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2016年に発足し、テキサス州プラノに拠点を置くシャドウシステムズはグロックGen3のクローンを製造するメーカーだ。スライド、バレル、トリガーや内部部品を可能な限り自社で製造することで、品質を安定させつつ、カスタムグロックを普及価格で実現している点が高く評価されている。
▲ Image courtesy of Shadow Systems
このたび、カリフォルニア コンプライアントモデルを新たに開発し、同州の落下テストをパスした事で販売許可を取得した。許可を得たのはG19サイズのMR920、G45サイズのXR920、そしてG17にコンペンセイターを備えたDR920Pの3モデル。
DR920P
スライドは17-4ステンレススチール製でブラックナイトライド仕上げ。軽量化のためのカット加工、前後の大きく傾斜したセレーション、そしてオプティックレディ仕様と、現在のトレンドをしっかり押さえたデザインとなっている。フレームのテクスチャーは本家よりもきめ細かく、バックストラップ形状もGen5ほどの強いカーブではないため、より自然なグリップが可能だ。フラットフェイストリガーのプルは約2.2㎏に調整されている。
▲ローデッドチェンバーインジケータとマガジンセイフティ
申請に必須とされるローデッドチェンバーインジケータはスライド上面に設けられている。特に興味深かったのがグロックのセイフアクションの中に、どのようにマガジン未挿入時に発射機構をブロックするマガジンセイフティ機構を導入したかという点だ。
分解撮影はできなかったが、スライドを引くとエジェクションポートから見える大型のレバーがトリガーの作動をブロックしている。マガジンを挿入すると、これが押し込まれてセイフティが解除される仕組み。実にうまいこと追加したものだ。既に特許も取得しているという。
DR920PはG17サイズをベースに4.48インチバレルの先端にコンペンセイターを追加することで全長がG34と同等になるよう設計されており、G34 Gen4用ホルスターとの互換性がある。コンペンセイターはバレル先端のネジではなく、側面からのピン止めによって固定する方式を採用しており、これによりカリフォルニア州のアサルトウェポン規制には抵触しない。フロントサイトはコンペンセイター側に備えられており、トラッキングがしやすい設計となっている。
同社が特許を取得したダットサイトのマウントシステムはかなり興味深い。一般的な各社のフットプリントに対応するアダプタープレートを介してスライドに固定する方法では、ネジ山がプレートの厚み分しか確保できず、固定が不安定になる問題がある。
だからといってプレートを厚くすると、今度はダットサイトの取り付け位置が高くなってしまう。
これに対し、シャドウシステムズでは、まずダットサイト主要各社の全てのフットプリントに対応できるよう、広く加工したオプティックカットを設け、その上で直接マウンティングスクリューがダットサイト本体を固定する設計を採用。これによりプレート方式よりもスクリューが深くスライドに挿入され、固定が非常に強固となる。スクリュー穴も幅の広いトリジコンRMR/SRO以外は同一のスクリュー穴を共用する合理的な設計になっている。
そのスクリュー穴の位置を基点に、ダットサイト本体の位置を前後にスライドさせて位置決めするわけだが、今度はオプティックカットを広く加工した分、前後の隙間は当然大きくなり、ダットサイト本体の固定が甘くなりやすい。これでは射撃によって生じる衝撃でズレやすく、同時にスクリューへの負担も大きくなるという問題が生まれる。
そこで本体の前後に柔軟な樹脂製スペーサー(抜け出ないようにスライドが側の凹みに入る出っ張りが付いている)を取り付けることで樹脂の柔軟性を活かしてダットサイト本体の固定をタイトにしてズレを防いでいる。スクリューは各社のダットサイトに合わせて4種類、スペーサーは5種類(そのうちの1つは小型なシールドRMScやホロサン507K用で、これのみプレート型になっている)が用意されている。
そして、もう1つの改良点としてユニークなのはスクリュー穴の位置がスライドの両側面ギリギリにあるトリジコンRMR/SROに関するものだ。グロック本来の設計では、ちょうどスクリュー穴の位置にスライド内部を長く貫通するエキストラクターデプレッサープランジャーが通っているため、スクリューを短くカットしないとプランジャーを押し付けて動かなくなってしまい、エキストラクターが作動しなくなるという問題が生じる。これでは折角のダイレクトな固定方法の強みが損なわれてしまうわけだ。そこでシャドウシステムズではプランジャーそのものの設計を変更し、短縮することでネジ穴との干渉を防ぐ改良を施している。
7mm Backcountry
2025年1月7日、フェデラルアムニッションは全く新しいセンターファイアラアイフルカートリッジ7mm Backcountryを発表した。
