2025/05/02
【NEW】Time Warp 1986 ポイント UZI ピストル
Time Warp 1986 POINT UZI Pistol
遅れてやってきたカート式エアコッキング
池上ヒロシ
あきゅらぼ www.accu-labo.com
協力:サタデーナイトスペシャル https://ameblo.jp/saturdaynightspecial/
ガスガンやBV式フルオートが普及し始めた1986年、マスダヤから前年に分離独立したポイントはUZIピストルを製品化した。時代はまだUZI全盛期であり、その機種選択は間違っていない。しかし、カート式エアコッキングはすでに過去のものとなりつつあった。

全長: 244mm
重量: 417g
装弾数:18発
発射方式:カート式エアコッキング
発売:1986年
発売当時の価格:¥5,800
かつて、マスダヤというブランドのメーカーがあった。まだエアソフトガンという言葉が生まれていなかった時代、弾を発射できる玩具銃というと実銃とはかけ離れたオモチャっぽいものばかりだったころに、比較的銃っぽい形をしていて子供向けのミニサイズではなくちゃんと大きくて、ストックの分解とか結合とかができる「スポーツ向けのエアースポーツ銃」をいくつも販売していた。サンダーボルトやボルト888(サンパチ)といったモデルが雑誌広告の目立つところに掲載されていた。値段もけっこう高かったこともあり、70年代から80年代初めのガン好きな子どもたちにとっては憧れの存在だった。
株式会社ポイントは、そのマスダヤのエアーガン部門が1985(昭和60)年12月に独立してできたメーカーだ。これについては増田屋コーポレーション(1979年以降の社名)の沿革に明記されている。
まずは先述のマスダヤ時代の製品を6mmBB弾仕様としたものを販売、そしてメーカーとしては初めてとなる“実銃をモデルとしたエアソフトガン”として発表されたのが、今回紹介しているUZIピストルだ。
発売は1986年。後にサバイバルゲームの第一次ブームと呼ばれることになる時期の真っ只中にあたる。ハンドガンの分野では2,000円足らずで金属製のインナーバレルを備えて高い命中精度を発揮するエアコッキングハンドガンが大人気となり、サブマシンガンの分野ではケースレス多弾倉のエアコッキングをポンプアクションで連射するのが一般的だった時代から、安価で扱いやすいガスフルオートが登場して一気にサバイバルゲームのフィールドがフルオート一色へと塗り替わり始めた時代だ。
そんな時代に発売されたこのUZIピストルは、なんとカート式のエアコッキングであった。インナーバレルもプラスチック製だ。確かにほんのちょっと前、1980年代のはじめくらいまでだったらそういった仕様の新製品も多かったが、エアソフトガン界が激動の時期を迎えていた1986年には、「なんで、いまさら?」というイメージしかなかった、というのが正直なところだ。
実際に当時の雑誌記事を見ても、「エアソフトガンの排莢シーン(を撮影するの)は久々だ」みたいな、少々戸惑い気味のコメントが付いていたりする。

右:実銃どおりの位置にあるセイフティレバーはちゃんと機能し、「S」に合わせるとトリガーがロックされる。この個体を動かすと壊れそうなので、試すわけにはいかないと思い、コッキングしていないので判らないが、当時の記事を見るとトリガープルはかなり悪い(記事内では「妙だ」と表現されていた)。グリップがマガジンハウジングを兼ねたデザインになっているUZIの場合、トリガーから機関部までの距離が離れるため、トリガーの動きは長いパーツを介してシアに伝わる形になる。そういった事情でトリガープルは構造上どうしてもダルいものになりがちだ。


