2025/05/03
【NEW】真夜中のガンロッカー 466 ディスコネクター
ディスコネクターはセミオート火器の根幹に関わる重要なパーツだ。意外なほどいろいろな種類があって個性的でもある。ところが、そんなディスコネクターが注目されることはほとんどなく、記事で採り上げられても、さらりと流されるだけで終わってしまうことが多い。
パーツ
「銃で好きなパーツを1つ挙げるとしたら? 」こんな質問をされることは、まず無いだろうが、もし聞かれたら何と答えるだろうか。ボクの場合、あれこれ好きだし、だいたい全部気になるし、まず1つに絞れない。
バリエーションが多く、射撃の結果に大きな影響をもたらすサイトも好きだし、トリガーもハンマーも気になる。オートマチックのロッキングシステムはマニアの方がいるくらい興味深い分野だし、エキストラクターもエジェクターもとても面白い。リボルバーのラッチというかサムピースもメーカーの個性が出るし、グリップもこだわりたいパーツだ。安全機構であるオートマチックのファイアリングピンロックとか、リボルバーのハンマーブロックとか、セイフティコネクターやトランスファーバーなども挙げたい。3点射機構はボクの頭では理解するのが難しいが、ある時期においては注目された機構だし、マニュアルセイフティも捨てがたく、セミ/フルを切り替えるセレクターも魅力的‥‥
で、考えて考えて、ふと思いついたのがディスコネクターだった。オートマチックにしかないが、撃発機構の連結(コネクト)を断つ(ディス=離れて)もの。独立したパーツじゃないものもあるし、1つのパーツで独特の形状のものもあるし、意外とバリエーションがある。そして何より、このパーツというか機構がなければ、オートマチックはフルオートになってしまう。ちゃんとコントロールするためにはディスコネクターが欠かせない。
とても重要だし、オートマチックの根幹に関わる重要なパーツなのではないか。フルオートマチックも、セミオートマチックがあった上でのフルオートマチックだろう。まあサブマシンガンやマシンガンはフル命で、セミは必要ないかもしれないが。
そんなわけで、銃で好きなパーツを1つ挙げるとしたら、ボクはディスコネクターにしたい。
ただ、ディスコネクターに興味を持っている人はあまり多くないようで、実銃リポートでもあえて取り上げられることが少ない。オートマチックではありふれたパーツ、機構であって、あるのが当たり前。わざわざ取り上げて解説することもないということなのだろう。ロック機構やセイフティは詳しく解説されていても、ディスコネクターもしくはディスコネクト機構は、さらりと流されることが多い。ディスコネクター好きのボクとしてはとても残念なことだ。
といっても、ボクもモデルガンにハマりだした頃は、ディスコネクターのことに注意を払ったことなどなく、それどころかディスコネクターのことをまったく知らなかった。実はそのおかげで痛い目に遭っている。そのことで、ディスコネクターがより強く心に焼き付けられたのかもしれない。


ブローバック
1970年、MGCから最初のハンドガンブローバック、ガバメント9mm BLKが発売された。翌1971年にはベレッタM-1934 BLKとSW/44コンバットオートも発売されている。しかし価格はスタンダードモデル(手動式)の2~3倍もしたので、おいそれとは手が出せなかった。それに、ブローバックモデルは当初、住民票を提出して会員登録した人だけに販売されたので、誰もが買えたわけではなかった。
そんなことから、特に地方では販売が始まったことを知らない人もいたし、知っていても、現物を見たことがないという人もたくさんいた。
そこへ1971年第1次モデルガン法規制が施行された。これにより金属製ハンドガンは白か黄色(特例として金色も可)にして、銃口を閉塞しなければならなくなった。すると珍事が発生した。
ボクが持っていたPPKはMGCのスライドアクションのコピー版。なにより安かったからだが、チャンバー内にカートリッジが装填されるタイプで、エキストラクターも装備していた。その銃腔に溶かした鉛を流し込んで閉塞し、金色に塗って合法品としたあと、多めの紙火薬を詰めて発火させたところ、最初の1発目を撃った途端、ブローバックしてマシンガンのように5発の全カートリッジが一瞬にしてはじき出された。チャンバー内のガス圧が高まり、カートリッジを押しもどしてしまったというわけだ。原理的にはナカタのMP40と一緒。
ボクはブローバックの衝撃に驚いた。そしてちゃんとしたブローバックモデルを手に入れるべく、最も安かったMGCのベレッタM-1934 BLKについて調べ始めた。
そこでわかったのは、ブローバックにはディスコネクター(もしくはディスコネクト機構)が重要な役割を果たし、なければフルオートになってしまうということ。かの天才銃器デザイナー、ジョン・モーゼス・ブラウニングも、初めてのオートマチックピストルを開発中に、新聞記者たちが見守る中の試射テストで、ディスコネクターがうまく働かずフルオートになってしまったことがあるという(1972年ころ発行されたMGCニュースのコラム)。