これは、従来のブラスケース(真鍮薬莢)の代わりに、新開発のPeak Alloyケースを使用し、従来よりも高い圧力で銃弾を飛ばすことができるというものだ。そのMax Pressureは80,000psiとなっている(.30-06は60,000psi, .300Win Magで64,000psi)。
Federal AmmunitionのCEOであるJason Vanderbrink氏は、このカートリッジについて、黒色火薬から無煙火薬に移行したのと同等の進化だと語っている。
それが起こった19世紀末期に銃の世界は大改革が起こったわけで、さすがにそれと同等というのは、かなり大袈裟だ。しかし、センターファイア弾薬の分野は基本的な技術革新が約145年にわたって無かったことを思えば、そう言いたくなる気持ちもわからないではない。
特許取得済みのPeak Alloyについての詳細は不明だが、High-Strength Steel Alloy(高強度鋼合金)であり、従来から一部で使用されていたスチール製ケースとは異なり、真鍮のようなductile(延性)がある。これによって撃発時に瞬間的に膨らみ、チェンバーに密着、ガス漏れを防いで、初速アップに貢献する。
ようするに、既存の真鍮ケースと同様の働きをしつつ、真鍮より高い圧力に耐える強度を持っているというわけだ。フェデラルによれば、20インチのショートバレルから7mm口径の170grブレットを撃ち、3,000fps超えの初速を引き出せるという。
▲発売予定の7mm Backcountryのバリスティックデータの表示パネルだ。ほとんどが初速3,000fps越えとなっている。
もちろんそれは、Peak Alloyケースだけで実現しているわけではなく、高圧を発生させるための特別な発射火薬(Propellant)を用いた結果であろう。その火薬は燃焼時に既存の火薬とは異なる圧力曲線を描くということだ。
高圧、高初速と聞けば、リコイルもそれに比例して大きくなると思われるが、フェデラルによれば、7 mm Backcountryのリコイルは既存の7 mm Rem Mag、7 mm PRC、300 Win Magと同等だという。
ハンドローダーの立場から気になるのは、このPeak Alloyケースはリサイジングが可能かということだ。これについても“できる”という情報がある。但し、従来と同じデザインのリローディングダイではなくなるという説もあり、この部分についても詳細は不明だ。
▲左:発売予定の各カートリッジ。Peak Alloyケースボディがシルバーで真鍮色ではない。
右:Peak Alloyケースの製造工程。シルバーボディはプレーティング(メッキ)によるものだが、それ以前の段階でも白っぽい色だ。
▲7mm Backcountryの中でもフラッグシップとなるのが、Ternila Ascentで、155gr弾の場合、市販の7mm弾の中では最速の3,300fps(24インチバレル)を叩き出す。これは170gr弾の破壊力を示すバリスティックゼラチンのテストサンプルから型取りした模型。
7mm Backcountryはケースヘッドが0.472インチで、これは.308Winとほぼ同じだ。すなわちスタンダードのボルトヘッドで撃てる。またカートリッジが太くならないので、装弾数にも影響しない。但し、ケース長が2.417インチであるため、ショートアクションでの使用は不可だ。
80,000psiのハイプレッシャーアモといえばSIG SAUERの.277 Furyと同じだ。真鍮とスチールのハイブリットアモである.277 Furyは、その軍用仕様である6.8×51mm弾を使用する新型ライフルXM7とマシンガンXM250のアメリカ軍への配備が始まっている。その民間仕様である.277 Furyは市販が開始されたものの、これに対応したライフルの供給はSIG SAUERの他ごく少数に留まる。将来的な普及が進む可能性はあるものの、市場へ浸透する気配はまだない。
それに比べ、7mm Backcountryは発表直後であるにもかかわらず、多くのライフルメーカーが対応モデルをSHOT SHOWに展示していた。フェデラルは弾薬メーカーであり、これをガンメーカーが製品化して貰わなければ、普及させることができない。そのため、事前に情報とサンプルを多くのメーカーに提示し、対応モデルの製品化を促した。ガンメーカーとしても、銃本体に特別な改良を加える必要がないため、容易に動けたのだと推測する。もちろん、80,000psiに安全に対応できるかのテストはじゅうぶんに実施した上でのことだ。
2025年3月の時点でフェデラルによると既に80機種以上のライフルが、7mm Backcountry対応としてリリースされている。
