新のボルトアクションで2ms、ブレットが動き出してマズルから飛びだすまで1msとなり計3msとなる。この間、ライフルの後退は数mmにしか過ぎない。実際のフリーリコイルはこの後、バットストックがシューターの肩に当たるまで15-25mm更に後退する。これはシューターによる違いもあるが通常この距離の範囲にある。以下の話はBRで撃つ方法でのライフル保持法であって、ハンティング、タクティカル、ポジションシューティングではすべてホールドとなる。
フリーリコイルとは呼んでも、スタイルからいくつかに分けることができる。
1) トリガーに触れたあと銃はフロント、リアバックのガイドで完全なフリー、ショルダーに当たるまで後退となる。
2) ピストルグリップを軽く握るが極力、銃に無理な力を加えない。フリーに近いが厳密には1)とは少々異なる。
3) グリップを小指、人差し指で軽く押さえながら親指でタングエリア後方を上から軽く押さえる。2)に近いが手の添えるプレシャーの配分が異なる。
その他、競技選手が独自に編み出したものもあり、一概にはいえない。トリガーを引いてブレットが銃口から飛び出す間の銃の保持をどうするかが、グルーピングに影響を及ぼす。これはあらゆる姿勢射撃にいえることだ。射撃が”巧い”、”ヘタ”かが分かれる大きな分岐点でもある。フリーリコイル射法が生まれたのは、そこに人間の介在する要素が少ないからだ。
一般論として銃が重ければその安定性に寄与する。これまで再三述べたが、軽い銃は携帯しやすいというメリットがあるものの、アキュラシーとなると当然の事ながら妥協が生まれる。この辺は銃のデザイン、使用目的を天秤にかけ、何を重要視するかで決まってくる。
既に読者にもお判りのようにフリーリコイルによる射撃はベンチからの射撃にしか存在しない。レンジに行き、銃のアキュラシーテストをするとなると、誰もが自分の銃の最高潜在能力を見極めたいに違いない。となれば口径によってはフリーリコイルで撃つことを選択する。カートリッジの威力/リコイルからくるフリーリコイルで撃てる重量の限界は? これには銃の重量とフロント&リアレストのタイプなども若干関係してくる。
一般論だが、6mmBR以下/銃重量(スコープを含めて)5kgが安全に行えるラインではないだろうか?かつて筆者もハンタークラスを撃ったが、口径.308となるとフリーリコイルは怖い。結果的にはほとんどのシューターがホールドで撃つ。
