2026/01/05
MGCモーゼルミリタリーカスタムカービン【Vintage Model-gun Collection No.33】

Gun Professionals 2014年12月号に掲載

1971年(昭和46年)の第一次モデルガン規制後、対象とならないピストルカービンが数機種作られた。モーゼルカービンもその1挺だが、実銃でもよく知られたデザインで、ライフルのような印象が強くて人気があり、その後も長く販売されることになった名銃だった。
MGC製
モーゼルミリタリー・カスタムカービン

諸元
メーカー:MGC
名称:モーゼルミリタリーカスタムカービン(M-96カービン)
主材質:亜鉛合金
発火機構:前撃針
撃発機構:シングルアクションハンマー
作動方式:手動(ロックト・ショートリコイル)
カートリッジ:ソリッドタイプ
使用火薬:平玉紙火薬
全長:760mm
銃身長:30インチ
重量:1.7kg
口径:9mm
装弾数:10発
発売年:1971(昭和46)年
発売当時価格:¥11,000-(スタンダード)、¥16,000-(デラックス)
(各カートリッジ、クリップ別売り)
オプション:カートリッジ12発¥350-、カートリッジ・クリップ1本¥250-
※smG規格合格品以外は売買禁止。違反すると1年以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます。(2012年現在)
※ 1971年の第一次モデルガン法規制(改正銃刀法)以降に販売されためっきモデルガンであっても、経年変化等によって金色が大幅に取れたものは銀色と判断されて規制の対象となることがあります。その場合はクリアー・イエローを吹きつけるなどの処置が必要です。
※全長や重量のデータはメーカー発表によるもので、実測値ではではありません。また価格は発売当時のものです。
MGCは1968(昭和43)年、アメリカへ実銃の取材に行っている。日本で観光目的の海外旅行が自由化されたのは、東京オリンピックが開催された1964年(昭和39年)のことで、年1回、外貨の持ち出しも500ドルまでという制限が付いていた。それまでは仕事か、留学などの理由がなければ許可されなかった。回数制限が外されるのが1966(昭和41)年だ。
自由化とはいえ、費用は莫大で、とうてい一般人が気軽に行けるようなものではなかった。1964年当時で大卒の初任給が21,190円だったのに対して、ハワイ8日間のパック旅行が364,000円もしたのだ。これは年収の1.5倍近い金額。
なにしろ初めて1万円札が登場したのが1958(昭和33)年のことで、ボクが初めて本物の1万円札を見たのは1960年代中ごろだったと思う。何かの借金の返済用にと3万円ほどが支払いまでの数日、家に飾ってあった気がする。
そんな1968年当時、モデルガンは売れまくっていたから、視察を兼ねて新製品の取材のため海外旅行に行くことは、それほど難しいことではなかったのだろう。
そのレポートが1968年9月発行のMGCの機関誌Visier(ビジェール:ドイツ語の照準器)に載っている。
それによると2回目のアメリカ視察旅行となっている。1回目は海外旅行が解禁された1964年で、ヨーロッパとアメリカに行っている。そのときの成果がブローニング380やガバメント、ルガーP-08などになっているわけだが、2回目の取材ではニューモデルだったS&W M19コンバットマグナム、コルトネービー、パイソン、モーゼルミリタリーなどになった。
モーゼルミリタリーが発売されたのは1970(昭和45)年で、これについては旧Gun誌2007年12月号のモデルガン銘鑑で取り上げた。発売からわずか1年で1971(昭和46)年の第一次モデルガン法規制の対象となってしまう不運なモデルだった。しかしバレル、レシーバー一体形式だったため、第二次モデルガン法規制後も生き残ることができて、長く販売されていた。
最初の法規制によりハンドガン・タイプの金属製モデルガンは銃腔を閉塞して、表面を白または黄色(特例として金色も可)にしなければならなくなったので、対象外となるピストルカービンが急きょ、たくさん作られた。これは本誌2014年4月号のこのページで触れた。
そんなわけでモーゼル(M-96)カービンも同じ様に規制対策として生まれたモデルではないかと思われたのだが、急ごしらえには見えないデザインで、無理矢理ストックを装着したものとは一線を画していた。ほかのモデルと違い、ちゃんとフォアグリップも装着されていた。