今回、SHOT SHOWに7mm Backcountry対応モデルを展示したのは、ガイズリー、クリステンセン、サベージ、ウェザビー、MDT、ホライズン、Seekinsプレシジョン、ベルガラなどだ。その他、プルーフリサーチなど数社が対応モデルを発表している。これは今後も増えていくことは間違いない。
7mm Backcountryはあくまでもハンティングカートリッジという位置付けだが、このPeak Alloyケースは当然、他の口径にも転用できるわけで、ショートバレルのコンパクト ロングレンジスナイパーライフルを作り出したり、サプレッサーを装着しても従来と同等の全長に収めることも可能となるなど、その発展性はかなり大きいと思われる。
2004年にマッチ用のトリガーユニットの製造から始まったガイズリーのガンビジネスは、アメリカ軍へのスーパーセレクトファイア(SSF)トリガーの納入をきっかけに拡大、その後各種カスタムパーツやハンドガードを製造するようになり、現在ではAR系コンプリートライフルを組み上げて供給するメーカーにまで成長している。そんなガイズリーが今年、ボルトアクションを発表した。
ボルトアクションライフルを作ることは難しいことではない。とりあえず…ならば。現在市場にあるボルトアクションライフルの多くがレミントン700とフットプリント等で互換性のあるアクションをとなっている。そうすることにより、トリガーやスコープベース、マガジンハウジング、そしてストック等について市場に大量に存在する700対応パーツが使用できるようになる。ということは、ライフルを製造しようとするメーカーは、アクション部分のレシーバーとボルトのみを作れば、あとはすべて社外品を組み合わせるだけで銃を完成させることが可能になる。銃器製造技術を持つメーカーなら、どこでも700クローンライフルを製造できるわけだ。形だけならば…
ボルトアクションの製造はシンプルでありながら、その奥は深い。本当に“当たる”アクションの製造は容易なことではないからだ。それゆえ、市場にはたくさんのカスタムアクションメーカーが存在し、独自のノウハウを持ちながら、しのぎを削っている。
ガイズリーはAR系ライフルについては、多くの経験を持つメーカーだ。しかし、”当たるボルトアクション”の製造には全く違う技術とノウハウ必要となる。先行する他社と差別化するには、何をするべきかをまず知らなければならない。
ガイズリーはMDTのPRSシューターであるKeith Bakerと、ベンチレストシューターのJeff Peinhardtに”当たって信頼性のあるボルトアクションライフル”を作るためにやるべきことを学んだ。そして作り上げたのが、このキングハンターだ。
King Hunter
キングハンターはレミントン700 ロングアクションフットプリントを採用、ボルトはフローティング ボルトヘッドとしている。またボルトに独自のNanoweapon(ナノウエポン)コーティングを施したことで、その動きは驚くほどスムーズだ。またローラーガイド付きのファイアングピンを採用、トリガーはガイズリーのSuper 700 2ステージトリガーを装着、これにガイズリーのステンレス製カットライフルド 20インチバレル(ライフリングピッチは1:8”を装着した。
このバレルドアクションを、Manners(マナーズ)のLong Range Hunter (LRH)カーボンファイバーストックに載せている。マガジンはAICSパターンで、キングハンターの重量は、スコープなしで3,628g と驚くほど軽量だ。
そしてこの銃は、フェデラルの新しい7mm Backcountryを採用している。おそらくキングハンターは今年のSHOT SHOWに展示されたボルトアクションライフルの中で、一番注目すべき存在だといえるだろう。
しかし、ボルトアクションライフルの良し悪しの基準はたったの2つ、当たるか、当たらないか、信頼性があるか、無いかだ。当たるライフルの最低条件は1/2MOA以下をコンスタントに叩き出すこと。これが実現してれば、ガイズリーはボルトアクションライフルメーカーとして、いきなり第一級と言われるポジションを手に入れることになる。
このガイズリー キングハンターのMSRPは$3,800で、まもなく市場に並ぶ予定だ。
2009年よりARプラットフォームのDDM4の製造を開始し、大きく成長してきたのが、ジョージア州のダニエルディフェンスだ。同社は2024年に、初の純然たるハンドガンとしてダニエル H9を発表し、大きく注目された。この銃はかつてのハドソンH9を大幅に手直ししたモデルだったからだ。
ハドソンH9は、かつてテキサス州にあったハドソンマニュファクチャリング社の製品で、ダストカバーを下方向に広げ、リコイルスプリングアッセンブリーを低く配置するという独特なデザインを採用、2017年に公開されるや否や大変な注目を集めた。当時、ハドソンはそのレイアウトにより、リコイルがより直線的にシューターの腕に届き、マズルライズを低く抑えることができると主張していた。