エアソフトガンとしての性能や使い勝手はどうだったか? 正直言って、あまり良くない。超小型のサブマシンガン(ないしはマシンピストル)をエアーコッキングとして製品化したものは当時すでにいくつか存在していたが、乱暴な扱い方をされることが予想されるコッキングハンドルは(実銃のものよりもずっと)大型化した上で強化したものになっているのが当たり前だった。
しかしポイントUZIのコッキングノブの大きさは実銃と対して変わらず、指でつまめるくらいに小さい。しかも固定に使われているのは細いネジ一本だけで、特に金属の補強が入っているわけでもない。その小さくて華奢なコッキングノブを“ガッシッ!”と掴んで勢いをつけて思いっきり引かなければ、コッキングとカートのイジェクトを同時に行なえないのだ。こんなチャチなパーツにそんな重荷を背負わせるなんて、無茶な話にしか思えない。


右:マガジンキャッチの機能や操作方法も基本的に実銃通り。グリップセイフティは、いちおう別部品がはめ込まれていて一見すると可動しそうに見えるけれど、ただそこに入っているだけで、ほとんど動かないし機能もしない。
発売当時の記事を読むと、「一生懸命になって褒める場所を探そうとしている」という涙ぐましい努力が透けて見えるようだ。実射パートの半分は、「実はマルゼンのカート式ハンドガンのカートリッジが流用できるんだぜ」という、本体性能とは全く関係のない話題でお茶を濁している。結論めいた部分も「ユニークな製品だ」「シューティングやサバイバルゲームに向くかどうかは使ってみないとわからない」「1つコレクションに加えたくなるエアソフトガンである」といった“どう頑張っても褒めるところが見つかりませんでした”という降参宣言みたいな締めで終わっている。
この後のポイントはどういう方向に進んだのか? 流石にカート式のエアコッキングにこだわるなんていう勝ち筋の見えないやり方はしなかった。ガスのハンドガン(まだブローバック時代がくる前なので、当然固定スライドだ)を低価格路線でいくつか発売、1989年にはガスブローバックのPPKを発売したが、そのままガスブロ路線に向かうこともなく、1992年にはリアル路線に振ったエアコッキングのルガーP08、またカート式ガスレバーアクションのウィンチェスターM1892カービンを登場させるなど、意外と多彩なエアソフトガンを製品化している。
しかし、ヒット作には全く恵まれず、90年代前半にはこの業界から撤退したようだ。

実銃のUZIピストルは1984年に登場なので、ポイントはかなり早くに動いたと思う。しかし、各社から次々とUZI系が登場していたため、その中に埋没してしまったように感じる。
さて、それではポイントUZIとは、いったいどういう製品だったのだろうか? エアソフトガン界からカート式のエアコッキングが消滅しようとしている年代に、その最後を飾る形で発売された製品がポイントUZIだ……というような締め方ができれば美しかったのだけれど、エアソフトガン発売年表を見てみると、そんなふうに断言してしまうのは厳しいように思えてくる。主流とは外れたところではあるものの、カート式のエアソフトガン(エアコッキングを含む)というのは、時折現れてはそれなりの評判を受けて継続して製造販売されている様子がうかがえるからだ。
結局のところ、「時代の趨勢をちょっと読み間違えた、ちょっと残念な製品」というのが、もっとも妥当な評価になってしまうだろう――身も蓋もない話になってしまうけれど。
但し、あの時代は、エアソフトガンがどんどん売れていた。微妙な製品であっても、けっこう売れたようだ。だとするとポイントのUZIピストルもそれなりに売れたのかもしれない。

*パーツ名称は一般的な名称をベースに独自につけたものを記載してあります。

右:コッキングノブを引くとボルト(シリンダー)が後退、シリンダー内部にあるピストンも一緒に後退し、メインスプリングが圧縮される。

右:ノブを前進させると、ボルト先端下部がマガジンの一番上にあるカートを拾い上げ、チェンバー内に送り込む。

右:コッキングノブを力いっぱい勢いよく引くと、メインスプリングが圧縮されるのと同時にカートがチェンバーから引きずり出され、エジェクションポートから外に排出される。
Text & illustration by 池上ヒロシ
Gun Pro Web 2025年6月号
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