この辺を、設計を手掛けた小林太三さんに質問してみると、流通から黒くて発火ガスが抜けるため人気があるピストルカービンを作るように要請があったのだという。それでいろんなモデルがピストルカービン化されたものの、警察庁から銃身の短いものや簡単にストックが外せるものは好ましくないという指導を受けた。それでガバメントカービンなどは消え、最終的に量産モデルとして定着したバントラインカービン、P-08カービン、M-96カービンの3種が残ったという。
この3種がどれも実銃として存在するモデルを参考にしているが、その中でM-96カービンだけがフォアグリップを装着することが可能だったという。
P-08もM-96もショートリコイルするから、ピストルカービンにフォアグリップを取り付ける場合、完全にバレルをフリーフローティング状態にしなければならない。そのため実銃ではフレーム側から逆L字型のステイ(支柱)をのばしてそこに取り付けているという。そのステイにはある程度の強度が必要で、モデルガンで後付けするとそれが難しかったという。法規制前に、すでにP-08もM-96もそんな逆L字型のステイ付きカービンを試していたそうだ。P-08カービンは試作が1挺、M-96カービンは工場カスタムということで5挺くらいが作られて販売されたという。
その経験から、本誌4月号の記事で触れたように、P-08カービンでは強度が確保できないとしてフォアグリップ無しで量産化されることになった。そしてM-96カービンではステイをつけると大変手間がかかって高価になってしまうため、ロワーレシーバー(メインフレーム)のマガジンハウジング部前面にフォアグリップを直接ねじ留めする方式とした。それでもガタついたりするとバレルに当たりショートリコイルのじゃまをしてしまうので、ロワーレシーバーの側面、さらにはアッパーレシーバー(レシーバー&バレル)のレール部分まで覆ったそうだ。
デザインはもちろん実銃を参考にしており、規制対象外となるピストルカービンをでっち上げるためのオリジナルデザインではない。ただ色々と制約があって実銃とまったく同じデザインにはできなかった。
実銃のP-08とM-96カービンにはいろいろなデザインが知られているが、MGCが参考にしたと思われる実銃の写真が、前出の1968年版ビジェールに載っている。表4(裏表紙)に奇しくもP-08とM-96カービンが並んでいる。これはまるで未来を予言しているかのようだ。
モデルガンのバレル長は、バントラインカービン、P-08カービン、M-96カービンとも12インチ(約30cm)だ。これは本誌4月号の記事で触れたように1つの目安とされた数字で、警察庁からの提示だったという。口頭だったので書類は残っていない。これが後にバレル長の混乱の元になっている。
長いバレルは亜鉛合金だけでは曲がってしまうため、芯としてスチール・パイプが使われている。これに改造防止のインサート硬材をスポット溶接し亜鉛合金で包むように鋳造する。ところが、亜鉛合金が冷める際に6/1000mmほど収縮して圧力が掛かるため、0.5mm厚のパイプではつぶれてしまうらしい。1mm厚でもただのパイプだとつぶれてしまうが、インサートが入っていると都合が良いことにつぶれないのだという。しかも溶接した箇所が変形してパイプに凹みができるためここに亜鉛合金が回り込み、さらに収縮して完全にパイプと密着し抜けなくなるそうだ。まさに一石三鳥。これをさらにレシーバーに二次鋳造する。完全にバレル一体のインサート入りレシーバーができ上がる。
M-96カービンは人気があったため、デラックスモデルも作られることになった。違いはストック。ウォールナット製で、実銃用の刻印無しのゴム製リコイルパッドが装着された。スタンダードモデルはアフリカンチェリーかアジア原産の樺材だそうで、シンプルな熱硬化性樹脂製のバットプレートが付けられていた。このパターンはのちにレミントンM31-RSライアットショットガンでも使われることになる。
もっともカービンらしいデザインだったM-96カービンは、飾ってもさまになるモデルだった。そのためデラックスモデルの人気も高かった。2つの法規制を生き残り、息の長いモデルでもあった。名銃はやはり時代を超えて生き残るということなのだろう。
●Vintage Model-gunとは
本コーナーにおけるヴィンテージ・モデルガンは、原則的に発売されてから20年以上経過した物を対象としています。つまり現時点で1994年以前に発売されたモデルガンということになります。
Text & Photos by くろがね ゆう
協力:タニオ・コバ/小林太三
http://www.taniokoba.co.jp
撮影協力:ムジークおざわ
Gun Professionals 2014年12月号に掲載
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