口径は9mm×19で、15連マガジンを使用し、全体的なデザインは1911をストライカーファイアード化したような印象であった。当時はほとんどのハンドガンがポリマーフレームとなっていた中、スチールフレームを用いつつもスリムで比較的軽量であることも注目された理由のひとつだっただろう。さらにモジュラー構造を採用、独特なトリガーメカニズムなど、その完成度は高いと当初評価された。
そこまでは良かったのだが、その後のビジネスは思うように進まなかった。1年後の2018年には軽量化を求める声に応じて、アルミ合金フレームのH9Aを発表したのだが、この軽量化への対応が同社のビジネスを大きく失速させる原因のひとつとなった。
H9に注目した多くの人々は、最初から軽量なH9Aを本命としていたらしい。少なくともビジネスが安定軌道に乗るまでもう少し軽量モデルの発表を控えるか、あるいは最初からアルミ合金フレームで展開していれば、結果は違っていたかもしれない。
H9に興味を持った人々は多かったものの、H9Aの出荷を待ち購入を控えたのか、H9は思うように売れなかった。また待望の軽量化モデルもなぜか大人気とはならず、ハドソンマニュファクチャリング社のビジネスはけっして順調ではなかった。そして2018年8月にはパーツ製造の下請け会社から不払いを理由に訴訟を起こされ、2019年3月14日にテキサス西部破産裁判所に破産を申請して、ハドソンマニュファクチャリングがあっけなく消滅した。
そんなH9であったが、銃としては魅力があり、ビジネスの進め方次第では成功の可能性は十分あった。そこで関連特許を購入し、開発に約5年の月日をかけてH9の復活を試みたのがダニエルディフェンスだ。
DANIEL H9
▲今回はグレー、ブロンズ、FDE、Mil Spec+、グリーンなど多くのカラーバリエーションの試作品が展示された。
Daniel H9は単なる再生産ではなく、オリジナルのH9ユーザーからのフィードバックを集め、実際にはパーツの互換性がほぼ無いほど大幅に改良されている。リコイルスプリングを著しく低く配置するデザインは踏襲していない。ダニエルディフェンスは、試作モデルで100万発以上のテスト射撃を行ない、十分な耐久性を確認した後、量産へと移行した。
スライドは4340アーロイスチールをCNC加工したものであり、DLCコーティングが施され、フレーム素材にはやはりハドソンの失敗の轍を踏まぬよう7075アルミニウム(アナダイズ処理)を採用して軽量化、G10グリップを装着している。さらに、より高いリコイル軽減効果を得るため、デュアルリコイルスプリングシステムを採用。トリガーメカも改良して、より均一なトリガープルを実現している。
グリップ部分についても、一部ユーザーからスライドバイトの報告があったことから、ビーバーテイル周辺を再設計した。加えてバックストラップ交換機能やオプティックレディ機能も加え、より実用性の高いモデルへと進化させている。
全長195mm、全高130mm、4.28インチバレル、スライド幅は約25mm、重量839g、口径は9mmx19のみで15連マガジンが3本付属する。MSRPは$1,299だ。
今年はフラットダークアース、ODグリーン、グレーモデルなどを展示。来場者の意見を聞いて、実際のどのようなカラーバリエーションを製品化するか決めていくという。
実は昨年H9の生産が軌道に乗り始めた時にいくつかの不具合が発生し、一度生産を休止して問題の解決に取り組んでいる。それはパーツの破損や作動不良など多岐にわたり、一部の個体で横転弾が発生する事例が確認されたため、ライフリング加工を見直し、バレルも再設計した。また各種アモに対する適応性の問題が指摘されたため、フィードランプの形状を変更し、新たな研磨プロセスを導入するなどの改良も行われrている。出荷が再開されたのが昨年半ば頃で、それ以降に生産されたH9は、かなり好評だということだ。
DD PCC
ダニエルディフェンスの今年本命の新製品が、9mmカービン、DD PCCだ。写真は8.3インチ冷間鍛造バレルを持つピストルバージョンで、SB Tactical SB3アームブレイスが付属する。ARプラットフォームを基にした9mm×19用に特化させることで、レシーバー全長を大幅に短縮したコンパクト設計で、油圧バッファーを内蔵したブローバック作動方式を採用している。
マガジンは、安価で手に入りやすく、信頼性の高いCZスコーピオンEvo3用を使用する。全長572~686mm、重量2.7㎏、M-LOKアタッチメント付きのフリーフローティング7インチDD4レールを備え、拡張性が高く、また1/2x28スレッド付きのバレルは市場にある数多くの9mm用マズルデバイスが装着できる。
DDバットストック付きのSBR(ショートバレルドライフル)や、6インチバレルのカービンモデルも存在し、MSRPは全て$1,949だ。ショー直前に出荷は始まっており、大きな反響を得ているとのことだった。