2025/03/28
Tisas PX-9 Tactical ターキッシュダークホース
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TisasのPX-9シリーズは、米国銃器ユーザーの一部で話題となっているトルコ製の自動拳銃だ。価格の割には性能が高いと評判で、銃器雑誌の記事はもちろん、個人による投稿動画でも好意的な意見が多く見られる。日本ではほぼ無名のPX-9の操作性を検証してみよう。
マイナー路線のすすめ
業界で騒がれている製品でも、実際に使ってみるとそれほど良いとは思えなかったこともあれば、注目していなかった製品を思いがけず試す機会に恵まれ、意外な良さに気づかされるということもある。本記事で紹介するハンドガンは私にとって後者の好例で、Gun Pro Webで採り上げるに値すると考えた。
有名メーカーの新製品や人気のある銃は何度も記事として採り上げられるが、それらとは異なる、いわゆるマイナー路線の銃も、機会があればカバーしてゆきたいと思う。そもそも、あまり知られていない銃器を少しずつでも日本の読者に紹介したいというのが、以前からの私の希望なのだ。
トルコからのダークホース
今回紹介するPX-9 Gen3 Tactical(ピーエックスナイン ジェンスリー タクティカル)はトルコ製で、スプリングフィールドアーモリーのXDをお手本に設計されたストライカー撃発方式のポリマーフレーム9mm拳銃だ。Gen3とあるように第三世代の製品だが、私自身はPX-9 Gen2や、初代のZigana PX-9にお目にかかったことはない。インターネット上にアップされたそれらの画像を見ればXDに似ているようにも思えたが、スライド形状が大きく変更されたPX-9 Gen3ではその面影は薄くなっている。


ここ米国において、トルコ製の銃器は主流とはほど遠い。しかし、大手ブランドの銃が実は同国製であったり、米国法人の独自ブランドとして輸入/販売が行われていたりと年々普及が進んでいるため、その認知度が高まっている。
私はガンプロフェッショナルズ誌2015年12月号で、“Canik”(トルコ語発音はジャニック、米国発音はキャニックまたはカニック)というトルコの銃器メーカーの“TP9SA”を採り上げた。トルコ最大の防衛関連企業であるSamsun Yurt Savunma(サムスンユルトサブウンマ、SYS)社傘下の銃器製造部門であり、もっと以前からCZ75系ハンドガンの製造を続けている同社が2012年に発表したストライカー撃発方式のポリマーフレームハンドガンが元祖TP9で、米国へはセンチュリーアームズ社(Century Arms Inc.)が輸入している。メーカー/ブランドの知名度の低さが災いしたのか、ローカルのガンショップの店頭に並ぶまでには至らなかったが、2014年にはリニューアルされたTP9のバリエーションが登場、それらは地元のガンショップでも陳列されたほか、インターネット上には多くの製品リビュー動画が投稿され、その認知度向上に貢献した。
有名メーカーのハンドガンと比べても見劣りしないCanikの製品には、同クラスの米国ブランド製品よりも100~200ドル程度も安い値札が付いていたが、これが普及の要因となったことは間違いない。銃器ブランドとして確立されたCanikの製品は、今では多くの銃器小売店で陳列されており、私の友人にもそれらの所有者は少なからず存在する。

閑話休題、本リポートの主役であるPX-9タクティカルはCanikとは異なるトルコの銃器メーカーである“TİSAŞ Trabzon Silah Sanayi”の製品だ。同社は1993年に設立され、翌1994年に最初の拳銃であるFatih 13(ベレッタ84スタイルの380ACP)の製造を開始したという。“TİSAŞ”はトルコ語では「ティサーシュ」と発音するようだが、米国内のブランドである“Tisas”は「ティーサス」と発音されている。米国法人である“Tisas USA”は、2022年にテネシー州東部のノックスビルに設立されたとあるが、それまで輸入を担当してきたSDS Imports(現SDS Arms)の所在地と同じであることは興味深い。
現在Tisas USAは、ポリマーフレームでストライカー撃発方式のPX-9シリーズのほか、クラシカルな1911スタイルの外装ハンマー撃発方式の拳銃なども供給している。

18連マガジン装着時の未装填重量の実測値は918g、トリガープル(デジタルゲージでの5回平均)は1.7kgと軽めで引きやすかった。

本リポートのために借用した時にはスライド後部上面のカバープレイトは取り外され、スワンプフォックスのダットサイトが装着されていた。

ダストカバー下面にシリアルナンバーが刻印された金属プレートが鋳込まれており、トリガーガードの下面にはブランド名と製造国の情報がモールドされていた。
XDに似ているがクローンではない
PX-9シリーズの基本メカニズムは、スプリングフィールドアーモリーのXDと似ている。XDはクロアチアのHSプロダクトによるHS2000を米国銃器市場向けにアレンジしたもので、米国では2002年に発売された。ストライカー撃発方式でトリガーはシングルアクション(SA)、安全機構としてストライカーブロックに加えてグリップセイフティをもつ。
2018年に登場した初代PX-9は、XDと同じようなストライカー撃発方式でSAトリガーをもつが、コピーやクローンというには相違点が多い。安全機構ではトリガーセイフティとグリップセイフティが廃され、フレーム後部にマニュアルセイフティが備えられた。マガジンはSIGのP226スタイルで18連と20連、バックストラップは着脱式でサイズの異なるインサートが付属する。リアサイトにはフィクストとアジャスタブルの選択肢があった。





右:ケースの中には20連延長マガジンとマガジンローダー、簡易ホルスター、異なるサイズのバックストラップとサイドパネル、オプションのマガジンウェル、クリーニングロッドとクリーニングロッドブラシ、マニュアルなどが収められていた。
PX-9は2021年頃にGen2となってグリップが改良され、バックストラップだけでなくサイドパネルも着脱式となっている。これも独自のアイデアというよりは、H&KのP30やVP9を参考にしたと思われるが、同じように27通りもの組み合わせを実現させたグリップの射出成形技術は確かなものといえよう。
2023年度の新製品として登場したPX-9 Gen3では、スライドの形状が大きく変更されてオプティックレディとなったほか、トリガーセイフティが備わった。また、従来からの4インチ銃身モデルはPX-9デューティと命名され、5.1インチ銃身のPX-9タクティカルと、3.5インチ銃身と15連マガジンに対応した短めのグリップを組み合わせたPX-9キャリーがラインナップに加えられている。サムセイフティは基本的に廃止され、例外としてPX-9キャリーにのみ選択肢として残された。