MGCが1966年に発売したスタンダードのベレッタM-1934には、ディスコネクターがあった。というか、正確には実銃同様トリガーバーの一部が伸びていてディスコネクターとして働くようになっていた。設計した小林太三さんは、いずれブローバック化することを想定して、ディスコネクト機構をそのまま再現したのだという。
MGCのベレッタM-1934はBLKモデルが発売されると、手動式のスタンダードモデルはなくなってしまった。ところが、そのコピー版とも呼べるモデルがハドソンから発売されていて、パーツの互換性があるらしいこともわかった。そこでハドソンのスタンダードをベースに、MGCからデトネーターとカートリッジ、バッファースプリングだけを購入して、BLKモデルをでっち上げることにした。
計画は上手くいき、格安でBLKモデルが手に入った。ちゃんとブローバック作動してくれたが、所詮はでっちあげモデル。20~30発撃ったら壊れてしまった。
そこで次にボクはスタンダードのガバメントをベースに、ガバメント9mm BLKもでっちあげることにした。
ところが、チャレンジを始めてみると、スタンダードにはないディスコネクターを取り付けるには、フレームにフライスによる加工が必要だった。ボクはハンドドリルと金やすりしか持っていない上に、知識も技術もなく、お手上げだった。
どうしても、ベレッタとは桁違いであろう大型拳銃ガバメントの撃ち味が知りたいボクは、連発を諦め、単発でチャレンジすることにした。ロッキングラグのないストレートブローバック用バレル、リコイルスプリング、デトネーターなどを単品で購入、スタンダードに組み込んだ。単発なのでマガジンはいらない。チャンバーに直接手で詰めれば良い。オープンストップはできなくなるが、予算も浮く。
徐々にパーツを揃え、1年ほど掛けて完成した貧乏人のブローバックは、見事に作動した。大感動の強烈反動だった。手首をくじくかと思うくらい。その後、友人たちも呼んで試射会をやったりしたが、やはりでっちあげ、すぐに壊れて使い物にならなくなった。
それでも良い経験、良い勉強にはなった。ディスコネクターは偉大なパーツだ。そしてでっちあげものはダメ、高くても純正、本物を手に入れなければ。ボクはちょっとだけレベルが上がった。
以来、ハンドガンでも長物でも、オートマチックタイプのメカニズムを見たり、パーツ表を見たりすると、ついついディスコネクターを探してしまう。



ハンドガン
基本的にオートマチックハンドガンはセミオートで撃つものだから、前述のジョン・モーゼス・ブラウニングみたいにならないためにも、ディスコネクターが重要だ。
とはいえ、ハンドガンはスペースが限られているため、ディスコネクトの方法も限られているようだ。たいていのハンドガンはグリップ内にマガジンを設けていることが多いので、トリガーバーが長くなりがちだから、それを利用していることが多いように思う。
おそらく最も多いのは、トリガーバーをスライドで直接か、もしくはディスコネクター(コネクター)を介して押し下げ、シアーやトリガーバーをフリーにしてしまう方式。
このパターンで、直接トリガーバーを押し下げるものだと、ベレッタM1934、ベレッタ92、PPK、P38、FN M1910、P226、スタームルガースタンダードシリーズやPシリーズなど、たくさんある。
ディスコネクターを介するものだと、S&Wのモデル39/59やH&K P7などがある。1911オートはディスコネクターが押し下げられてトリガーバーとシアーのコネクトが切れるが、同じタイプに分類していいだろう。
グロックはコネクターというパーツをスライドで横にズラして、シアーを兼ねるトリガーバーをリセットするから、これもまた押し下げタイプの変形と考えてよさそうだ。
そのアレンジ版がMGCの初代樹脂製ガバメント(GM2)から採用されたディスコネクター。小林太三さんの設計で、スライドなどの動きに関係なく、ハンマーによって起動される。倒れたハンマーがディスコネクターを押し、そのディスコネクターがトリガーバーを押し下げてシアーをフリーにする。
これは、樹脂製32オートでは、ディスコネクターさえも廃して、ハンマーストラットに設けた出っ張りでハンマーが倒れたときにトリガーバーを押し下げる形式にして採用されている。
また樹脂製のルガーP-08では、倒れたハンマーが直接トリガーバーを持ち上げてディスコネクトする形式になっている。非常に低コストだが、実銃でこのハンマー方式を採用したものがあるかどうか。とても気になるところではある。
実銃に戻ろう。ユニークなのはハイパワー。トリガーバーに相当するシアーレバーというパーツをスライド側に設けることで、スライドが後退するとトリガーとのコネクトが断たれるようにしている。逆転の発想というか、コロンブスの卵的発想。メカ的に実に面白い。ただ、この方式を採用した例はあまりないようで、課題がないわけではないということだろう。
ショートリコイルを利用するものもあって、P08はトリガーレバーとシアーバーがショートリコイルによって離れる仕組みで、南部式や十四年式、九四式などの日本の軍用自動拳銃はショートリコイルによってトリガー上のトリガーシアーやディスコネクターがトリガーバーから外れる。これは残念ながら、疑似ショートリコイルのブローバックモデルガンで再現するのは難しい。
モーゼルミリタリー(C96)は、初期型のみが引き落とし式で、それ以降はショートリコイルによってシアーが押されトリガーとのコネクトを断つようになっている。確かハドソンはモーゼルM1930のブローバックモデルで、初期型のモーゼルのように引き落とし式を採用していたと思う。
この引き落とし式というのはボクが勝手にそう呼んでいるのだが、ダブルアクションのハンマーのように、トリガーを引いていくとある点で自動的にコネクトがパチンと切れる方式。パーツ点数が少なくて済むので、小林太三さんはスターリングMk-V、SIG SP47/8、金属時代のM16など、MGCのモデルガンでよく使われていた印象がある。
モデルガンの引き落とし式の場合は精度がそれほど高くないので、ゆっくりトリガーを絞っていくとセミオートがフルオートになってしまうこともあった。それでボクはモデルガン独自の構造なのかと思っていたら、モーゼルミリタリーの昔から使われていてビックリ。
しかも、最近でもP320の初期型に使われていた。精度が高ければ実銃でも問題ないということか。ところがアメリカ軍の制式軍用拳銃M17/18に採用された2017年に、特定の角度で落下させた時の暴発の危険性が指摘され、SIGはすぐさま自主アップグレードプログラムを実施した。関連パーツの軽量化と共に、機械式ディスコネクター方式に変更している。シンプルな引き落とし式は実銃には適さないのだろうか。ちなみに採用されたディスコネクターはトリガーバー押し下げタイプだ。




長物
ディスコネクト機構は、長物とハンドガンで違った傾向が見られる。長物の場合は、比較的メカ部分に広いスペースを取りやすく、ハンマー方式でもハンマーが銃内部に収められていることが多いため、ハンマー周りにディスコネクト機構を設けることが多い。
またアサルトライフルの場合はフルオート機構も設ける必要があり、セレクターによってそれを切り替えるため複雑化する傾向がある。そこにさらに3点射機能などが加わればレベル違いの複雑さ。ほとんどボクには理解不能だ。
ディスコネクト機能というのは、フルオートにならないようにするための仕掛けなので、ここではフルオートは考えないことにする。
ボクの印象では、長物で多いのは、ハンマーに通常のコッキングに使うフックと、自動で働くシアーなどが引っかかるフックと、2つ設けているタイプ。ボクは勝手にダブルフック系と名付けている。
1つのフックをトリガーで外して撃発したら、もう1つのフックが自動的に掛かってハンマーを止める。トリガーを戻すと最初のフックが掛かり、自動で掛かっていたフックが外れる仕掛けだ。
古くはアメリカ軍の制式軍用小銃のM1ガーランドがそうだし、AKシリーズ、AR15/M16シリーズ、G3/MP5シリーズ、SIG SG550シリーズ、シュタイアAUG、G36シリーズなどがこの形式を採用している。
ハンマー頭部に2つのフックがあったり(M1ガーランドやAKなど)、中間部分と回転基部にフックがあったり(M16など)、回転基部に2つのフックがあったり(G36など)と、フックの位置にバリエーションはあるが、基本的な考え方は同じだ。
まったく違う考え方なのが、M1カービンやFALなどに見られるタイプ。ハンマーをコッキングするシアーがトリガーに載っていて、トリガーを引いてシアーがハンマーから外れた瞬間、前へスライドしてトリガーとディスコネクトするタイプ。ボクは勝手にフローティング系と呼んでいる。
これは部品点数が少なく、シンプルな構成なのが特徴。おそらく故障する確率も低いのではないかと思う。
サブマシンガンの場合、セミオートで撃つことは少ないと思うが、よく見られるディスコネクト機構は、トリガーとシアーの間に1つのパーツを設けておいて、ボルトが前進するときにこれを蹴飛ばして、シアーとのコネクトを断ってフリーにするというもの。トンプソンやステン、イングラムなどがそうだ。モデルガンでも再現しやすいからか、よく使われている。
一方、ベレッタM12などは引き落とし式で、MGCのブローバックモデルガン、スターリングMk-Vと同じでちょっと驚かされた。実銃のスターリングMk IVやUZIは同じ引き落とし式でも、強制的にディスコネクトさせるディスコネクターを備えた引き落とし式になっていて、これはこれで納得だった。



ディスコネクターはいろんなやり方があって、しかもそこまで複雑じゃなくボクにも理解できるレベル。オートマチックの必需品で、古い銃から、最新モデルの理解にまで役立つ。注目している人は少ないようだけれど、意外と奥が深くて面白い世界なので、もっと多くの人にディスコネクターの沼にハマって欲しい。
Text, Photos and illustrations by くろがね ゆう
Gun Pro Web 2025年6月号
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